これからの料理の設計図の作り方!?

2009年6月から始まった関西食文化研究会の講習会は世界的に注目されている日本の「だし」から始まりました。
すでにアカデミックに料理を分解して再構築する手法で行われたわけですが、第2回の「熟成講座」で川崎先生が解説された熟成や加熱で得られる香気成分がメイラード反応から生まれるという解説を聞いたときは全身に雷が落ち、料理を考えたり伝えたりするうえでの金剛杵(こんごうしょ)を得た感覚になったことを今でも鮮明に覚えています。これで知る限りの料理と人間という動物の喜びの本質を一筋の光で結びつけることが出来たように感じました。
料理人としての経験をひとつひとつ大切に引き出しに保管していましたが、個々のパーツを繋げる糸口を見出したような感覚です。これは自分の料理に対する理解を早める事のみならず、他の人に伝える大きな力になりました。ロジックを伝えるためにも重要なことです。食べるという事はどういう事か、美味しいという事、備わった五味、味覚と嗅覚の働き方、個々のパーツを組み合わせるデザイン等々その後の講習会へとつながり関西食文化研究会立ち上げ準備から8年、先般行われた第2回の講習会やコラボイベント、派生イベントへと広がりを見せています。
これからの料理界は革命的に人材の育て方や調理工程の科学的理解によっての標準化を進め効率よく作業することと、クリエイティブにデザイン化できる手法を身に付けることが個人や企業に求められると考えています。
そのような意味からも関西食文化研究会の今後の役割の重要性を実感しますし、会員の皆様には更なるご協力と積極的な参加をお願いしたいと思います。
[掲載日:2017年3月31日]
山口 浩氏の今注目する料理人
私自身が料理界に入り修業を初め40年になります。その間に本当に色々な方々に、この紙面では書きつくせないほどの指導いただき今日の自分があると心の奥から感じています。
三十数年前、私がホテルで働き始めた時代のフランス料理界では今では比べ物にならない程に綺羅星のごとくスターシェフがいらっしゃいました。若い料理人は皆そのシェフ達に憧れいつの日か自分もキラキラと輝きたいと夢見たのではないでしょうか。そのためにはスターシェフの軌跡、すなわち歴史を知る事から始めたように思います。どなたに師事されどのようなことを学ばれたのかなど多岐にわたります。
これはテクニックや皿の美しさだけでなくHOMMAGE PASHSION RESPECT FIDELITE といった事が料理人に最も重要であると多くの人々が信じていたからだと理解しています。
今は亡き横田知義料理長から頂いた言葉に「あなたが師事したシェフがあなたを認めなければ我々は貴方を認めることはできないのですよ」という言葉に料理人の世界を教えていただきました。
また、アラン・デュカス料理長の言葉に「自分の過去を語れなければ自分の未来を語れない」といった言葉に料理人の世界の真理を感じました。
今の時代も多くの注目される料理人がいますが、何よりも前記した事が大切であるという認識を持たれた方が「私の注目する料理人」であり、その理由です。