10年間で変わったこと 変わらないこと

《十年一昔とは。世の中の移り変わりが激しいことのたとえ。十年という年月を区切りとして、それ以前は昔のように思われるということ。》だという事ですが実際我々飲食やサービス、ホスピタリティ産業に係る業界やそれを取り巻く環境はどのように変化しているのか、また、その変化に対応していくことが大変重要なのでしょうね。
しかし、今の時代本当に十年の区切りで測れるのかと自問すると、それはスパンがあまりにも長すぎると年々実感しています。
体内時計と現実空間の時間の進み具合を大きく変化させなければいけなくなりました。情報の伝達ツールの進化や発展は我々に本当に便利な環境を提供してくれています。
「私の様にフランス料理に携わる者にとって本場フランスで起こっていることが瞬時に情報として入ってきます。」というようなくだりが十年前なら話せたかもしれませんが、近年では「フランス料理の本場はフランスなの?」とこれまでの固定概念を覆して考えなければならない時代になりました。
また、優れた料理人とは?と聞かれたなら「自分の作りたい料理をスタッフに作らすことのできる料理人」が優れた料理人であると考えていましたが、今や「自分の作りたい料理を化学的に解釈してエビデンスの元、ストーリー性とデザイン性を考えて世界発信できる料理人」となるのでしょうか。
料理自体も料理人の個性や経験、受け継がれてきた慣習や文化などのフィルターを通して皿に表現すること以外に、自然を取り込み呼吸することをコンセプトとすることで「自然」を後ろ盾にしたジオラマ的な料理の発表なども変化なのかもしれません。
しかし何よりも自分一人で進歩やイノベーションや革命は起こらないので、過去の自分を語ることが出来る人間のみが未来を語ることが許される時代でなければならないと考えますし、そのことが不変であってほしいと切望する自分は昔と何にも変わっていないのでしょうか。
[掲載日:2018年5月8日]