持続の可能性

4月15日発生した火災によりノートルダム大聖堂の尖塔が崩落。パリ市民のみならず世界中が深い悲しみに包まれています。翌日には既に再建へ寄付が殺到して400億円以上になっているという事ですので今後長い時間はかかるでしょうが人々の連帯によってあの美しい姿が蘇る事でしょうし、その為に私も再建に最大限の協力をしてゆきたいと考えています。
パリを訪れノートルダム大聖堂を目にするたびに、此処に集う人々の次の世代なり、またその次の世代もこの素晴らしい光景を目にするんだと思い込んでいましたが、ほんの少しの注意を怠るだけで消失してしまうという現実に直面しました。
我々も料理人として日々料理を作り、また、作ることが出来る環境が、当然のように続くという間違った考えを捨てて、細心の注意と関心を持ってゆかなければならない状況になっています。今行動を起こさなければこの豊かな文化を次世代に継承させることが出来ません。料理人の役割であったり価値観は美味しいものを作る事や皿の上の表現のみに留まるのではなく、食文化に関して料理人は社会文化度が高くなくてはいけません。多くの料理人が過剰競争に飽きています。しかし現状はそこにしか栄光がないと思いこまされて、素晴らしい才能の取りまとめになってしまっています。社会人として素晴らしい、人間としての評価基準が高い人間が才能ある料理人として認められるような世界を自らが求めて行かなければならないでしょう。そのためにどのように社会貢献が出来るのかと考えることが大切です。その一つにSDGsがあると思います。この趣旨をよく理解し「17の目標」と「169のターゲット」の中で我々の取組み可能分野を見つけて目標を持ち達成させることが重要だと考えています。例えばその一つには「14海の豊かさを守ろう」が在ります。世界のどこよりも密に海と関わってきた日本だからこそサステナブル・シーフードのイニシアチブを取って行くことが重要だと考えますし、その豊かな海を育む「15陸の豊かさも守ろう」のテーマも重要です。また、これら我々が取り組み可能な分野への協力者を募ることも重要ですがSDGsは本来それらを繋ぎ合わせる手段です。
料理人の新しい価値観。これからは社会から求められるソーシャル・グラン・シェフを育てて行こうではありませんか。
[掲載日:2019年5月8日]