スタッフは社会からの預かりもん

川端 友二氏
有限会社川端屋商店 代表取締役

飲食業で働く人には独立を目指している人が多い。なかでも居酒屋は、早く独り立ちするにはいろいろ経験できる最適なところと思われているのか、独立志向の強い従事者の割合が高いようです。私は、独立を目指すくらいの意欲あるスタッフには、一緒に働く仲間として一人ひとりが人間的にも成長してゆける店=会社になる責任があるのではないかと考えています。つまり私の店=会社を就職先に選んだスタッフは「社会からの預かりもん」だから、私たちには預かった人を社会のチカラにして返してゆく義務があるのではないか、と。

居酒屋は自由に形態を変えられるハイブリッドな業態です。日本料理やフレンチに比べ時間をかけて習得するような技術はあまり必要ではありません。逆にどんなジャンルの料理でも取り込め、食材も調理方法も組み合わせは自由にできるから店ごとの個性も出しやすい。しかし、好き勝手するのと社会的に受け入れられることが等しいとは限りません。店を任せるにも、独立させるにもスタッフ個人の強みをうまく引き出せるように導く、雇い主には人を育てるということが求められているのです。店=会社は「成長の土台」でもあるのです。

私の場合、独立創業する前に修業して豚ホルモンを扱う技術を身につけられてこその今があります。ですから、自分が培ってきたことをスタッフが成長する糧にしてもらいたいと願い、伝授するにはどうすればいいか様々に実践してきました。例えば、豚モツの串打ち、炭組み、焼きといったテストに合格すれば独り立ちしてもらうなど、スタッフ同士で腕を磨き合う機会も設けています。

創業して大阪千日前に2店め3店めと出せる頃、有限会社川端屋商店を設立。同時期に、これからの経営の柱として人材育成を位置付け、これまで感じたり考えてきたことを整備し直しました。幸い、食品メーカー勤務経験者が社員のなかにおり、彼とともに子会社を設立し人事コンサルティングを専門に行えるようにしたのです。

着手したのは、社員もアルバイトも含め全スタッフとの意思疎通です。まず、企業理念、企業目的といった全社で共有すべき意識を言葉で表現し、具体的に行動するときの指針まで設定しました。そうして、全スタッフがコミュニケーションを円滑にでき同じ意思をもって働ける環境を整えていったのです。それは同時に、統一された店=会社のイメージアップにもつながっていくものです。

また、社内的には、誰にもわかりやすい人事評価の導入など風通しのよい職場づくりを行い、勉強会や研修会の定期的な実施などスタッフが個人個人の成長を促せるような土台づくりに力を注いできました。こうして、高く掲げた理念のもと、ポスト・コロナでの次なる展開に向かいたいと考えています。

川端 友二(かわばた ゆうじ)プロフィール

1971年大阪府生まれ。ホテル、食肉卸売会社などに従事した後、2003年大阪ではまだ希少な豚ホルモンの串焼きと焼酎の居酒屋「焼とんyaたゆたゆ」を天下茶屋で創業。2006 年に有限会社川端屋商店を設立。2007年「立呑み大阪焼トンセンター」を始め大阪千日前に4店を出店。同エリアを「ウラなんば」と名付けて街おこしを先導。「大阪を豚で幸せにする」をモットーに現在は業態の異なる8店を多店舗展開。川端氏のもとから独立した店舗も8店になる。

[掲載日:2021年11月8日]