中国料理、イタリアン、和食・・・ 垣根を越えた神戸の料理人が集結

匠会(たくみかい)

勉強会の模様はその都度、事務局長と書記長が記録。テーマに基づいた料理紹介はもちろん、メンバーの意見や感想に至るまで事細かに書かれている。

07年1月に活動を開始した「匠会」。発足のきっかけは、「中国酒家 同源」の主人・銭 明健氏が、同業の仲間たちと神戸・加納町「竹海(ズーハイ)」に集まり、飲んでいたことが始まりだった。中国料理店の料理人の交流を兼ねた集いは、2ヶ月に1度、テーマを決めた会へと発展。やがて神戸界隈のイタリアンや和食など、異ジャンルの料理人も巻き込むことに。現在、有志料理人は12名。同会の代表・銭氏曰く、「古い価値観を打破し、神戸らしさのある新しい料理文化を創造できる、料理人たちの集いです」。

7月某日午後11時。「中国酒家 同源」で行われた勉強会のテーマは「発酵食材を使った料理」。中国料理、和食、イタリアン、無国籍料理の料理人たちが一品ずつ、持ち寄るスタイルで始まった。

この日、テーブルにズラリと並んだ料理は10品強。ある中国料理店の料理人は、5%程度の塩水に1週間漬け込んだタケノコ「筍絲(スェンスウ)」と、鯛アラを用いたスープを。また、和の料理人は、淡路の鱧の粕漬けや、風干し鮎のうるか味噌焼きなどを披露。そのほか、老麺を用いた西安地方の遊牧民のパンや、紅腐乳を用いたアイスクリームなど多彩な顔ぶれである。「腐乳をアイスに!?」「いや、発酵ものは比較的、乳製品と相性が良い」など、それぞれの発酵食材の使い方に、異ジャンルの料理人はもちろん、中国料理店の料理人同士も触発されていた。

銭氏は、異ジャンルの料理人の交流についてこう話す。「例えば肉の火入れひとつをとっても、中国料理とフレンチじゃアプローチが全く異なります。互いが技術を披露し合うことで、双方のテックニックの幅が広がる」。例えば、イタリアンのシェフなら、この交流がきっかけで、卵をピータンに、黒コショウを四川山椒に変え、「ピータンのカルボナーラ」といった、独創性のあるメニュー考案に至ったという。

この日は試食の後、神戸中華と日本の文化に至るまで話題は広がり、午前3時すぎまで白熱した議論が繰り返されていた。

この日、「中国酒家 同源」には、初参加の料理人含む14名が参加。
「匠会」総長の銭 明健氏(中国酒家 同源)。
神戸の中国料理店の料理人がメンバーの半数を占める。だが、「自分の世界を貫く料理人なら、ジャンルは問わない」と銭氏。
銭氏の一品「豆酥蝦仁」。大豆を約1年寝かせた乳酸菌発酵の後、乾燥させてミキサーで砕き、エビやネギ、ニンニクとともに炒める。
和食料理人・橋元氏は3品。鱧の粕漬け、鰹の共和え(酒盗和え)、風干し鮎のうるか味噌焼き。
小小心縁・陳氏は、福建省に伝わるタケノコの発酵食材を、鯛アラとともにスープ仕立てに。
活動実績(テーマ/担当料理人)

■野菜/ラヴェニール・チャイナ 今村浩之氏
■福建郷土料理/小小心縁 陳 挺氏
■王道の中国料理/鴻福門 中村正義氏
■原価率、利益の捉え方
  神戸の中華は生き残れるか?/中国酒家 同源 銭明健氏
■食育を通じて地域食材と旬素材を見直す/橋元 健氏  ほか

メンバー(役職/氏名/店舗名)
総長 銭 明健氏/中国酒家 「同源」
事務局長 谷河 公英氏/竹海
書記長 松本 明氏/アムアムホウ
法橋 正敏氏/広東海鮮料理 「正」
中村 正義氏/中国料理 「鴻福門」
陳 挺氏/小小心縁
松村 隆寛氏/維新号
斉藤 雅史氏/ホテルサンルート 堺華蘭
芝 広明氏/居酒屋 一英
浅井 卓司氏/イ・ヴェンティチェッリ
今井 浩之氏/ラヴェニール・チャイナ
橋元 健氏
匠会(たくみかい)
発足 2007年(平成19年)
会員 神戸の料理人を中心に12名
連絡先 中国酒家 「同源」
銭 明健
神戸市灘区岩屋北町4-4-8
丸山ハイツ1F
TEL.078-871-7761

[ 掲載日:2009年7月28日 ]