なにわの伝統野菜をはじめ地元の産物に着目。大阪ならではの食、そして食文化を見つめ直す

浪速魚菜の会(なにわぎょさいの会)

セミナーから試食会まで、大阪の魚菜について学ぶ、定例の「勉強会」。

大阪府下で良質な食材づくりに励む生産者を支援し、大阪ならではの食と食文化を考える団体。それが「浪速魚菜の会」だ。代表の笹井良隆さん曰く、「なにわの伝統野菜に代表される大阪府下の野菜、そして大阪湾で獲れる魚介などに今一度着目し、普及させたい。さらには、大阪ならではの料理や味を再発見することを目的としています」

きっかけは、10数年前に発足した「浪速魚菜を食べよう会」だった。『浪速割烹 喜川(きがわ)』『天神坂上野』の元店主で、食の随筆家である上野修三氏をはじめ、料理関係者や生産者、学者などを中心に設立。生産量が激減した、大阪産の伝統野菜の発掘と復活を目的に、少しずつ認知度を広げて行ったという。そして03年、「浪速魚菜の会」に改名、NPO法人として新たに活動をスタートさせた。

同会は現在、以下の3つを柱に活動を行う。ひとつは年4回開催する「勉強会」だ。会員である生産者と料理人などが集い、大阪産の地野菜や魚介を用いた試食交流会を実施。「先日開催した勉強会は、貝殻が鼈甲(べっこう)色に光る、淀川産の鼈甲シジミがテーマでしたね」。昭和30年代初めまでは年間100t前後の漁獲高だった、淀川河口でのシジミ漁。しかし高度成長期の水質汚染などから漁獲量は激減。その後、水質改善が進み、目に見える成果はシジミの漁獲量にも反映された。現在は「魚庭(なにわ)の鼈甲しじみ」としてブランド化されている。「ただ試食をするだけでなく、その食材が持つ歴史的な背景を知ってもらうことを大事にしています」と笹井さん。ふたつめは「生産者訪問」だ。漁港や農家を訪ね、生産の現場を知るこの活動。参加者は50名前後にもなるという。

そして09年春、学識経験者や料理人が集い、新たに「大阪料理研究会」を設立。昔から大阪は、海や山の幸に恵まれた土地であった。これらを割(く)、烹(煮る)の両方を併せ持つ『割烹』が、江戸時代に誕生したのも大阪である。この研究会では、「大阪料理とは何か?」「大阪らしい味わいとはどのようなものか?」を今一度明らかにし、現在にその魅力を伝えることを目的に活動を行っている。

「『なにわ魚菜の会』発足当初は、なにわの伝統野菜や地野菜、地元の魚介の存在を、プロの料理人に“知ってもらう”ことが目的でした。そして現在は、それぞれの素材に見合う手法を料理人に知ってもらい、お客さんに“食べてもらう”ことに重きを置いています」と笹井さん。その目的が達成され、さらに認知度が上がってこそ、消費者に“買ってもらえる”時代がやってくるのだと、笹井さんは話してくれた。

11月29日、エコール辻にて行われた「第1回大阪料理フォーラム-大阪料理ルネッサンス」。大阪料理研究会、大阪芽生会、大阪商工会議所が主催。これからの大阪の食を考える、充実したフォーラムとなった。
大阪料理研究会、第一回会合(08年4月開催)の試食に出されたのが、上野修三氏の発案による「鱧皮豆腐椀」。地元の鱧の皮を使い、大阪の「始末の料理文化」を現代風に再現させた一品。
「浪速魚菜の会」代表・笹井良隆さん
「浪速魚菜の会」の会員をはじめ一般の方々も対象にした、季節の『なにわの伝統野菜』試食会の模様。
加盟店

法善寺 喜川(きがわ)(大阪・法善寺/浪速割烹)
北新地 弧柳(大阪・北新地/割烹)
千里山 柏屋(大阪・千里山西/日本料理)

イ・ヴェンティチェッリ(兵庫・西宮/イタリアン)
フランス料理 エプバンタイユ(大阪・南船場/フレンチ)
ラクロッシュ シェフズルーム(大阪・北浜/フレンチ)
なんばオリエンタルホテル(大阪・千日前/ホテル)

ほか約120軒

日本料理 花祥(大阪・貝塚/日本料理)
もくち 青山店(東京・青山/和食)

特定非営利活動法人 浪速魚菜の会
発足 2003年
会員 大阪・神戸の料理店、料理人、生産者、市場関係者が中心(原則として会員の紹介により入会可)
連絡先 特定非営利活動法人 浪速魚菜の会
大阪市福島区野田1-1-86
中央卸売市場本場内業務管理棟
TEL.06-6469-7600
http://www.ukamuse.jp/

[ 掲載日:2009年11月30日 ]