器と料理の新たなる出会いを生み出す、陶芸家・料理人による集い

器覚倶楽部(きかくくらぶ)

2010年4月に開催された第139回「器を食す会」の様子。この春オープンの店「滋味 康月(滋賀・草津)」。「草喰なかひがし」で修業を積んだ、月岡正範氏が料理長を務める。

1986年に発足した「器覚倶楽部」。京都や滋賀在住の、陶芸家や料理人たちが集まり、食事会をスタートさせてから今年で24年目を迎える。主宰者の山岡国男さん(錦 大國屋)は当時の様子をこう語ってくれた。「料理屋の知人から、コーヒーに合う和の器がないか?と相談を受け、その頃よく遊んでいた若手の陶芸家を紹介したことがきっかけでしたね。陶芸家と料理人を集めて交流をすれば、もっと両者にとって新しい発想が生まれるのではないかと思ったのです」。

「器覚倶楽部」は現在、2つの活動が柱となっている。まずは2ヶ月に1度の「食事会」だ。今年6月に、140回目を迎えるという。会員である料理人が営む店へ出向いたり、時には彼らの弟子がオープンさせた料理屋へも足を運ぶ。「食事会は、これといってテーマを設けていません。そうじゃないと、ここまで続きませんよ」と山岡さんは笑うが、その交流によって器と料理との新たな出会いがあるのだ。例えば、会に参加していた寿司屋の主人が陶芸家に器を依頼した。握り1カン、2カン、さらに造りを盛ることができるような、使い用途に優れた器ができないだろうか。そのような料理人の思いを受け、陶芸家は作品作りに励むこととなる。山岡さん曰く、「陶芸家の視点と、料理人の視点はまったく違うのです。しかし、両者が親交を深めることにより、お互いが刺激をし合える。陶芸家は料理を知った上で器作りができ、料理人なら例えば、『清水焼の器に合うフレンチを』といった、新たなチャレンジができるのです」

活動範囲は食事会だけではない。3~4年に1度、企画展や展示会も開催する。以前、「魯山人に挑む」という企画展を開催した。「魯山人の器はなぜ、料理屋にウケがいいのかを追求したんです。魯山人は、食べ手であり作り手だった。だから、料理人が喜ぶ器のサイズを重々理解していた。そこに挑み、見つめ直すいい機会でした」。08年11月には、祇園のお茶屋を貸し切り、器覚倶楽部の作家の作品を集めた展示会を開催したという。次回は2011年4月予定。

現在、メンバーは60名。発足当時、若手だった陶芸家のほとんどが、伝統工芸師になった。料理人も名だたる顔ぶれだ。また、陶芸家や料理人だけでなく、表千家 宗匠、公認会計士、弁護士、書家、デザイナーなど、応援してくれるメンバーが多いというのも器覚倶楽部ならでは。現在は、メンバーの追加募集を行っていないそうだ。そんな折、山岡さんの息子さんや寿司屋の若主人、若手料理人や陶芸家などが集い、「若会」という名の集いが発足したという。「器と料理の新たなる出会いを追求し続ける、器覚倶楽部の精神を受け継いでくれたら嬉しいですね」と山岡さんは嬉しそうに話してくれた。

「器覚倶楽部」主宰・山岡国男さん。山岡さんは、錦小路で鰻を扱う「錦 大國屋」の主。
食事会には、陶芸家や料理人をはじめ、建築家や内装デザイナーほか各分野で活躍している方々が集う。
アーティストの作品を展示販売する「プラウデコ(錦小路)」にて、「器覚倶楽部」の8人の作家による作品を、展示・販売している。
器覚倶楽部グループ

【陶磁器】

岩華(五条)
壹楽(五条)
一陶(五条)
わくわく(泉涌寺)
厳窯(泉涌寺)
楽入(九条)
釋(山科)
蕗窯(広河原)
晴陶房(上高野)
永峰(炭山)
一志郎(彦根城)

【料理】

こすぎ(嵐山)
しきぶ(丸太町)
なかひがし(銀閣寺)
河玄(岩倉)
エヴァンタイユ(岩倉)
桃庭(祇園)
スポンタネ(宮川町)
ナカザワ(美山町)
文弥(宇治)
丸久小山園(宇治)
橘屋(紫竹)
大國屋(錦小路)

【竹・杉】

おりおり(高台寺)
たる源(三条)

【SHOP】

プラウデコ(錦小路)

器覚倶楽部
発足 1986年
【器覚倶楽部の作品展示販売】 プラウデコ
京都市中京区錦小路通堺町西入ル
TEL.075-253-1865
http://www.kikaku-kurabu.jp/

[ 掲載日:2010年4月26日 ]