日本料理を多角的な視点で捉え、国内のみならず世界的な普及活動を行う

日本料理アカデミー(にほんりょうりアカデミー)

2010年2月に開催された「日本料理コンペティッション決勝大会受賞&レセプション」の模様。全国から160余名の日本料理に携わる方々が参加をした、料理のテーマは「祝い」。優勝者は、北海道・小樽の鮨店「に志づか」の若旦那・西塚周平氏。

日本料理のグローバルな普及を目的に掲げ、04年に誕生した「日本料理アカデミー」。発足以来、外国人若手シェフとの交換事業や、子どもたちへの食育をはじめとする、幅広い活動を行ってきた。理事長の村田吉弘氏は「日本料理をさらに多角的に見つつ、活動の幅を広げていくことが重要です」と話す。

現在、当会は3つの委員会から構成され、活動を行っている。
1つ目は、食育事業を実践する『地域食育委員会』だ。これは、京都市内の小学校(モデル校)17校が対象となっている。京都市教育委員会の定めた方針をもとに、各小学校と当会担当者で話し合い、それぞれの学校の授業内容に即した食育カリキュラムを作成。そして会員である料理人が、子どもたちを相手に授業実践を行っている。

2つ目に『日本料理コンペティション委員会』の活動が挙げられる。この委員会では、2010年5月より新たに「日本料理アカデミー研修会」をスタートさせた。対象者は料理人をはじめ、調理に関心のある一般客の参加も可能。講師の顔ぶれも多彩である。茶道と日本の料理文化史から日本料理を紐解く、熊倉功夫氏(国立民族学博物館名誉教授)。伝承料理研究家である奥村 彪生氏。そして、科学的視点から日本料理を捉える伏木 亨氏(京都大学教授)、的場輝佳氏(関西福祉科学大学教授)の4名。村田氏曰く、「この研修会は隔月で、2年間開催します。食の背景にある文化・歴史、そしてサイエンスなど、今後はさまざまな視点で日本料理を見ていく必要性があるんです」と話す。

『海外事業委員会』の取り組みも、日本料理アカデミーならでは。海外の若手シェフとの交換事業「日本料理フェローシップ」を毎年実施している。09年12月に開催された第6回目には、デンマーク「NOMA」のルネ・レゼッピ氏ほか、フィンランドやアメリカから、世界的に注目を集める若手シェフ4名が来日。日本料理店での研修や、茶の湯や豆腐製造の実習、そして昆布問屋や農家視察などを体験した。最終日のワークショップでは、各シェフによる料理のデモンストレーションが行われたのだ。「NOMA」のルネ氏は、「デンマーク風懐石と日本の伝統を踏まえた洋風ソルベ」を披露。これは、マスタードと白味噌をベースにしたソースを植木鉢にあしらい、採れたての京野菜を盛った一皿だ。また、アメリカ「MANRESA」のダビッド・キンチ氏の作品は、「初冬の潮だまり」。フォアグラ、アワビ、雲丹、ミル貝、おぼろ昆布を重ね合わせた深鉢に、温度の異なる2種のスープを添えた。利尻昆布、マグロ節、生しいたけをダシに用いることで、海の香りをイメージさせた一品となった。日本の食文化の背景にある、京都の風土や伝統をふまえた日本料理の研修は、外国人シェフにとって、さらなるインスピレーションの源になることは確かだ。なお今年10月には、第7回「日本料理フェローシップ」を開催する。ブラジルから3名、アメリカから2名の若手シェフらが来日し、研修が行われる予定だ。
同じく「海外事業委員会」では、京都大学と共同で「日本料理ラボラトリープロジェクト」を発足。月1回、料理人たちが集まり、京都大学の研究室において、教授とともに実験を行うのだ。最近では、醤油や日本酒の「香り」を油に移すなど、科学的視点から調理を開発する、前衛的な取り組みが行われている。

日本料理を多角的な視点で捉え、またグローバルシップな普及活動を行う「日本料理アカデミー」。日本の食文化はもちろん、世界の食文化の向上を担う会へと発展し続けている。

第6回「日本料理フェローシップ」に招かれた、「NOMA」のルネ・レゼッピ氏。
「日本料理アカデミー研修会」第1回目の講師は、奥村 彪生氏。「弁当の美学とその情報」をテーマに、開催された。
2005年から始まった、京都市教育委員会との食育カリキュラム作成の取り組みは、今年で5年目を迎えた。写真は食育実践授業の様子。
ルネ氏によるデモンストレーションの様子。「日本の伝統を踏まえた洋風ソルベ」は、柚子のソルベにささめ昆布をふった斬新な一品。
日本料理アカデミー理事長、京の老舗料亭「菊乃井」3代目主人。村田 吉弘氏。
日本料理アカデミー
発足 2004年
会員 全国の料理関係者を中心に約170名
連絡先 NPO法人 日本料理アカデミー事務局
TEL. 075-241-4163
http://culinary-academy.jp/

[ 掲載日:2010年7月23日 ]