満月Pub(まんげつパブ)

7月4日、満月の夜。大阪・福島のフレンチレストラン「ブサンゾン」にて開かれた、第10回目の「満月Pub」。夕方6時になると、どこからともなく客が集まってきて、あれよあれよという間に満員御礼。皆、ワインや日本酒、そしてフレンチの小皿料理を現金買いしながら、好きなように食べて飲んで、会話を楽しんでいる。日付が変わる頃には料理人らも訪れ、さらに盛り上がる。満月の夜だけの、独特な光景。
このイベントの主催者は、ワインショップ「FUJIMARU」の藤丸智史さん。会の成り立ちを藤丸さんはこう話す。「きっかけは東日本大震災でした。僕は、神戸淡路大震災を経験して、想定外のことが起こることを知っていたはずなのに、絶対安全という言葉を鵜呑みにしていた。なぜ私たち日本人は、自然の威力に、自分たちがコントロールできないものを造ることに、無関心だったのか。そういうことに対して、関心を持ち続けるために何ができるのだろう?」。
満月は月に一度、必ずやってくる。夜空を見上げれば皆、同じ月を見れるし、空は繋がっている。「毎日、毎日、東北のことを考えるほど余裕はないと思うのですが、1ヶ月に1回くらいは関心を持ち続ける時間、皆が立ち止まる時間があってもよいのではと思ったのです」。
しかし、決してアカデミックなイベントではない。会場では、約35種のワインをグラス300円〜提供。「ワインだけだと視野が狭いから」と、国産クラフトビールほか、日本酒居酒屋「かむなび」や地酒を販売する「杉本商店」協力のもと日本酒も提供する。会場となる飲食店は、「会の主旨に賛同してくださるお店にお世話になっています」と藤丸さん。「敷居をぐんと下げたかったし、1杯だけ飲みに来ていただくのも大歓迎ですよ」。
そこには音楽も必須だった。「美味しいワインと料理、心地よい音楽。この両者が揃うと、その場の楽しさが倍増すると思う」。そう話す、ワインバー「ナジャ」の店主・米沢伸介さんは、アフリカの民族音楽からビートが利いたものまで、客層や時間帯に合わせて音を選ぶ。同時に、稀少なマグナムワインや熟成感のあるワインをグラスで提供する。
第2回目の「満月Pub」から日本酒を提供している杉本和彦さんはこう話す。「ウチは地酒屋です。地酒イベントも開催していますが、お客さんも似た顔ぶれになる場合が多い。でも「満月Pub」は、いろんな方が集うから、すごく新鮮なんですよね。日本酒好きのお客さんがワインに目覚めたり、またその逆があったり。新たな交流が生まれる場所です」。会場がフレンチレストランのときは、肉やソースの強さに負けないコクの深い日本酒をセレクト。中国料理店の場合は、古酒の日本酒を準備するなど、料理に合わせた地酒を選ぶそう。
ワイン担当の福井英太さんは「回を重ねるごとに、お客さんがどんどん増えています。ワイングラスが足りなくなるほど(笑)。満月Pubの日だけに会う、“満月Pub友達”もいらっしゃるようで。人と人との繋がりを深めるという意味では、ニーズがすごくあると実感します」。
「満月Pub」第11回目は8月2日。大阪・谷町四丁目のビストロ「Kamekichi」と、同エリアにある日本ワイン専門のレストラン「ミッシェル・ヴァン・ジャポネ」で同時開催。なお、8月は満月が2回あり、31日には芦屋の「ヴェール(ワインとオーガニックの生活雑貨、食材の店)」で開催予定だ。
最後に、藤丸さんは『イベントに来ていただかなくてもいいんです。でも、もし、ふと見上げた月が満月なら少し立ち止まりませんか?そして、何か大切なことを忘れてないか、一緒に思い出しましょう』と話してくれた。






発足 | 2011年秋 |
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[ 掲載日:2012年7月13日 ]