料理人とパン職人とハム職人。神戸ならではのタッグチームは、世界を見据える。

神戸料理学会

デザイン・クリエイティブセンター神戸KIITOで開催された「神戸料理フォーラム」(2013年2月)。このトークセッションに三人揃って出演したのが、神戸料理学会の実質的な発足宣言となった。

料理人は、スペイン料理「カ・セント」の三つ星シェフ、福本伸也さん。パン職人は、ブーランジェリー「サ・マーシュ」の西川功晃さん。ハム職人は、食肉加工専門店「メツゲライクスダ」の楠田裕彦さん。それぞれジャンルは異なるけれど、神戸や芦屋にある人気店のオーナーだ。その三人が組んで、2013年に「神戸料理学会」を発足させた。将来、世界の料理学会に並ぶ神戸らしい学会イベントを開催させるという目標へ向かい、動き始めている。

近年、料理人の集う催しを、科学者や医者の研究発表会ではおなじみの学会と呼ぶ事例が多くみられる。この“学会”には、既存の料理アカデミズムや学問とは異なり、誰でも参加できる開かれたニュアンスが強い。モデルは、サン・セバスチャンで開催された料理学会だ。

スペインの地方都市サン・セバスチャンは、ヌエバ・コッシーナ(新しい食を追求する運動)などの地道な活動を積み重ね、今や美食の街として世界に広く知られている。料理学会は、その動きのなかで行われた。最先端の分子料理が披露され、レシピを公開し共有し合うなど、斬新な内容や形式は注目を集める。それと同時に、様々な食のイベントが催され、街をあげて盛り上がる。こうした動きに刺激され、世界各地で同様の催しが行われるようになった。

福本さんは、スペインで修業中、まさに当地の動きのなかにいたし、帰国して神戸に店を構えてからは函館で行われた料理学会などの催しに参加。やがて、地元の神戸でも、同じような活動ができないかと思うようになり、西川さんと楠田さんに呼びかけ、「神戸料理学会」を起ち上げたという。

「いずれ、神戸ならではの料理学会を開催させたいと思っていますが、まずは、三人の熱い思いを伝えること」と話すのは、フードジャーナリストの三好彩子さん。三好さんは、神戸料理学会の広報担当。いわば、実務全般を引き受ける。

「新進気鋭の三人です。超多忙な時間を割いて会うと、日頃感じたり考えていることが一挙にあふれ、話題は尽きません。それで、いろいろ再確認していこうと。今は、一般のお客さん、生産者、料理人、みな同じ目線で交流できる場を設け、活動を始めています」

現在、その柱になっているのは、神戸市立森林植物園、レチェール・ユゲ(弓削牧場)との3者共同開催で行うイベント「森のレストラン」。「神戸にある素敵な森を交流の場に、自然と食の関係を実感してもらうのが狙いです。三人とゲストシェフが作るスペシャルランチを楽しんでいただいています」と三好さん。

「森のレストラン」は、2013年、2014年と続けて開催され、毎回、用意した前売りチケットは完売するほど好評という。さらに、こうした活動を通じ、神戸料理学会に賛同し、参加するメンバーも出てきている。西日本で初めてチーズづくりに着手し、独自のカマンベールチーズなどで知られる酪農家、弓削牧場の弓削忠生さんは、顧問に。ゲストで招いたシェフ、林 周平さん(パティスリーモンプリュ)、平井茂雄さん(ラヴニュー)も会員に加わった。

「重鎮の弓削さんが顧問になっていただいたのは、心強いですね。私たちの会を充実させるとともに、活動を重ねながら神戸から発信していきたいです。海外のコンクールなどへの参加も予定しているメンバーもいるので、そこで得たことも反映させるなど、いろいろ考えていきます」と三好さん。これからの神戸料理学会の動きに期待したい。

2013年の「森のレストラン」にて。左から三好彩子、楠田裕彦、林 周平、西川功晃、弓削夫妻、福本伸也の各氏。
2014年の「森のレストラン」会場、神戸市立森林植物園内の様子。
2014年の「森のレストラン」会場でのトークショー。左は、この年に参加した平井茂雄氏。
神戸料理学会
発足 2013年2月
会長 福本伸也/「カ・セント」オーナーシェフ(神戸市中央区)
会員 西川功晃/「サ・マーシュ」オーナーシェフ(神戸市中央区)
楠田裕彦/「メツゲライクスダ」店主(芦屋市)
林 周平/「パティスリーモンプリュ」店主(神戸市中央区)
平井茂雄/「ラヴニュー」店主(神戸市中央区)
顧問 弓削忠生/「レチェール・ユゲ(弓削牧場)」場長(神戸市北区)
広報 三好彩子(神戸市東灘区)
問合せ koberyourigakkai@gmail.com

[ 掲載日:2014年6月16日 ]