つながりを広げてくれる 森 義文さんとの交流

宮本幹子さんは「焼くだけのシンプルさと奥深さに魅せられ」、炭火焼鳥の店を開き今年で8年目を迎える。その店「うずら屋」は大阪・京橋の駅から歩いて十数分、商店街を抜けた所にあリ、一階はわずか5坪弱。立地、広さなど飲食店にしては不利な条件にもかかわらず、足を運ぶ客が後を絶たない。
宮本さんは「わざわざ来ていただくためには何が必要か、どのようにもてなせばいいかを常に考えている」と話す。具体的には何であるのか、あえて挙げてもらうと「サプライズを用意すること」というキーワードが返ってきた。
確かに、例えばメニューを見ればうかがえる。比内地鶏に加え、ほろほろ鳥、フランス産のうずらやシャラン鴨、スペイン産のイベリコ豚など従来の焼き鳥屋ではお目にかからない名が並ぶのだから、驚かされる。サイドメニューも充実。種類や産地の多彩な季節の野菜にも珍しい名が多い。ドリンク類も通好みの焼酎や日本酒にビオワインまでそろう。
驚きが多いほどに期待はふくらんでいくもの。その成果は、リピート率の高さが実証している。宮本さんは、こうしたサプライズ効果について、「カハラ」の森義文シェフから多くのことを学んでいると言う。
「カハラ」は、北新地にあり森さんの独創料理で世界のグルメに注目される人気店。森さんは人脈が広く情報通であり、自らも食べ歩く人としても知られる。某日、「うずら屋」へ来店されて以来のお付き合いとか。
「食べ歩きや新しい食材を探したり、研究熱心。現状に留まらず、誰よりも前へ前へと進んでいこうとする姿勢には刺激を受けています」と宮本さん。森さんの料理を「五感を研ぎ澄まされた、引き算の料理」と話す。あれもこれもと付け加えていくのではなく、削ぎ落とした末のシンプルさ。それは、焼くことに傾注する自身の姿と重なる。
「比内地鶏とともに野菜が届くのですが、今の季節は天然なめこ。それを大きなままストレートに出すのも森さんの料理がお手本です」。その他、新しい食材や生産者を紹介してもらったり、森さんとの交流からは情報だけでなく人のつながりがさらに広がっているという。
森さんにも宮本さんの印象を尋ねてみた。「新しい食材を教えると、すぐに取りかかろうとする。その姿勢がいいですね」という答えだった。「持ち味をどうしたら生かせられるか。常に焼くという手法でつきつめ考えているんでしょう」。
また、最近は、初めての店で宮本さんとよく出会うという。「彼女も食べ歩いているんですね。イベントにもよく出ているようだし、人とのつながりを大事にしているから人脈も広がる。宮本さんほどのバイタリティを感じる女性の料理人って、僕のまわりにはいませんよ」。
同じ料理人同士、互いに刺激しあうことで、世代やジャンルを超えて互いを高めあう。そうしたつながりのなかから、おいしいだけでなく、サプライズをもたらす料理が生まれるのだろう。
[2009年10月8日取材]
「カハラ」の森シェフに教えられたりして、常に新しい野菜がメニューに加わる。いまの季節のおすすめから。

健康食材として注目される野菜。つるに生える葉は食べ応えのある多肉質で焼いても形がくずれない。

輪切りする前の姿からは想像もつかないが、茹でると果肉がそうめんのようにはがれていく。

カンゾウという花のつぼみを干したもの。独特の風味がありコリコリとした食感。

山で採れる天然のなめこ。傘はコブシ大もあり、噛んで食べれば、なめこ本来の味を味わえる。
住所 | 大阪市都島区都島中通3-5-24 |
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TEL. | 06-6927-3535 |
住所 | 大阪市北区曾根崎新地1-9-2 岸本ビル 2F |
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TEL. | 06-6345-6778 |

[ 掲載日:2009年10月16日 ]