“皆が幸せになったらえぇやん”人生の偉大なる先輩の心意気 岡山 克巳さん(岡山フードサービス 社長)松尾 實さん(白菊屋 店主)

川端 友二さん
「焼とんyaたゆたゆ 天下茶屋 本店」他 店主

「のどぶえ(喉軟骨)」「上ガツ(胃)」など珍しい豚モツを串に刺し、紀州備長炭で焼き上げる「焼とん」。川端友二さんが、焼とん専門店「焼とんyaたゆたゆ 天下茶屋 本店」を開いたのは8年前だ。2007年には難波千日前に立ち飲み「大阪焼トンセンター」を、2009年には同エリアに「難波千日前 焼とんyaたゆたゆ」を開店。「豚の尻尾と鳴き声以外は、全部あります」と笑う川端さんは、まだ関西では珍しかった「焼とん」を、関西に根付かせたといっても過言ではない。そんな彼が「この人の存在なしでは、今の僕と店はないです」と話す人物が、岡山克巳さん(岡山フードサービス社長)だ。「社長は、僕にとっては偉大すぎる存在ですよ」。

川端さんは独立前、岡山さんの会社に勤めていた。「岡山フードサービスはおもに、畜産などの卸をおこなっています。社長は、今でこそ有名な『茶美豚』を世に知らしめた人」。その内臓を売る手段がなかったから、同社がプチ・フレンチと焼とんの店『串焼き 咲菜(さかな)』を開いた。ホテルのレストラン課で働いていた川端さんはホテルを辞職。そして『咲菜』の立ち上げにスタッフとして携わり約3年、料理長のもとで経験を積むことに。「母体が大きな企業だったので商品企画をはじめ、企業経営の仕組みも学ぶことができました。例えば、本社があって子会社、その双方に利益をもたらすためのシステム作りとは何か?など」。しかし、『味菜』は紆余曲折あって閉店。「焼とん以外にサイドメニュ−も多く、あれもこれもしたいんだけど結局、中途半端になり。利益を出せなかったんですよね」。『咲菜』のスタッフ全員が会社を去り、川端さんは自店を開くことに。「豚モツの仕入れをどこからしようか悩んでいたんです。岡山社長には迷惑をかけた身でもあったんで。そうしたら社長のほうから『ウチの豚、とってくれへん?』って話をしてくださったんですよ」。
川端さん曰く、「社長のその心意気には胸を打たれましたね。なんて心の広い人なんだって」。そうして、焼とん専門店を立ち上げた川端さん。店の話題は徐々に世間に広がりはじめ、「社長はね、『お前んとこの店の話、よく聞くで。困ったことがあったらいつでも言えよ!』って。ほんまに嬉しいです」。
決して美しい退社ではなかった。しかし、今なお岡山社長と付き合いができる理由は?との問いに、「社長は『みんなが幸せになったらえぇ』と、常に考えておられる人間なんです。社長から受けたその思いを、今後は僕がしたいと、常に思ってます」。それはお客様が喜ぶ店づくりはもちろん、スタッフへの心使いや、彼らが独立した後もいい関係を築くこと。「僕がいろんな人を幸せにしたい。社長への恩返しは、それしかないです」。

もうひとり、川端さんが刺激を受け続けている人がいる。大阪・高槻にあるベルギービール・地酒・焼酎専門店『白菊屋』の店主・松尾實さんだ。
「松尾さんのおかげで、蔵元さんや同業者の方との繋がりができたのです」。03年の焼酎ブーム前から、豚料理と焼酎との相性を提唱していた川端さん。「松尾さんは、焼酎の裏ラベルのことよりも、蔵元の人柄の話をよくしてくださいます。ブランド優先ではなく、“人”ありきの焼酎だということを、教わったのです」。現在、店では100種以上の焼酎を取り揃え、鹿児島の酒蔵を訪れることも度々だ。
そんな川端さんは独立前、松尾さんに勧められた飲食店へリサーチに出向くことが多々あった。「当時は、店の人に挨拶もせずに食事をしていたんです。自分の店を開くにあたり何か盗めるネタはないか!ってギラギラしていましたね。それを松尾さんに話したら“何で挨拶をしないの?それおかしいんじゃない?って。僕が姑息だったんです(笑)」。その後は、素性を明かしながらの店訪問が続き、同業者との付き合いがどんどんと広がることに。「松尾さんの一言で僕自身の世界が変わりましたよ。彼のおかげで、いろんな方との深い縁が生まれたのですから」。

現在、川端さんは「焼とん専門店」3店舗の他に、フィンガーリブとワインの店「ワインバル・ヤ リブリン」も経営している。人との出会いを軸にインスパイアされ、食べ手にもスタッフにも、幸せを与え続ける川端さん。今後どんな展開を見せるのか、大いに楽しみである。

[2011年11月22日取材]

「焼酎は、顔の見えるご縁のある蔵元さんのものだけを揃えています」と川端さん。
「難波千日前 焼とんyaたゆたゆ」での仕込みシーン。豚のシロ(大腸)ほか、丁寧に処理をおこない1本1本串刺しに。
「難波千日前 焼とんyaたゆたゆ」
住所 大阪市中央区千日前2-6-10
TEL. 06-6643-8108
「焼とんyaたゆたゆ 天下茶屋 本店」
住所 大阪市西成区天下茶屋3-23-22
TEL. 06-6659-1201
「大阪焼トンセンター」
住所 大阪市中央区難波千日前3-19
TEL. 06-4396-8109
「ワインバル・ヤ リブリン」
住所 大阪市中央区千日前2-3-16 ユニバース横丁
TEL. 06-6647-8188
「難波千日前 焼とんyaたゆたゆ」です

[ 掲載日:2011年12月6日 ]