今年よりも来年、変わる自分

高山龍浩さんは、1976年大阪生まれ。1996年に辻調理師専門学校を卒業、翌年同フランス校を卒業。帰国後は、大阪のフランス料理店「カランドリエ」、ザ・リッツ・カールトン大阪のメインダイニング「ラ・ベ」、ダイニングカフェ「シュハリ」を経て、2002年に独立。大阪・肥後橋に「トゥールモンド」を開店し、現在に至る。
独立したのは25歳のときだった。プロフィールによれば、他店での修業は5年ほど。高山さんが「早く独立して、自分の店をもちたい一念でした」と話すのを聞くと、当初から、自らを鼓舞し、自分で自分を変えていく意欲をもっていたのがわかる。
なぜなら、自覚があるからだ。本人もいうように「修業が短いので、師匠と呼べる人はいません」。その替わり、「自分でつくっていく。そのためには、刺激は求めるのです。知ること、体験することを大事にしていました」と話す。
最初の店のスタイルは、ダイニングカフェ。「それまで経験したスタイルを自分なりに融合させようと考え、始めたのです。ところが、すぐに、ベースとなるべきものが全く身についていないと実感させられました」と、高山さんは振り返る。
気づかせてくれたのは、お客さん。「店をもった頃は、まだブログの始まる前。お客さんのなかで、感想や意見を直接言ってくれる人が多かったのです。こちらも若かったですから、素直に聞けて、もっと頑張らねばと思いました」。
加えて、料理人との交流での気づきもある。同じオーナーシェフ同士、会って話をする機会が増え、わかってくることも多くなっていた。「知識や技術の話題になると、自分には何が足りないのか、実感させられることばかりでした」。
とくに、焼き鳥「あやむ屋」の永沼巧さんを中心に、知り合う料理人は広がっていったという。南茂樹さん(一碗水)、渋谷圭紀さん(ラ・ベカス)、松尾英明さん(千里山 柏屋)とは、閉店後の深夜に、各店で同じ料理を食べて意見を交わし合う、というような交流が続く。
刺激を受けるばかりでなく、自らも勉強を重ねた。「空いた時間には、いろんな店へ食べに行きました。味わっておかなければ比較もできませんから、自分の店よりレベルの高いお店にも進んで行くようにしました」。
各地から食材を仕入れては試すことによって、フレンチに和の食材も使うようになった。コンロやオーブンという限られた加熱調理器で、どれだけ料理を作り込めるか、常に手をかけて仕込む。さらに、たとえば、ゼラチン、アガー、ペクチンなどの製菓材料も、それらの機能と効果を知れば、料理のなかに生かしてみる。こうした、ある種のチャレンジは、高山さんのスタイルとして定着していった。
2008年にはコース主体に進化。「ビストロ料理からスタートして、今はコーススタイルで、よりフランスを感じるようなところへと、テーマを広げています。料理の中に、ストーリー性や地方性、素材を大切にしながらも遊び心を加えるように考えています」。
自分を信じ、自分を変えながら進化してきた高山さん。2010年にはミシュランの一つ星を獲得。「トゥールモンド」は、今や誰もが認める名店となった。2012年の今年、開店10周年を迎えたが「まだまだ、若手。今年よりも来年が、どう変わっているかが楽しみ。変化を進化と、とらえてもらえれば、うれしいです」と話す。
[2012年3月19日取材]


住所 | 大阪市西区土佐堀1-4-2 西田ビル 1F |
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TEL. | 06-6444-8819 |
営業時間 | 12:00~13:00(LO)、18:00~20:30(LO) |
定休日 | 日曜日・月昼休 |

[ 掲載日:2012年3月29日 ]