つながりの大切さを学ぶ

祇園・花見小路にある鶏料理店『侘家古暦堂 祇園花見小路本店』。2022年に20周年を迎える今も、進化をし続けている。昼は名物の石焼親子丼を求め、お客さんが4回転する人気っぷり。昨年末には本店のディナーを、コース料理一本に。「ウチは焼き鳥屋ですが、季節の移ろいを感じさせる味づくりを」と、総料理長の秋山達行さんは話す。
秋山さんは、大学時代に『侘家古暦堂』でアルバイトを経験。卒業後に入社し、24歳で当店の料理長に抜擢。さらに、串かつ&ワインの店『侘家洛中亭』の立ち上げに携わり、30歳の若さで当時、全4店舗を統括する総料理長に。「僕の料理人人生があるのは、今をときめく名シェフから大御所の方々にいたるまで、料理人の先輩方と関わらせていただいたおかげです」。イベントや短期修業でのリアルな交流はもとより、関西食文化研究会の勉強会などにも頻繁に出向くなど、常にアグレッシブといった印象を受ける。なかでも、「僕が自発的に動くきっかけになったのは、全日本・食学会の情報交換会で出会った、シェフの存在が大きいです」。御所南にあるフランス料理店『青いけ』の青池啓行(ひろゆき)さんもその一人だという。「まず青池シェフの味づくりに感銘を受けました。20種前後の野菜を用いたテリーヌは、野菜それぞれの持ち味を生かしきる、細かな仕事が随所に」。それは、食べた直後から、また食べたいと思わせてくれる「体が欲する」美味しさだったという。
「青池シェフには、交流を“深める”という姿勢を学ばせていただいた」とも。青池さんからの紹介で、京都のウェブメディア【Kyotopi [キョウトピ] 】代表・林健吾さんが主宰する料理人の勉強会にも参加。「和洋中、料理ジャンルの垣根を超えた、地元のシェフたちと繋がることができ、今も交流させて頂いています」。秋山さんは、新メニューを考案した際、「違う視点の率直なご意見をいただきたいから」と、彼らに積極的にアドバイスをもらいに行く。そうしてオンリストした料理は、本店の持ち帰り限定品「炭焼きよだれ鶏弁当(現在は販売なし)」から、コース料理の一品に至るまで数多あるという。
誰かにやらされている、ではなく自らアクションを起こすことで、記憶がテクニックに繋がることも増えたという。「随分前に、焼き鳥の名店『あやむ屋』永沼 巧さんに炭火の扱い方を教わりました。それは最小限の酸素で炭を燃焼させる“炭積み”の工夫と、焼きの技…。改めて今、永沼さんから教わったテクニックを咀嚼しながら実践しています」。
昨年11月から本店のディナーは単品をなくして「京都焼き鳥styleコース」一本に特化。「京都という地のローカルな食文化、そして季節らしさを感じられる構成に」。季節野菜の香りやだしの旨みを生かした「うま味3種」にはじまり、京都の銘柄鶏を用いた焼き鳥の数々。なかには、白湯仕立てのフカヒレを射込んだ手羽先など、中国料理からヒントを得た品も。いっぽうで、生産者の顔が窺える地野菜は、炭火でシンプルに焼き上げ、自社調味料「うま味さんスパイス サラダ用」や、店で仕込むアリッサなどを添える。「京都の食文化、そして季節をテーマに据えながら、適度にミックスカルチャーを織り交ぜて」、コースの起伏と味わいの広がりを楽しませる。
また、焼き鳥の取り皿など器は、清水焼の作家「TOKINOHA」清水大介さんによるもの。「清水さんの工房へは、青池シェフや「Kyotopi」の林さんと一緒に伺いました」。以来、焼き鳥の取り皿をオリジナルで作ってもらっている。「生産者、作家さん、そして同業者の先輩方との「つながり」からいただいた賜物です。そのご縁を忘れることなく歩んでいきたいです」と、秋山さんはにこやかに話す。



住所 | 京都市東山区花見小路四条下る 祇園町南側 歌舞練場北側 |
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TEL. | 075-532-3355 |
営業時間 | 11:30~14:30、17:30~22:00 (フード21:00LO、ドリンク21:30LO) |
定休日 | 火曜 |
料金 | 昼/石焼親子丼1650円、夜/京都焼き鳥styleコース8800円、ドリンクペアリング4500円。 |

[ 掲載日:2022年6月24日 ]