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1 theme STUDY vol.02「ラーメンのスープ研究」Program 1:基調講演:「味覚センサーによるスープ解析」
Program 1:基調講演:「味覚センサーによるスープ解析」
講師紹介
鈴木さんが慶應大学と共同で開発した味覚センサーを、人の味覚を再現できるなどの特徴とともに紹介。そして、料理デモの2店「拳ラーメン」と「龍旗信」のスープの解析結果を発表していただきました。それぞれ、スープにタレと香味油を加えて仕上げることで、各店ならではのラーメンの味が生まれているのですが、共通してうま味が増していることもわかりました。
講演要約
味覚の仕組みを人工知能と電極で再現してみるのが、味覚センサーです。技術要素としては2つあります。これまでとるのが難しかった甘味を数値化できる特殊な電極をもっているのが特許のポイントです。もうひとつがニューラルネットワーク、広い意味でいう人工知能です。人間の感覚は変化していくことが面白い。例えば、半年に1回くらいファストフードを食べると、最初はおいしいが、2日連続で食べるとおいしくない。不思議です。1回目は懐かしの味なんです。半年ぶりに食べると懐かしの光景が見えて心にくるものがあるのですが、その1日後に同じものを食べても、そう思わない。味覚は不思議だなと。人工知能で、どう応答するかを調べるのが、もうひとつのポイントです。電極の技術と人工知能(ニューラルネットワーク)の2つの要素で人の味覚を再現してデータをとる、それが弊社AISSYと慶應大学で共同研究した成果です。
*画面1:[ヒトの味覚を再現した味覚センサー]
味覚は5つ(酸味・塩味・苦味・甘味・旨味)ありますが、じつは2つに分けられる。苦味は400くらいあるので別にして、<塩味・酸味>と<甘味・旨味>の2つです。塩味や酸味には温度差がありません。温かくても冷たくても感じ方として劇的に変わらない。甘味や旨味は非常に変わる。塩味や酸味は水素イオンやナトリウムイオンです。甘味や旨味は糖分とかアミノ酸、イオンよりも温度変化が大きい。イオンは小さいので温度と関係せずに人間の味覚も応答するのですが、甘味や旨味は大きいので感じる仕組みが複雑です。例えば、味噌汁が冷めた時にしょっぱくなるのは、塩味が増したわけではない。塩味と旨味のバランスがあって、片方の旨味が落ちたので残った塩味でしょっぱく感じるのです。このように味噌汁が冷めただけでも味の感じ方が変わる。ラーメンに関しては、塩味と旨味のバランスがファクターとしてあり、温度によって最適なバランスが変わる。塩味はあまり変わらず、旨味が変わる。旨味の感じ方が変わると塩味の感じ方が変わる。塩味自体が変わらず、感じ方が変わるので、温度で味がどのように変わるかは、旨味や甘味がかかわっているものに関しては大きなトピックになります。技術のオリジナリティは、旨味や甘味の方にあるというのが我々の主張です。
*画面2:[弊社味覚センサーの優位性]
味の相互作用をみてみます。ブラックコーヒーに砂糖を加えていくと、苦味が減ったように思います。だけど、別にカフェインを抑えているわけではない。砂糖を加えて甘味が増して、その結果として苦味が減ったように感じる。これが、成分の量を測るだけでは味を測れないという例です。他の味がどれくらいあるかわからないと、だめなんです。もしも甘味を測っていないと苦味センサーはずっと高いままです。しかし、砂糖を加えると苦味が減っていく。他の味の相互作用、他の味がどれだけあるかによって変わってくる。味噌汁の塩味と旨味の対比効果、塩味が上がることで旨味が増えたように感じる。そういう効果です。ラーメンに関しては、塩味と旨味の関係で、ある程度まではプラスの効果で、塩味が上がれば旨味も上がる。けれど、ひとつの味が突出して高くなると他の味を消す。塩味を加えきった時、旨味が下がる。しょっぱい状態で塩味を加えても、旨味が下がり、抑制効果になる。味の対比効果、抑制効果。味の相互作用をみることができるというのが味覚センサーの特徴です。
*画面3:[味の対比効果・抑制効果]
今回は事前に店舗からスープを送っていただきまして、味覚センサーで分析しました。①は、主たるスープのみ。②は、各店のタレや香味油を加えてラーメンのスープとして完成させたものです。 拳ラーメンの①は、鹿と甘鯛と地鶏でとったスープ。②は、①のスープに醤油ダレ・鶏節・鶏の油を加えたものです。龍旗信の①は、定番のストレートスープということです。②は、①のスープに塩ダレと香味油を合わせています。それぞれ若干②の方に味が出ているかなと思います。
データで5つの味を数値化してどうなっているかをみます。拳ラーメン①は、あっさりしているようですが、ダシの旨味がある。センサーは後味を計測すると残る味があり、それがおいしさになっているのではないかと思われます。②は、塩味を加えている。味の対比効果で、塩分を加えることで甘味を増したように感じる。実際、データでは旨味が①の2.47から②の2.98と、+0.51の効果がある。塩分だけではなく、味のバランスがよくなってきています。
龍旗信の①は、スープだけで測っているので実際は食べる時に感じ方が違うかもしれませんが、塩味と旨味のバランスがよくて、甘味も少しある。②になると、塩味が増すことによって旨味も増すのですが、若干、塩味の方が旨味よりも感じ方が強くなっている。これは、麺を入れることによって丁度よくなるのではないかと思われます。
*画面4:[拳ラーメン様の分析結果]
*画面5:[龍旗信様の分析結果]
*画面6:[ラーメンの分析結果特徴]
以上が今回のラーメンに関しての分析結果です。ラーメンは、甘味と塩味と旨味、そこにちょっと酸味が隠し味として加わっていたり、苦味は計測した中ではなかったのですが、個人的には他のラーメンを分析した時にはあったりとか多様です。このように、味が変わるのは、なぜか。人間は新鮮な味覚を求めている。いかにおいしいものでも、ずっと食べると飽きます。常に変え続けないといけない。料理人の皆さんは大変な仕事ですが、今後、どういうものがおいしくなっていくのか楽しみに思っています。ご静聴ありがとうございました。
