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1 theme STUDY vol.04「ご飯の力」Program 1:基調講演:「ご飯の科学」

1 theme STUDY vol.04「ご飯の力」Program 1:基調講演:「ご飯の科学」

Program 1:基調講演:「ご飯の科学」

講師紹介
冨田 晴雄氏
大阪ガスエネルギー技術研究所 おいしさ・健康調理ラボラトリー「おいしさラボ」研究員・ごはんソムリエ

加熱を切り口とした“おいしさ”を研究対象とする「おいしさラボ」が、米をどのように炊けばおいしさと健康性を最大限に引き出せるかなど、日頃の研究成果を発表。あわせて、科学的な視点でご飯の力についての解説を行いました。

本日は、科学的アプローチにより可視化を行うことで、ご飯はこうやって変化するのだということをイメージしやすくし、よりおいしく、より楽しく食べられるようになればと思っています。
ご飯のおいしさは、外観、香り、味覚、食感、栄養素から成り立っていると考えています。そのなかで、本日は「食感のよさ─弾力・硬さ・粘り」に関して米の構造との相関を中心にお話させていただきます。
*画面1:[ごはんのおいしさの定量化]

画面1:[ごはんのおいしさの定量化]

まず、玄米の構造から。米粒の断面の画像─細胞と外側にうま味の層が詰まっています。これを拡大した画像─外側は種皮、内側に糊粉層、亜糊粉層ともいいますが、ここにタンパク質とかうま味成分が多く含まれています。玄米は精米して食べます。精米した時、タンパク質やミネラルがどのようになるかというグラフ─精米としては90%になりますが、ミネラルは大分カットされる。タンパク質もカットされる。五分づき、三分づきと減らしていくとミネラルやタンパク質がとれますが、若干、雑味が出てくる。もう一つの問題は、玄米は吸水させるのに時間がかかることです。これが炊飯器に敬遠される理由だったのですが、最近、玄米にロウ層、疎水層があることがわかりまして、それを削ることで画期的に吸水を早くすることも商品としては出てきております。
*画面2:[玄米の微細構造]

画面2:[玄米の微細構造]

精白米の断面は大きく3層の構造になっています。1層目は細胞で50~100マイクロメートル、0.1ミリの大きさからその中に細胞の小器官、アミロプラストが入っています。細胞の小器官の中にデンプンが2~3ミクロン、髪の毛より細い粒が入っていてデンプンがどう調理によって変わっていくかが重要になってきます。デンプンの調理の変化は3つあります。一つ目が吸水による膨張。デンプンは水を吸うことで大きく膨らみます。炊飯で2.3倍くらいに膨らみますが、吸水の時点で1.2倍くらい大きくなりまして、それが最初の大きな変化です。そこに火が入ることで水と熱で「糊化」という現象が起こります。「アルファ化」ともいっていました。米はアミロース(硬さ)とアミロペクチン(粘り)の結晶構造をもっていて、そこに水が入り、火が入ることで結晶構造を崩す。ナノレベルの話ですが、実際の調理で行われています。この状態が「糊化」。これを放置するとだんだん弾性がなくなり、固くなる老化が起こります。これは結晶構造から水が抜けることで、最初の硬い構造に戻る。科学的にはこの3つの現象が炊飯における大きな構造変化となります。
*画面3:[精白米の微細構造]
*画面4:[炊飯における構造変化]

画面3:[精白米の微細構造]
画面4:[炊飯における構造変化]

それぞれの工程で構造変化を可視化、定量化します。まず、吸水を可視化する技術を開発しました。各浸漬温度、10℃、25℃、40℃、55℃でどのように水が入っていくかを動画で紹介します。画面では水が入ると米の色が黒くなっていきます。高温ほど早く水が入り、黒くなります。10℃、25℃はひび割れを中心に水が入っていきます。40℃、55℃は奥の方は水が入りにくい。低温ではひび割れから入るので最終的な膨張としては低い温度の方が大きくなる。
*画面5:[吸水工程での構造変化の可視化]

画面5:[吸水工程での構造変化の可視化]

次に定量化を行いました。最初の状態からどれくらい量が変わったかをグラフで見ていきます。高い温度が赤色で低い温度が青色です。温度が低い方が変化は遅い。遅いのですが、最終的には引っくり返って10℃、25℃、40℃、55℃と最初の吸水速度が遅いものほど、より吸水するという結果がえられます。吸水は温度だけではなく、品種でも吸水の特性は大きく変わります。10種類の米を評価した結果、全く違う吸水曲線を出しています。この技術を応用して何ができるか。吸水曲線からどれくらいの時間浸けたらいいか、最適吸水時間を出します。米によっては20分~60分まで広い幅で最適の吸水があることがわかります。それぞれの米にとって最適な吸水状態で炊飯することで吸水においては理想の状態と考えています。

炊飯ではドラスティックな構造変化が起こっています。コンロ炊飯する鍋の断面を削って可視化したものを見ていただきます。炊飯中の米粒の変化が見えます。5分くらいで沸騰し、沸騰した時に激しく下から泡が出てくる、その通り道がカニ穴といわれています。ブツブツ沸いてきてカニ穴ができてくる。ここで糊成分がどんどん出てきてプクッと膨らむ。この時にデンプンが溶出してデンプンが「おねば」となって返ってきます。一粒の場合の構造変化を出します。条件としては8分程度で沸騰状態にもってきて、その後、温度を一定に保つ。60℃を超えたところでプクプクと泡が出てきます。このまわりがボヤッとしている。ここでデンプン質が外に出ていきます。胚芽部から出てくることが多い。このまま沸騰を続けていくと60℃を超えるとサイズが急激に膨張する。60~80℃の間に大きく膨張が起こり、その後、沸騰を続けて皮がめくれる形になって中からどんどん成分が出てくる。こういう変化をしております。
*画面6:[炊飯工程での構造変化の可視化(マクロ)]

画面6:[炊飯工程での構造変化の可視化(マクロ)]

一粒の変化をもう少し詳しく見ていきます。3層構造のデンプンがどう変化するか。デンプンは糊化すると一部のデンプンが多孔質構造になっていきます。ここではツルツルの状態、こちらは多孔質な構造になっています。レベル2、アミロプラスト単位で糊化が行われます。さらに糊化が進むと全体的に均一に糊化されて全体的に多孔質になる。さらに糊化が進むとどんどん多孔質の構造が大きくなる。これと実際の食感との相関はどうなのか。一例として10℃で20分、10℃で60分、10℃で120分、吸水曲線でいうと10℃で20分の米は吸水不足。10℃で60分は吸水が十分に起こっている状態。10℃で120分は吸水が過ぎた状態です。この時の構造は外の方はきれいに糊化していますが、中はまだレベル2の状態が残っている。10℃で60分は中まできれいに多孔質構造ができていて、さらに120分になると多孔質が中まで大きい状態になる。食感はどうか。この状態では芯が残って若干硬い。しかも粘りはない。これは硬さも粘りもしっかり出てくる。ここまでくると柔らかいが、粘りは構造が大きくなりすぎて、ベッチャリした構造になっている。丁度、吸水が終わったあたりがいいのではないかと、結果からいえます。
*画面7:[炊飯工程での構造変化の可視化・定量化(ミクロ)]
*画面8:[炊飯工程での構造変化の定量化(ミクロ)]

画面7:[炊飯工程での構造変化の可視化・定量化(ミクロ)]
画面8:[炊飯工程での構造変化の定量化(ミクロ)]

これらの技術を使って炊飯米の食感を定量化しました。食感をどんなものかを数字で表し、その原因は何かを技術を用いて分析しております。会場のホールにも展示していますが、前歯の感覚でご飯を潰した時にどうなるか。上からどんどん米を押し潰していき、米の表面を潰していく。さらに下にいくと表面が割れて、ご飯の内部を潰していく。そこにかかる力の変化を見ています。グラフは縦軸が「潰す力」、横軸が「潰れ具合」─表面の弾力、表面の硬さをとり、最後は中の硬さ、中の弾力も含めて評価しています。この技術と先程の技術を用いて、本日実演されるシェフそれぞれの炊飯米の食感を定量化し、その違いを吸水、炊飯の評価技術を用いて分析しました。Program2で発表させていただきます。
*画面9:[炊飯米の食感の定量化]

画面9:[炊飯米の食感の定量化]

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