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![1 theme STUDY vol.04「ご飯の力」Program 3:料理デモンストレーション(試食付き)[仔牛のブランケットとピラフ]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927226/files/topics/474_ext_2_0.jpg)
1 theme STUDY vol.04「ご飯の力」Program 3:料理デモンストレーション(試食付き)[仔牛のブランケットとピラフ]
Program 3:料理デモンストレーション(試食付き)[仔牛のブランケットとピラフ]
講師紹介
フランス料理では米という食材がどう使われるか。日本のご飯とどのような違いがあるのかを実証する料理を披露していただきました。
僕はフレンチの料理人ですので、米に関する日本との文化の差をまず知っていただきたい。そのことをメインで話していきたいと思います。日本の米とフランス人が考える米の差。たとえば、日本の米は地方によって違います。品種も何百種類もあります。誰が作ったか、どこの水を使ったかなどの違いがあります。これはフランスのワインと同じだと思います。ワインには原産地名称保護制度があり、原産地に限定され、どこの県、何々市の誰々さんが造ったもの。どういう造り方をしたか。原産地が細かくなればなるほど違ってくる。フランスで米を作っているのは南仏のカマルグとか限定されます。
フランス料理で米はどういう位置付けか。単純に野菜としてです。どのように調理するか。湯がいただけで米を食べるのは、ほぼないと思います。今でこそフランスでもインディカ米とか日本の米とか湯がいてオリーブオイルだけで食べるヘルシーな方もいますけど、田舎にはいない。フランスで米を食べるのは、リゾットかピラフしか考えられない。フランス人は胃腸が弱いので火が入ったものしか食べません。生ハムとかスモークサーモンとかは生じゃないかといわれますが、ちゃんと火が入っています。フランス料理で生ものを食べることはありえません。そういう文化なんです。しっかり火を入れた方が甘みは出ると思いますが、消化能力が弱い国柄ですのでパンもガチガチ。中に水分がしっかり入って、モチモチするパンをフランス人は好きではありません。日本でよく売れるパンとフランス人が好きなパンは違うのです。米に関しても同じです。寿司の認知があるから、米を食べることはできると思いますが。今日のピラフは昔のフランスっぽく、いつもよりしっかり火を入れぎみで作ってみました。
仔牛のブランケットについて。仔牛の肉をお湯の中で湯掻きます。味が抜けると思うかもしれませんが、白く仕上げるためには必要な行程です。その後、たくさんの白ワインと野菜とで、ポトフのように湯がきます。湯がいてしっかり柔らかくなってから肉を引き上げ、ルーとバターを合わせたものの中にブイヨンを合わせ、シチューのように作ります。白い液体でクリーム煮のようなイメージがあるかもしれませんが、クリーム煮ではなく、ブイヨンの中にルー、小麦粉、バターが入ったものと思ってください。多少、生クリームが入っていますが、ほとんど感じないくらいです。ブランケットの古典的な作り方では、ここに卵黄を入れます。カルボナーラのように卵黄を熱いところに入れて、よりとろみをつけます。ブランケットの付け合わせは必ずタマネギをバターで炒め、米もバターの中で炒めて鶏のブイヨンでしっかりと火を入れたものです。「炊きたて信仰」というのはフランスでは一切ありません。日本は炊きたてのご飯、焼きたてのパンといいますが、フランス人では少なくて、焼いて落ち着いた時の方が火が中心まで入っていると喜ばれます。今日のピラフも作ったのは先週木曜日です。作って100℃のスチームの中で10分くらい真空パックにして加熱して殺菌してレトルトパックの状態でこちらに送り、先ほど、厨房のコンベクションオーブンで温めてもらいました。シチューの中にはフランス家庭料理と同じようにセロリ、ニンジン、今回はマッシュルームが間に合わなくて丹波シメジを入れました。
盛りつけをします。料理の中に酸味が入っています。フランス料理の味の基本は「塩」と「脂」と「酸」だと思います。マヨネーズとかドレッシングとか、味の基本をこの3つにおいているため、白ワインで酸味、塩をしっかり、仔牛とかバターの脂が本来のフランス料理の味の構成だと思っています。素材を生かすために酸がないと塩と脂だけになる、そうすると脂が強くなるので脂を控える。そして塩を控える、となるとフランス料理じゃなくなっていく。バランスが必要です。東京の新橋でフランス料理店をやっていますが、歴史のレールの上を歩いていることを料理の上では大切にしているので、本来のフランス料理の塩、酸、脂を大切に作っているつもりです。



門上 仔牛のブランケットの付け合わせは、必ずピラフですか?硬さはこのくらいですか?
杉本 ピラフですね。フランス人が好む硬さはこのくらいです。僕が好きな硬さにするとフランス人は残します。ちょっとパラパラとした炒飯のイメージの硬さにすると「火が入っていない」という。大量に食べると消化しきれないので食べた後に残る。パスタもすごく茹でます。根本的に体の構造が違うのかな。フランスに12年いた僕の感想というか。それを否定しても意味がないし、フランス人が日本にきて「なんで日本人は生のものばかり食べるんだ」と思うかもしれない。今日はしっかり火を入れぎみのフランス人好みの火入れで作りました。混ぜていただくとパラパラしますけど。
門上 混ぜると米粒の感じが出てくるということですよね。実際に食べてみると、そう感じました。冨田さん、それを評価するのは難しいですか?
冨田 食べた時にツルッと滑るようなことが起きます。測った時も米が逃げていってしまうので、実際の数値より低く出てしまうのではないかと、測りながら思いました。お茶漬けは粘りけが表面にあるので、まだしっかりと食い込んでくれます。
杉本 徳岡さんがいわれたように多分、濃度も大切なポイントだと思います。フランス料理におけるすべてのソースはリエといいますが、濃度がついたものになります。濃度をコンスターチでつけてもいいし、卵黄でつけることもあります。リエすることによってソースに変わる。リエしていないもの、分離しているものはフランスではソースとはいいません。ピラフにソースを合わせることを考えると、濃度のついた液体といっしょに食べるのがおいしい。日本のカレーはフランス料理に近いというか、濃度のついたものですよね。
崎 本来は温かい状態で提供してもらっていると思うのですが、試食用のはちょっと冷めているし、小量。ソースといっしょに食べると印象はまた違ったかなと思います。
徳岡 私の好みでいうと温度が一つ、具材も溶けてしまっている感じで。濃度を調整して米の硬さと合うような何か。量があると、もっとみなさん喜んだかなという気がしました。



会員の質問 フランス料理は酸と塩と脂ということですが。この料理における米の位置づけはどういうものですか。ソースで米を食べるための料理ですか?
杉本 ピラフ単体だと味けない感じだと思います。ルーの中で絡ませることで米が吸うことができるし、米のツブツブ感がいいのかな。ただ白米のご飯だとどうなるか。ピラフは味がついていて、そこにシチューを合わせるので、強くソースの味を感じるんです。多分、ピラフにはバターもうま味も入っていて、マリアージュよく調和している。これは思いつきで考えた料理ではなく、200年前から作られている料理の一環として、セットなんですね。白米の方がおいしいから、白米のご飯にするとかカレー風味にするとか、と考えると全く違う料理になってしまうと思います。古典はできるだけしっかりと守っていきたいのです。
会員の質問 日本人は米の独自の楽しみ方があると思います。同じ料理をフランス人に出すのと日本人に出すのでは受けとめ方も違ってくると思いますが、今後、米を料理に組み込んでいくとしたらどういうイメージをお持ちですか?
杉本 僕自身、ピラフは日本人好みにしています。米はいい土鍋で炊いて、トリュフの卵かけご飯にしたり。親子丼も日本人好みの硬さにして、鶏肉はブランケットではなくフリカッセのようなものにして、卵は別のうま味をつけて白トリュフをつけたり、日本人好みに料理しています。けれど、最終的にこの形を、きちっと理解して定義をもって作ることの中で、どこまで崩していいか、崩してはいけないかは、その人の個性になってくる。崩しすぎると「これはフランス料理か、フランス料理ではないか」というところになって難しい。いつも自問自答しながら作るようにしています。フランス料理が大好きなので「こういうふうにフランス料理を、今ここで作っています」といえるように。毎日メニューは変えています。一つのメニューで一冊の本が書けるという定義のもとで、いつも料理を作っています。
会員の質問 フランスの米で作るピラフ、日本の米で作るピラフ、それぞれどのように工夫していますか。
杉本 ピラフには、フランスのカマルグ産の米を使うことが多いです。粒は大きめ、火入れはフランスではパスタのように茹でるので15分、20分と茹でます。一度作ると、大体同じように炊くようにしています。日本の米のように、どこの産だから吸水に何分とか細かいことを決めるのではない。鶏のブイヨンに10時間近い仕事を入れていますし、米はメインじゃなくて副食材なので、細かく集中する訳にはいかない。フランスでは米の料理が少ない。単体としてもフランスで進化しなかったのは、単純に文化の違いだと思います。そのかわり、小麦粉はいろんな種類がありますし、フランスパンにしても多くの種類があるのは文化の違いだと思います。ちなみに今日の米は、千葉県産ですが。
