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1 theme STUDY vol.04「ご飯の力」Program 3:料理デモンストレーション(試食付き)[穴子の棒鮨]

1 theme STUDY vol.04「ご飯の力」Program 3:料理デモンストレーション(試食付き)[穴子の棒鮨]

Program 3:料理デモンストレーション(試食付き)[穴子の棒鮨]

講師紹介
寿司:崎 貴之氏
「鮨 美菜月」大将
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「穴子の棒鮨」

古米3種をブレンドした寿司飯についての考えとともに、ご飯と酢の合わせ方によって寿司からみたご飯の力を披露していただきました。

僕が考えるシャリのおいしさは、弾力のある食感がある米によります。弾力は、もっちり、食感は米粒に張りがあるとか。口の中に入れた時にハラリとほどける。米の粒を感じられるが、噛み疲れない。芯が残っていない。寿司は平均12から15貫くらいを一回の食事で召し上がっていただいていると思いますが、芯が残っていると噛み疲れる。噛み疲れず、なおかつ米の表面にデンプン質が出ていなくて粘りが少ない。そういうシャリを考えています。味わいとして、米の甘み、酢の香り、後味のよさも大事にしています。昔の大阪の寿司屋のシャリは、甘いか甘くないか、酢が効いているか効いてないかに留意していましたが、10年ほど前から赤酢を使っています。それによって香りとコクが表現しやすくなっていると思います。赤酢を3種類ブレンドして、イメージする香りとコクのおいしさに近づけています。香りとコクで立体的にイメージした味を作っています。

なぜ古米を使うか。酢をきれいに吸収してくれるからです。なぜブレンドするのか。固くておいしいものが半分と、やや柔らかいもののブレント、その方が白米が炊きあがって酢をかけるとシャリが切りやすいんですね。ブレンドしていない米でも、いい塩梅のものがあればいいのですが、知っている限りブレンドした方がきれいにコーティングしやすい。米は、「日本晴」「はえぬき」「森のくまさん」の3種類をブレンドしています。どういう特性があるか。「日本晴」は、硬めの米質で粘りが少ない。甘みがある。炊きあがった時、酢を吸収しやすい米質だと思います。大阪の寿司屋は20、30年前は、日本晴一種だったと思います。「はえぬき」は、日本晴とは違う硬さ、食感のある米で、時間がたって食べた時、日本晴だけだとちょっと硬いのが気になるのですが、はえぬきが混じっていると気にならなかったのでブレンドするようにしたんです。炊きあがった時の9分が粒です。「森のくまさん」はコシヒカリの曾孫になる品種で、粘りもあり、モチモチの食感、甘みのある米質です。寿司屋好みなのです。

古米を使うので管理が大事になります。米屋と話をして、玄米で、温度15℃、湿度70%の保冷庫で管理してもらい、玄米の水分浮遊出率15%。なぜ15%か。引きすぎると精米した時に米が割れる。米の表面のデンプン質が出る。16%だとカビが生える。15%が一番いいと米屋に聞いたからです。何℃の水で炊くのがおいしいか。水道水は夏場25℃、冬場で大阪では8℃くらい。10℃前後かと思います。夏場と冬場では蓋につく水滴の量が違います。15℃が米を炊飯するのに最適ではないのかなと思います。玄米で15℃、水分も15%、15℃くらいがいいのかなというイメージです。夏場は炊飯する時に氷を入れて、毎回計るわけではありませんが、15℃くらいになるのを目安に炊飯しています。

米を炊く時、精米された米を洗って吸水させることによって米質を柔らかくする。その後、加熱して沸騰させる。沸騰して釜の中の圧力が上がった後、蒸らしに入る。それぞれの工程で何が大事かを考えました。精米後の確認として、精米した後の米を握って手を広げて塊がバラけたら糠の表面の汚れがとれているのかなと思います。バラけない時は、もう一度洗う。今は精米技術もよいので3、4度洗えば十分かなと思います。米は野菜だということでしたが、僕は乾物だと思ってまして、戻し方が大事だからです。戻す水温も15℃を目安にしています。吸水の「浸漬」は、和食の方はザルに上げますが、僕はそのまま水に浸けた状態にしています。ザルに上げると米の表面にヒビが入るような気がするのです。ヒビからデンプン質が出てくると、シャリにした時の粘りの原因になると思うので水に浸けたままの状態です。生ぬるい水に氷を入れて15℃を目安にしています。そして、蛍光灯の下の目視できれいに膨らんでいることを確認して炊飯します。炊飯する前に最近気にしているのが、浸漬させた時、そのまま炊くのではなく、その水を捨てると底の方に白い濁りがある。米の粉砕の米なのか、デンプン質か、それもきれいにとってやった方が、きれいな米粒になると思うのできれいにして、しばらく水でさらした状態にして炊いています。土鍋で炊いていますが、大事なのは圧力だと思うので重しをおいたりしています。それでは、炊きあがりましたのでシャリをあわせたいと思います。

門上 米をザルに上げず、その後、水でさらす。その場合、米と水の重量はどういう感じですか?

 米が水の中に浸かっていれば大丈夫だと思います。今日は握り立ての寿司をと思いましたが、穴子の棒鮨を用意しました。温度を下げすぎないように、人肌の温度を目安にしています。土鍋で炊くと鍋肌に米がつくので、こねくり回さない状態で。米のいい部分だけをとっている感じです。炊きあがりにシャリ酢をかけましたが、酢を温めて40、50℃くらい。冷めた酢をかけても馴染まないので、温かい酢をかけています。赤酢を使うので酢が混じっているかを確認できるのですが、米酢の時は、切るのも一つの技術でした。今はそんなに難しくはないと思います。
試食していただく寿司は、9時から炊飯して10時から押し始めた棒鮨です。サバの棒鮨とかだと半日から1日たって食べる時、米の表面にデンプン質が出るように、まな板の上で米をこねます。シャリの粘りを出して棒鮨にするのです。今日は、こねていません、力を入れて押していません。

杉本 ピラフはオーブンで火を入れるのですが、土鍋をオーブンで火を入れるとどうなりますか。昔は底だけだったが、今は四方八方から火が入れられるし、圧力も入れられる。土鍋をオーブンで焼いたらどうなのかなと思ったのです。

 冨田さんが釜を半分に切って再現されていましたけど、もっと大きい釜でたくさんの量を炊くと米が釜の中で踊るとか。全方向から熱をあてて、米がいかに釜の中で対流して圧がかかるかが大事だという話でしたね。土鍋だとどうなるんでしょうか?

冨田 温度によると思いますが、オーブンだと全体で250℃くらいですか。気体による熱伝導は時間がかかります。下から温めると1000℃なので、下から自然対流が出てきてカニ穴とかができやすいと思います。

杉本 ピラフの場合、沸騰するまで強火の直火です。沸騰した瞬間に蓋をしてオーブンに入れるので、一応カニ穴はできるのな。オーブンの中で、液体は100℃を超えてると思うのですが。

冨田 沸騰の後、デンプン質が流出すると米に粘りが出てきて対流が起きにくくなります。沸騰までの間は動くのです。沸騰して時間がたつと、ほとんど動かない。玄米だったらどんどん動くのですが、白米は動かなくなります。

会員の質問 寿司にする時、タネによってシャリを変えるわけにいかないといわれます。シャリに合うようにタネの切り方、大きさを考えるということになるのでしょうか?

 シャリを2種類、赤シャリと白シャリを用意している店もあると思います。そのへんは考え方だと思います。もともと堺で店をやっていて11年前に独立して今の場所で6年目。堺の時は、米酢1種類と赤酢2種類をブレンドしていました。移転して赤酢の量が増えていって、今は米酢を使わずに3種類の赤酢をブレンドしています。
店ではコース仕立てで供しています。はじめ4貫は白いもの、赤いもの、今の季節、カワハギにマグロ漬け、イカの後にトロ。その後、酢の効いたコハダ。白いものは冷たい温度で、赤いものは室温に戻した温度で。タネの温度でイメージしています。赤酢を使うのに難しいのは白身とかイカとか貝類には印象がよくない。それをどうするか。イカはよく噛まないと味が出ません。お客さまに「このイカ、30回噛んでください」とはいえないので、口に入れて3回噛んだ時に30回噛む味が出るように、包丁を細かく入れ、醤油をふってゴマをふっています。なぜゴマをふるか。イカと赤酢だけだと馴染みの悪いのが、ゴマの香りが入ることでおいしさを感じやすくなる。そうした順番で供しています。酢の効いたコハダの後は、赤酢でしめたコノシロです。産地違い、部位違い、温度違いとか。シャリとワサビとの相性のいいタネとか。マグロの漬けは明らかにワサビが効いているのがおいしいと思っています。今の季節だと甘エビの漬けを握ったりしていますが、わざと甘エビは冷たい温度にしておいて握る直前にシャリを交換して温かいシャリで握る。冷たいタネと温かいシャリの温度変化で楽しんでいただく。というように、一種類のシャリで楽しみ方を提案しています。

徳岡 関西の寿司は甘めで、ドライでコクがあって酸味がある。この穴子の棒鮨、寿司飯は結構酸っぱい。しかし、穴子といっしょに食べるとバランスがよくなっている。もう少し温度があってもいいのかなと思いました。これだけ大勢だと難しいと思いますが。15℃の炊き出しを試してみます。酢をあわせる時、40℃くらいにしたらいいということでした。これも試してみたいと思いました。

 冷えた温度の酢は、全然シャリに馴染まないです。シャリ切りも悪くなります。温めてもらう方がムラなく馴染むと思います。

「穴子の棒鮨」

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