- ハグイベント

ハグくむワークショップvol.1「集客」Program 3:料理実演:「さゝ木劇場デモンストレーション」+試食
Program 3:料理実演:「さゝ木劇場デモンストレーション」+試食
講師紹介
カウンター越しに独創的な京料理の生まれる瞬間が共有できる佐々木劇場と呼ばれる場を再現。会場の参加者から選ばれた8人にカウンターに座ってもらい、まさに「祇園さヽ木」にいるような料理実演をしていただきました。
●メッセージ
料理する前に、僕の店の生い立ちと今までやってきたことからお話しさせていただきます。今の店は3店舗目です。同じ祇園で構えた最初の店は、カウンターに5人しか座れない、ほんとに狭い店からスタートしました。それまでは僕、先斗町で8年半ほど料理長をしていました。ですから、オープン当初の3カ月は皆さんがお祝いを兼ねて来てくれました。3カ月経ち、お客さんが一巡すると店はもぬけのカラ状態になりまして、というような天と地ほど落差のある経験をしました。



オープン前日、近所のお茶屋さんのお母さんたちを呼んで料理を振る舞いました。忘れもしません、9月でした。和食に八寸があります。器に料理をきれいに盛り合わせて供するものです。自信をもって、それを出したのです。旬の新銀杏に松葉を差して、カッコよく盛りました。けれど、お茶屋のお母はん、一つも食べません。「あんた、こんなんでやっていけると思うたら大きな間違いや」と言われました。「祇園という街は、1週間に1、2回、舞子さんや芸妓さんを連れて遊びに来はるとこや。こんな格好や色彩だけで商売できたら誰でもするわ、粋がわかってない」と。「銀杏やったら、塩で煎って小皿でポンと出すだけでも『新銀杏、今からかいな。秋が来たな』という話になり、私らも会話に入れてお客さんの心が打ち解けていきます。そういう料理をつくりなさい」と言われました。明日オープンさせなあかんのに、そんなことを言われたもんやから、料理どうしようかと迷いが出たんですね。柱がなくなって、何を出したらいいのかわからなくなりました。そこで悩んで悩んで、悩んだ末に考えたのは、自分がうまいと思うものを出す。格好はいらん、何かを伝えられるようにというものでした。それからは、自分の思うかたちでどんどん進めていきました。それがウケたんですね。借金したら何でもできます。恥ずかしいなんていうてられません。お客さんにウケたら僕の勝ちや、みたいな。そんなこんなで、ずっとやってきました。
3店舗目は勝負でした。移転すると「店大きくした、高くなった、まずなった」と言われるのが関の山です。京都は特にきついです。そこで何か特徴をつけないといけない。民家を買った時、電気も通っていない古い家の中でずっと座りながら考えました。「佐々木はこれをしたかったんやな」と認めてもらえるものが必要やと。そこで思い浮かんだのが、ピザ窯なんです。岡山に吉田牧場がありまして、なにかの集いで僕は鮑をもって行きました。そこのピザ窯で鮑を焼いたら、なんともいえん火の入り方で、食感が違う、それまで食べた中で格別にうまい鮑でした。それが脳裏にあって、この店の広さだとピザ窯が置けると思いついたのです。結果、「ピザ窯を入れたかったのか。これで仕事したかったから移ったんやな」と、話題にもなりました。ピザ窯は大ヒットで、今に至るわけです。



おかげさまで、この19年間満席が続いています。そのなかでも若い子にはとくに電話での応対に気をつけるよう言いきかせています。電話では相手の顔が見えません。言葉遣いのちょっとしたことで腹を立たせていてもわかりませんから。電話でも店でも、お客さんに不快感を与えたら、僕はどつきまわします。鯛をおろすのに失敗しようが、人間ですから失敗はしますので怒ったりしません。でも、お客さんに少しでも不愉快なことをした時には、僕はすぐキレます。というのは、不快なことが1つあったとしましょう、算数では100引く1は99ですね、でもサービス業は100引く1は0なんです。こんな経験ないですか。 服を買うとき、タクシーに乗るとき、不快なことが一つでもあったら「あの服屋さん、もう行かんとこう」「あのタクシー、二度と乗らへん」と思いませんか。0なんですよ。100引く1は0になることを、若い子には日夜、口が酸っぱくなるほど言うてます。お客さんに不快な思いをさせない、集客=0にしたら何にもならない、今日はそのことだけを話したいと思って来ました。
集客に関して、もう一つ心に決めていることがあります。お客さんに一旦入ってもらったら、リピーターになってもらい、絶対離さないということです。そのためには、不快な思いはさせずに大いに楽しんでいただく。こういう気持ちをずっともち続けたいと思っています。
●デモンストレーション
(再び登場)お越しやす。今日はどうもありがとうございます。(カウンターに座る一人ひとりに向けて)お久しぶりですね。今日はありがとうございます。おおきに。いつもお世話になりましてありがとうございます。食事で何か苦手なものはございませんか。と、いつもなら、ここで飲み物のオーダーをうかがうのですが、今日はドリンクなしでスタートしましょうか。では、始めます。



先付けは、北海道噴火湾で揚がった毛ガニです。この毛ガニは甘くておいしいですよ。その上にキャビアを乗せています。キャビアというと、皆さん、キャビアだけを食べてしまいがちですが、毛ガニといっしょに食べていただければおいしいかなと思います。これから始めまして食べてもらいたいものがいっぱいあります。最後までお付き合いください。よろしくお願いします。という塩梅でいきます。これがいつものスタートです。でも、今日は何も入っていませんよ。毛ガニやキャビアは出ませんので、悪しからず。こんなふうに、料理を続けてお出していくなかで、料理人が食材の産地のことやつくり方など、お客さまに訊かれたら即答できるのでカウンターがすごく好きなんですね。ライブ感といえば、僕は矢沢永吉が大好きです。永ちゃん、66歳で僕とは一回り違うんですが、あの人のステージ、爆発してはりますわ。店のカウンターは17席で10メートル50あります。その中で毎日、お客さんと向かい合い、思い切り料理して、動き回れることに快感を覚えます。
さて、ここでハモいきます。今日は韓国のハモを用意しました。「鱧しゃぶ」をつくっていきます。うちの店では包丁を使うのもお客さんに見てもらいます。いろんなものを切っているのが見えると安心感があるかなと思います。こうして、ハモの骨切りの音を聞いてもらうと「ああ、京都の音やな」と言われます。それもまた、料理の一つと思うんですけどね。「ハモ好きですか。ハモ料理で何が一番好きですか」という感じで、お客さんとキャッチボールができると、みなさんも楽しくなりなすよね。楽しいところに人は集まります。
こうしてますと、僕が主役なんですけど、若い子たちにもたとえ数分でも主役になってもらう時もあります。それも大事なんですね。門上さんが“さヽ木一門会”と名付けてくれましたけれど、うちで修業し独立していった者は皆うまいこといっているんですね。うれしい話です。彼たちも一生懸命やっている。僕も光らなあかんと切磋琢磨する。店の従業員、スタッフとお客さまの会話も大事だと思います。それも料理の一つなんですね。え、できた、よし、後は柚子を振るくらいで、いきましょうか。特製の「鱧しゃぶ」でございます。どうぞ、熱々を召し上がってください。いかがですか。お口にあってますか。冬瓜、うまいでしょう。なぜ冬瓜というかご存じですか。冬瓜は、冬の瓜と書きますよね。でも、旬は夏です。昔、この瓜を縁の下に保管しておくと冬までもつので冬瓜になったのです。こういう感じで自分の知っている雑学をカウンターの中でお客さんに話すと、会話もはずみますよ。
続いて「鯖寿司」です。仕上げは焼きサバにしたいので、火を熾した炭に直に乗せます。すごい煙でしょう。いいサバの証拠です、と商品をアピールするわけですね。「ええの使ってますよ」と。でも、すごいでしょう。はい、おまっとうさんです。うちはお寿司を供するときは必ず手渡しです。器に盛って出しません。カウンターに座っておられるお客さんとは1対1になりますから、直にお客さんの手へ渡すのです。会話しているつもりで渡します。馴染みのある人には「アーン、どうぞ」なんて、こんな冗談を言いながら毎日やってます。大トリでございます。はい、どうぞ。おいしいですか。
今日は限られた時間のなかで、たった2品しかできませんでしたが、こんな感じでやっております。お客さんとキャッチボールできる雰囲気をつくり、かつ、うちのスタッフも機敏に動きます。うちの店は料理を食べにくるのにプラスαとして僕たちも食べていただく、そういうコンセプトで仕事をさせてもらっております。機会がございましたら、ぜひ店のカウンターに座っていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。
