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「熟成講座」Program 2:デモンストレーション(3)中国料理
Program 2:デモンストレーション(3)中国料理
講師紹介
保存のために熟成させるのが中国料理。

中国では、命をつなぐために収穫したものをいかに長期保存するかということで、保存食が多い。10月、11月には各家庭で、肉や鶏、魚に塩をすり込んで軒下に干し、それを1年間食べていくという習慣がある。
材料に対して3%の塩が一番腐りにくい。3%以下になると、風がないところでは1週間おくと腐敗する。3%以上あると、気温が4℃程度なら、1~2週間おいても腐らずに熟成が進む。今日は2週間熟成させた鶏モモ肉を使う。風にあてているので、水分が飛んで塩分濃度3%だったものがかなり濃くなる。それを水に一晩漬けて塩抜きをし、蒸し器で10分間蒸す。カラカラに乾いていた鶏肉が元に戻り、ハムのような感じになる。
中国料理はシンプル。鶏ガラスープの中華スープに山椒と紅生姜とローリエが入っている。これを沸かし、塩漬け鶏を蒸した時のだし汁は、とても良い香りと塩分がある。単に鶏に塩をするだけで、うまみ成分が出てくるのに加え、鶏の皮と身の間にある脂肪から独特の芳醇な香りがだし汁にも出る。シンプルに塩と砂糖で味を付けるが、塩味をつける時には必ず塩と砂糖を使うことによって、塩分濃度が高くても塩辛くない料理ができる。
ピータンの熟成は、塩ではなく石灰を使う。泥の中にタマゴを半年とか1年ぐらい漬けておく。また、素焼きの瓶の中にお酒を入れて、泥の中に埋めて発酵させ、紹興酒を作ったりする。自然にある中国の独特の菌をうまく使って、調理法を編み出している。

さまざまな料理を分析すると、偶然の産物から生まれたものが結構多いのではないか。日本のクサヤも、獲った魚を役人に没収されないように隠しているのを忘れてしまい、1年後に食べてみたら美味しかったというのが始まりだと聞いたことがある。
今日の料理は、鶏自体に塩を塗って熟成させているので、旨味が強い、そこに蒸した時のスープが入っているので、さらに旨味が加わる。それをあっさりした味わいの冬瓜(トウガン)と合わせてみた。フレンチや和食では複雑な料理があるものの、中国料理の代表ということで、いかにシンプルに美味しいものを作るかというテーマで調理した。
「飽食の時代」といわれる今だからこそ、シンプルな料理、昔の人たちがいかに普通の安価な食材を工夫して美味しいものにしていったか、そこが中国料理の取り上げるべき重要な課題だと思う。その意味で今回、熟成イコール保存という考え方で、まさに熟成によって、旨味が生まれてくる料理になった。

昔は冷蔵庫がなかったので、各家庭で塩をすり込んだ肉などいろんなものを吊していた。中国料理のレストランはそういう中国人が今までやってきた技術を残していくべき。素材に塩をするだけで熟成によって味を変え、それを素直に料理する。そういう料理があってもいいのではないか。あまりにも今の料理は複雑過ぎるので、一つの明快な考えで、中国の歴史、伝統、地域性を分かってもらえればと思う。
昔は北京料理、広東料理、四川料理、上海料理それぞれに特徴があった。戦後は北京料理や上海料理の店が特徴を持って繁盛していた。それがバブル経済になり、値段が高く豪華な料理に走ったことで、結果的に見た目が豪華な香港の広東料理が全盛となり、どのホテルでも広東からコックが来て料理を作っている。全部同じの広東料理になって、中国料理の個性がなくなってきている。
これからは、中国の郷土食をちゃんと理解しつつ、今の日本人にあった提供の仕方をする店が残っていくと思う。「医食同源」と言うが、中国の昔の宮廷で料理を作っていた人たちは、医学と料理学を兼ね備え、宮廷の人たちの健康を管理していた。贅沢三昧のものを食べているように見えて、そうではなく、中国料理は「もどき」も多い。デンプンを使って魚のようにしたり、大豆で肉のようにしたり。それで、大豆の加工食などが中国料理では多いわけです。

