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「熟成講座」Program 3:ディスカッション・試食・交流

「熟成講座」Program 3:ディスカッション・試食・交流

Program 3:ディスカッション・試食・交流

講師紹介

それぞれの料理によって変わる「熟成」のカタチ。

村田 吉弘氏、山口 浩氏、銭 明健氏、川崎 寛也氏
司会:門上 武司氏

門上 今日は川崎先生に熟成の定義をしていただいて、日本料理、フランス料理、中国料理とそれぞれのジャンルで、また美味しさが違うということで、それぞれが生活していく土地の味というものがあって、その中で熟成がどう捉えられているか。いろいろな課題や興味があったと思います。山口さんは、デモンストレーションの中で、熟成について少し整理ができたという話をされていましたね。

山口 「熟成」と「発酵」と「腐敗」があるが、それが混同されている。チーズなどは特にそうですが、腐りかけているものを「熟成しています」と出しているところもがある。

門上 熟成で鰹節の話が出ましたが、鰹節と昆布のダシについて、日本料理の新しいステージに行っているのではないかということでしたが、そういう観点ではどうでしょうか。

村田 僕らは小さい時から食べているから鰹節の燻蒸香、醤油の香りに慣れていますが、フランス人やアメリカ人のシェフに聞くと、「何を食べても香りと臭いがする」と言う。グルタミン酸とイノシン酸が相乗すれば旨味成分の高いものを作ることができると考えて、旨味を中心に料理を構成したら日本料理になるという考え方で、今やっているわけです。日本料理で、魚からダシを引く時もメイラード反応を利用すれば、より現代人に嗜好に合う、生臭くなくて香りが豊かなダシが引けると思いました。大学の先生やフランス料理、中華料理の方と一緒に勉強することは、お互いに当たり前と思っていることが、違ったりするので、その点では勉強になります。

門上 今回は川崎先生に熟成の定義をしていただいて、山口さんからは「旨味と美味しさは別ものである」、銭さんは「熟成イコール保存である」と。熟成と言っても、それぞれ皆さんの反応が違うし、考え方が違うというのは興味深いと思います。初参加の銭さんはいかがでしたか。

 とても面白い体験ができました。中国料理は、和食やフランス料理と比べて熟成については幅広く、牡蠣料理一つでも牡蠣を発酵させて3年程度おいて上澄みを使うとか。中国料理は多種多様な発酵調味料を使っていたんだなと改めて感じましたね。

門上 川崎先生は熟成の専門ではなく、食べ方や美味しさの研究が専門ですね。最初に熟成の定義をしていただいて、それぞれの方からの意見に対してはいかがですか。

川崎 サイエンスというのは食文化の裏にあるものだと思います。サイエンスで考えたら共通の何かがあるはずという立場を僕はとっているんです。日本と中国はアジアで、湿潤な気候で微生物が発達しやすかったから独特の調味料が生まれた。フランスやイタリアでは調味料という概念が基本的にはない。調味料があるアジアと、調味料はその場で作るフランス、イタリアでは全然違う。でも、欲しいものは何かと考えると、塩と旨味とメイラード反応なのかなと。中国料理も世界に広まっていますよね。それで広まっている料理って北京料理、四川料理、上海料理、広東料理とあった時にどこが多いんですか?

 同じ広東料理でもイギリスとフランスでは違うんです。中国料理は貪欲で、行った先々で全てを吸収する貪欲さがあると思います。

川崎 広東料理では発酵調味料はあまり使わないですね。四川や上海は結構使いますけど。発酵調味料があると、世界に出た時に、ちょっとやりにくくなるのかなと。フレンチは、そこはないじゃないですか。メイラード反応を加熱で作り出していくことで、ここまで世界に広まったと。

門上 中国料理で前回に来ていただいた魏さん(「一之船入」オーナーシェフ)、中華で「熟成」ということがある種、根幹になっていますか?

 「熟成」というと、さっき銭さんがおっしゃったように、中国はほとんど熟成料理です。保存食なので、10月から1年かけて作っていく。10年ものの熟成、3年ものの熟成などたくさんあり、寒いところと暑いところで多く行われている。日本に似ている気候のところでは、熟成は少ない。日本でも、暑い沖縄は豚の塩漬けなど、熟成させた料理が多い。

北京ダックも熟成させてから作る。腹のところに香辛料と調味料を入れて寝かすことで、味を回す。表面に調味料を付けると色が目立つので、中に調味料や香辛料を入れます。そのためにある程度、寝かすわけです。その後、油でさっと揚げて、砂糖をかけて乾かす。そこにもまた熟成がある。

門上 フランス料理で、中から味をつけていくということはあるんですか?

山口 北京ダックのような色のつけ方はしないので、今聴いて「なるほど」と勉強になりました。今日のペルドロー・グリ(山うずら)は軽めの2週間ほどの熟成でしたが、レストランの昼間のお客様は女性がメインなので、反応をお聞きしたいのですがどうでしょうか。ジビエ(野生の鳥獣)のソースですが、僕たちは食べ慣れているので、軽いなと。でも、慣れが必要な人にとっては、ものすごくきついなと思われる方もおられるので、その辺りをお聞きしたいんですが。

門上 山口さんのペルドロー・グリを「軽いな」と思われた方、手を上げていただけますか。…軽いと思われた方は、ごく一部で、ほとんど男性ですね。

山口 きついということですか?

門上 今、手を上げられなかった方はそういう感じですか?(フロアから「ちょうどいい」という声が)

 「熟成」イコール「旨味」、美味しさにつながっているというと勘違いしている部分もありました。今まで料理をつくる上で、旨味を足していけば美味しさになると単純に思っていたので、今日は本当に勉強になりました。

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