- 定期

「火入れ」Program 4:ディスカッション
Program 4:ディスカッション
講師紹介
司会:門上 武司

門上 まず川崎先生、大宜味さんの料理が火入れを3回することで仕上げるのと山口さんがやったことと、科学的には一緒で、村田さんがやったことも、科学的に同じだとお考えですか?
川崎 僕も同感で、考え方、方向性は同じようなことをしておられたなと思います。お肉を柔らかくすること、表面を香ばしくすることを、分けてやりましょう。分けて、それぞれやりやすい方法で、やりましょうよということだと思うんです。それが料理を発展させる第一の要素かなと思いますね。分けることで、多様にコントロールできる。掛け算の因数が増えるわけですね。ということだと思いました。
門上 掛け算の因数が増える、それぞれの思いがあると因数が増えてくると。山口さんは一回目の「だしサミット」に参加して考え方が変わる可能性が出てきたとおっしゃってましたが。「火入れ」については、ますます、すごくなってきたという感じですか?
山口 料理が科学的に解明されてきた。ファジーな部分で生きていたんです、料理人というのは。自分しか知らない、と。しかし今は、そうでない世界に入ってきていますのでね、次の世代の人は大変やな、と思って。僕たちが先輩から学んできたことは、木下先生がいわれた「曖昧」の部分があって、それが生きる糧であったというところが、料理人としてはあったかもしれませんが、もう、そういう時代ではなくなってきたということを、僕らの時代は感じて、次の世代にそれを伝えて、学び方も変わりましたよ、と教えてあげないといけないのかなと感じてます。
門上 「火入れ」というのは、料理人にとっては大事な部分で、初めての参加ですが、木下先生は皆さんの調理と、川崎先生の話を聴かれていかがですか。
木下 今日は、「曖昧さ」ということについて話しましたが、川崎先生のお話のように、科学的なことは必ず必要だと思うんです。料理人は、科学者とか物理学者の中間にいると、ブリア・サヴァランの話をしましたが、もう一つ、料理人はマジシャンでないといかんと思うんですね。マジシャンというのは何か。お客さん、食べにくる人を、パッと驚かさないといけない。なんとなく、ニコッとできるような、笑いがないといけない。そこのところに必ず未知の部分、隠す部分が必要なんですね。そういうことを感じるので、もっともっと先を見て、知ることによって、ある程度、食べる側、つくる側の、隠す方と、知らないでも驚いていただけるようなものを突き詰めていく時代。大変な時代ですけど、もっと突き進めていくという面では、こういう研究会は、いいなと思いました。
門上 大宜味さんも初めての参加で、両先輩の話があって。曖昧な部分と、皆さんの調理の考え方については、いかがですか?
大宜味 中国料理は、まだまだ昔からの調理法をそのままやっているなという感覚はあります。こういう機会に、科学的な根拠のある料理の仕方をするというのは、学ぶべきところだなと。見習わなきゃという気持ちになりました。僕らのつくっている料理で、そういう調理法を採り入れたら、もっとおしくなるだろうなということも、たくさんあると思います。そういうのを学びながら次の自分の発展にいけたらいいなと思います。
門上 関西食文化研究会は、ほんとにいろんな人が集まって、いろんな意見が出て、科学的なことがあったり、それこそ、曖昧さがあったりすることによって、次のヒントが生まれることがあればいいかなという会なので、意識、知識、背景だって違うと思うので、疑問は一杯沸いてくると思いますが、海外との経験が多くて、海外のシェフを招かれることが多い村田さんに伺います。おいしさという点では、それぞれの調理によって、また違うな、という話が出ていたんですが。
村田 勘を、数値にしていくことは必要なことだと思うんです。それをすることによって大量調理の可能性が出てくる。それを安価な値段でいろんな人がおいしいものを食べることができるということに落としこんでいける。そのことは「自分の料理が、おいしくなったらいい」だけではなく、社会的な役に立つのです。多くの人に、できるだけたくさんのおいしもいものを食べてもらうためには、今までの勘の部分を数値に変えて、ワーカーでも同じレベルのものにしていくことは、今、生きているシェフとしては必要なことだろうなと思います。その後、自分たちは何をしていくかという課題は残るでしょうけど、それは次の人が考えたらいいやろと。



門上 山口さんの「火入れ」と大宜味さんの「火入れ」の違い、料理の差とか、料理人の個性、勘とか、大量のものをつくる場合と、少ない人数のものをつくる場合も違うと思いますが、山口さんは、どういう個性が必要か、今後どうなっていくと思われますか?
山口 すべてが科学で証明されているわけではないんだけれども、必ず、すべて科学で証明されるだろうということですので、物理的に起こることは全部、ある意味サイエンスですよね。料理人の思いとか、目の前で一生懸命つくっている姿を見て、おいしくなくても、おいしく思うこともある。スタッフの人たちの意気込みとかを感じて。テクニックをしゃべるのか、食という一つのツールとして時間、空間をしゃべるのかによって、変わってくると思いますが。
川崎 こういう感じになると科学万能、火入れのサイエンスに、話が行っちゃいがちですが、そもそも科学は確実に後追いだと思います。世の中にあることを後追いする。シェフの勘とかテクニックを後追いで「これって、こういうことですよね。こうするとこうなるんですよね」と説明してあげることしか、できない。それが今まで、あまりされていなかったら、たまたま今の時代、注目されているだけで、一切、新しいことはやっていない。重要なのは食文化であり、世界観全体、料理人さんが持っているものです。
門上 村田さんが、日本料理には油脂分がないという話があって、山口さんはバターではなく、ニンジンとタマネギのピューレをクリームとかバターの代わりに使われるということとか。油分でのテーマがあるかなと。こういうことをやってもらいたということがあれば、皆さんからもアンケートに書き込んでいただければ参考にさせていただきたいと思います。
村田 いろんな方面からいろんな考え方、ものの見方がある。実際の全体像は、いろんな要素がある。火入れでしょ、うま味とか、実際に、はっきりわかって、あるものの方がいいのではないかなと。論理的説明が可能なことの方が、わかりやすいのではないかと思います。
門上 皆さんからのアンケートも参考にさせていただき、またコアメンバーで協議して、またいろんなテーマで関西食文化研究会を進めていきたいと思います。「火入れ」「熟成」「だし」と、皆さんと試食しながらやるとか、また、麺だけを考えても、ソバ、ラーメン、ソーメン、うどんとか。粉もテーマになる。これからもいろんなアプローチをしていきたいと思いますので、皆さんに、ぜひ会員登録をしていただいて、回りの方々にもぜひとも伝えていただきたいと思います。今日は皆さん、本当にありがとうございました。
「関西食文化研究会」では、交流をテーマに
今回のようなイベントを順次展開していきますので、ご期待ください。



