• 定期
「油脂」Program 4:ディスカッション

「油脂」Program 4:ディスカッション

Program 4:ディスカッション

講師紹介

木下 幸治氏、川崎 寛也氏、村田 吉弘氏、山口 浩氏、二條 晃一氏
司会:門上 武司

門上 木下先生、油脂のテーマでは、どんな料理が出てくると思われましたか? また、皆さんの料理は、予想通りか意外だったのか、いかがでしょうか。

木下 油をたっぷり使うとなると、フランス料理でピンとくるのはコンフィです。卵をコンフィにすると、水分だけ出て、旨みが残る。山口さんはそんなに加熱しないとおっしゃっていましたが、卵を油の中でコンフィするということが、今日は驚きでした。

門上 山口さん、あの料理は、どういうところで思いつかれたのですか?

山口 味を凝縮するというより、温度コントロールをするために何がいいのかなということで考えました。オイルをコントロールすれば、味が濃くなったということで、味を変えないという観点がテクニックだと思っています。

門上 油と保存が今回のテーマですが、川崎先生はどのようにお考えですか?

川崎 そもそも腐るというのは、どういう状態か。微生物は水分がないと繁殖できません。それを防ぐためには塩を入れる。水分を減らしたものを油の中に入れると、水分はそれ以上増えませんので、ある程度低水分状態の中で保存がきくのだと思います。

門上 二條さんは、今回初めての参加ですが、いかがでしたか?

二條 テーマの趣旨がずれないように心掛けましたが、液体である油と、固体である脂が、上手に表現できればいいかなと思って今回の料理を取り上げました。中国料理では、油通しをたくさんします。お話をいただいた時、文献を見て研究はしてみたのですが、離水させることは中国料理の一つの大きな目的なんですね。油を使って油っぽくさせない。それが中国料理の極意だと思っていますので。余分な水分をつけないというのが、炒め物でも揚げ物でも、すべて共通することだと思っています。

門上 中華料理で油を飛ばすことは、ひょっとしたら、日本料理でも使えるのではないですか?

村田 使えると思います。青菜を湯がくじゃないですか。油を少し入れておけば、発色がきれいになります。それをゴマ和えしても、油っぽくなるというほど油を入れませんからね。テクニックは共通ですから、できるだけ和洋中を問わず使えばいいと思っています。

門上 前回、火入れの時に、村田さんがガストロバックを使って、そういうテクニックを見せておられましたね。ああした火入れについては、世代的な違いもあるのでしょうか?

木下 そうですね。料理は科学と一緒で、料理もある程度、何かしないといけない時には科学の力を使って前に進まないといけません。例えば、オーブンで1分入れては5分休ませ、1分入れては5分休ませて。温度は180~200度。それを2時間繰り返すとオーブンの中に入っている時間は20~30分です。肉の大きさにもよりますが、火は通っているけれどタンパク質は変質しないので、レアな食感が味わえます。若いシェフたちにはどんどん新しいことをやってくださいと応援しています。

門上 イベントの第1回で「だし」をテーマにした時、村田さんが豚の潮汁を使ってだしを作っておられましたが、日本料理の鰹と昆布のところから逃れる、越えていくということが新しい日本料理をつくる可能性があるのではないかと思います。山口さん、今日の二條さんのテクニックとか、何か新しいものか生まれてきそうだという予感はありましたか?

山口 今まで、こういうふうにやってきたということではなく、こうだから、こうするんだということがわかると、発展のスピードが飛躍的に増えるのかなと思っています。

村田 それで一番勉強になっているのは、関西食文化研究会コアメンバーの山口と僕かもしれない。毎回勉強したうえでこのイベントでお話を聞いて、自分なりに新しい調理法を考えることがまた勉強になりますよね。それが料理やテクニックの進化につながるのだと思いますよ。これだけのメンバーがそれぞれ新しいことを考えたら、次の時代には新しいテクニックが飛躍的に出てくるでしょうね。

山口 教える側が、ちゃんとサイエンスとして伝えていかないと、僕らの業界自体も成り立っていかないのではないかと思っています。フランス料理はもともとレシピを公にするという文化で、昔から自分の本を書くんですよね。そこですべてを出し切って、また新しいものをつくっていくという習慣がフランス料理にはありますが、日本料理にはなかったのでしょうか?

村田 全くない。初めてテクニックを明かしたのは、私の先代やら日本料理研鑽会。串の打ち方から、だしの引き方から、初めて専門誌で発表したわけです。それから、まだ50年。未だに、「火事になったら、タレの壺だけは持って逃げますねん」という人はいはるでしょう。壷に何が入っているか、科学的な分析を川崎先生にしてもらって、同じものを同じようにつくって、それをもっと安くお客さまに食べてもらえるようにした方が、皆の幸せのためにはよい。料理人や科学者、医者はテクニックの公表は不可欠ですね。

門上 テクニックを公表することは不可欠ですし、料理人も、そういう面ではもっとサイエンス、知識を学ばないといけませんし、本も読まないといけない。経験も積まないといけない。そうした意味でも、今日は油脂がテーマでしたが、また来年もさまざまなテーマで、こうした会を開催していきたいと思います。川崎先生、木下先生、山口さん、村田さん、初めての二條さんもどうもお疲れさまでした。

「関西食文化研究会」では、交流をテーマに
今回のようなイベントを順次展開していきますので、ご期待ください。

他にもこんな記事が読まれています