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「昆布とQ&A」Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>11/11
Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>
講師紹介
Q1:油(&脂)の酸化について
- 例えばあるシェフは、アーリオオーリオ・ペペロンチーノを作る際、弱火でニンニクが色付くくらいまでオイルを熱するとそのオイルはすでに酸化していると言っています。それがほんとなら、ほぼ全ての料理が酸化したオイルをベースにできているということに・・・。
- 酸化って、油&脂で科学的にいろいろ検証され、わかりやすくデータ化されているのでしょうか?
- 強火で炒めると、特にオリーブオイルはどういう状態で酸化するのでしょうか。味が、どう変わっていくのかという質問です。
Answer (1/2)

僕も実は興味があった部分ですが、イタリア料理の場合は、オリーブオイルとニンニクを刻んだものを火をかけない状態において、あわせてから火にかけて、ゆっくり加熱していくのが料理のベースだと思います。それにタマネギとかを入れてソフリットを作って、イタリア料理のベースになると。
ところが中華の場合は、結構、最初から入れる場合もあったり、高温で加熱した油を使う。一体どちらが正しいのか。実は誰も研究していません。以下は僕の仮説です。ベースとなるサイエンスのデータをもとにして僕の仮説をお話したいと思います。

今のご質問をまとめますと、4つの質問に分けられると思います。
脂質の酸化とはそもそも何なのか。今の段階でわかっている話をさせていただきます。そして酸化というのは、そもそも悪いのか。体にとっては悪いんですけど、脂質の酸化が出てくるのを香辛料によって酸化が促進することも、抑制することもあります。最後に、そもそもイタリアンはニンニクをオイルでなぜ加熱するのかということをお話したいと思います。
酸化は一般的なことで、酸化により不快臭が生じて風味が悪くなるということが定義です。
酸化には3つあります。一つ目が「自動酸化」。酸素、光のある状態に常温でもオイルを置いておくと酸化していきます。オイルを冷暗所で保管されているのは酸化を防いでいる。もう一つが「酵素的酸化」。大豆は油脂が多い食品です。大豆をすり潰す、豆腐を考えていただくと、豆腐は豆くさい香りがあると思います。それが苦手な方もあります。それはどこで発生するか。生の大豆を加熱した時、すり潰す時に酵素が働く、それによって酸化が起こる。油が酵素によって酸化した匂いが大豆くさい、豆くさい。それが酸化した大豆です。今回話題になっているのは「熱酸化」です。酸素と接触しながら加熱するのが熱酸化の条件です。酵素が働く酸化とは別ものです。
自動酸化と熱酸化は何が違うか。脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。植物性のオイルに多いのが不飽和脂肪酸です。飽和脂肪酸は動物の脂に多い。植物の油を置いておくと酸化してそれが重合する。くっつくんです。オイルをずっと置いておくと粘りが出てくる。ねばりは重合物による粘りです。それがさらに酸化が進んで分解を起こすとアルデヒトとかケトンができる。これが脂質の自動酸化です。
一方、熱酸化は不飽和脂肪酸でも飽和脂肪酸でも起こります。100度以上では分解して重合物と分解物になる。自動酸化と同じようなことが起こってきます。酸化しやすいのと、酸化しにくいものは何が違うか。これが飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の<図1>です。二重結合があるかないか、飽和脂肪酸、二重結合を酸素が包囲するのが酸化になります。不飽和脂肪酸は、どんな植物に含まれているか。<図2>は油脂の種類と二重結合の数を示したものです。オリーブオイル、大豆油、ラード、バターなど、よく食品に使われているものです。油脂というのは脂肪酸のいろんな種類が集まったものです。脂肪酸はいろんな種類があります。紫色はステアリン酸、これには二重結合が含まれていません。パルミチン酸、ミリスチン酸も二重結合が含まれていません。オレイン酸は二重結合が1個です。1個くらいまでは酸化しにくい。オリーブオイルはオレイン酸がほとんどです。酸化しにくいオリーブオイルをイタリアの方は使っておられる。大豆油に多いのがリノール酸。二重結合は2個、酸化のスピードでいうと、オレイン酸の15倍酸化が速い。大豆油はリノール酸が半分以上ですから酸化が速い。ラードはそんなに酸化しやすいものではない。リノール酸もあまり多くない。これらが酸化のメカニズムと酸化のしやすさです。

