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「昆布とQ&A」Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>9/11
Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>
講師紹介
Q2:ワインの濃縮
- 煮詰めるソースや煮込みを作る際、よくワインを煮詰めてほとんど無くなった状態にしてからスープやフォンを足し、また煮詰めるという作業がレシピにあります。
- ・なぜこの手順を踏まずに、一度に全ての液体を入れて煮詰めてしまうとダメなのでしょうか?この理由というのは、はっきりしているのでしょうか?
Answer

ご質問は、ワインを煮詰めてフォンを入れて、また煮詰めるという作業があると。ワインとあわせて一緒に煮詰めたら、なぜ同じものができないか。これも誰も研究していませんので仮説なんですが、考えてみました。
ワインの主要な成分を大雑把にいうと、まずは酸味、成分としては酒石酸やリンゴ酸です。赤ワインで重要なのはタンニンの成分。グリセロールの甘味、これはアルコールの一種です。甘味は果糖とかブドウ糖です。ワインを煮詰めるということは、これらの成分を濃縮していくことだと思います。アルコールを飛ばして香り成分も飛んでいきます。あとは100度で揮発しないものだけが濃縮されるということを思っていただければいいと思います。
ワインが違うと、煮詰めた時の風味も違っているのではないか。濃縮しているから、もっと違いがわかるはずです。煮詰めた過程から何が違うか。それは多分、算数の問題が出てくると思います。結論はワインとフォンを同時に煮詰めるとワインの煮詰め方が足りず、フォンが煮詰まりすぎる。単純に考えると、そういうことかなと。成分の相互作用なしで、濃縮だけを考えた時には、一つこれがいえるかなと思います。
例えば赤ワイン180cc、それを水分がなくなるまで、10分の1に煮詰めます。その後、フォンドボーを入れて120ccまで煮詰める作業をします。赤ワインは最初180ccあって、それを10分の1にしたら18cc。その割合を考えて濃縮したとしますと12.1ccになった。ワインの濃縮度合いは14.8倍。フォンだけを考えたら160ccが108ccになるので濃縮度合いは1.5倍濃縮です。赤ワインのおいしい状態は飲んでおいしい状態と違って、ソースですから濃い状態になる。その時は14.8倍の濃縮が必要なんでしょう。タンニンとか甘味とか、ソースはつけて食べる時と、飲む時は違います。つけて食べる時は14.8倍のワインが必要だった。とった状態のフォンは結構なうま味がある。それを1.5倍に濃縮している。それ以上煮詰めると濃すぎたりする。あえて煮詰めるのもありますが。
一方、赤ワイン180ccとフォンドボー160ccを一緒に入れて、120ccまで煮詰めるとすれば、赤ワイン180ccが42.4cc、4.2倍濃縮になる。フォンは160ccが56.5ccで2.8倍濃縮されていることになるんです、計算上は。ワインとフォンを同時に煮詰めたらワインの煮詰めが足りなくて、煮詰まりすぎるということになるのかなと。これは仮説です。実際やっていませんが、どうなるかわかりません。

別の話ですが、ワインとフォンを同時に煮詰めるとワインのタンニンの渋みを感じにくくなるということもあります。タンニンは濃縮されると渋みが強くなりすぎます。肉やゼラチンなど、タンパク質に富んだ材料、これはフォンです。フォンを入れてワインを煮詰めるとタンニンとタンパク質が結合して渋みを感じにくくなる。これは、タンニン“なめし”を思い浮かべていただくとわかる。タンニンと皮のタンパク質が結合しているんです。タンニンとタンパク質は結合しやすい。ワインとフォンを同時に煮詰めると渋味を感じにくくなる理由はこういうことでしょう。昔の本ですが、ペラプラの『現代フランス料理全書』をチェックすると、同時に煮詰めるというのもありました。
濃縮だけで考えましたしけど、もちろん成分間の反応は大きい。濃縮されればされるほど成分間の反応速度が速くなるので、例えばメイラード反応が速くなる。フォンを煮詰めていくと、最初はそうでもないのに、最後になったら急に煮詰めが進みませんか。濃縮されているから進みやすい。成分間反応もあります。
山口さん:イチゴを潰してジュース状にしたものを5分の1まで煮詰めるとジャムになり、ソースに薄めても元々のジュースの状態に戻らない。イチゴジャムが薄まった味になる。ワインもそこまで煮詰めてから水で薄めても、元のワインの状態に戻るわけではなく、煮詰めたジャム状のワインが薄くなるということだと思います。そういうこともあると思います。

