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「昆布とQ&A」Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>8/11

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Program 3:講座とディスカッション「料理のサイエンスQ&A」<全記録>

講師紹介

Q3:風味調味料とだし

質問者:朱山 成司さん
飲食店開業準備中
  • 本物の昆布や鰹だしのだしと、だしの素等の味覚の違いが、一般の消費者にどれだけわかるのかが街中の一般食堂の気になる所であると思います。それによって原価率も変わると思いますので宜しくお願いします。
  • しかし私自身はやはり文化伝統を重んじるので、昔から続いているだしの引き方を続けていきたいのですがね。

Answer(1/2)

質問者:朱山 成司さん

3つのポイントが見いだされるかなと考えます。 そもそもの、風味を感じるということはどういうことなのか。天然と風味調味料は何が違うのか。そして「だし」の風味とはそもそも何なのか。

風味を感じるとは何か。生理学の分野の話ですが、「味」と表現されている感覚の8割は香りといわれています。なぜそういうことがいわれるか。受容体の数にも現れています。味覚受容体つまり舌の受容体は、塩味は2種類、酸味が2種類、甘味が1種類、うま味が3種類といわれていて、苦味が25種類。これが味の受容体で、それに食品成分がくっつくことで脳に味の情報が行くことになります。
鰹風味の場合は、まずうま味を感じます。イノシン酸、グルタミン酸を。それが味です。鰹だしの中での味というと、うま味、酸味くらいだと思います。それだけだとグルタミン酸もイノシン酸も成分だけで説明できてしまいます。ところが香りを考えていただくと、嗅覚受容体は400種類もあります。鼻には400種類の受容体があります。でも、匂い物質は数十万種類あるといわれていて、人が認識できるのは1万種類も認識できます。400種類の受容体で1万種類の香り成分が認識できるんです。同じ味成分でも香り成分をちょっと変えるだけで味の感じ方が変わったように感じると思います。それはこういう理由が大きいと思います。

味と香りの情報は脳の中で統合されます。味は味覚神経を通って脳の部分に行って、香りは嗅覚神経を通って脳の部分に行く。最後に一緒になって好き嫌いが決まるんですね。味だけではだめ、香りだけでもだめ。その時に香り成分の種類がちょっと変わるだけでガラッと変わるんですが、味と香りの情報は脳の中で分離できません。「おいしい香り」という。ほんとは香りなのに「味だ」という。バニラの香りを甘味の溶液に垂らすと甘味を強く感じます。それは香りではなく、味という。つまり味と香りは分離できない。鰹節はメイラード反応、燻煙。鰹節の製造を思い浮かべると、加熱によってメイラード反応が起こって、燻煙をつける。それが鰹に凝縮されている。鰹は乾燥されて濃縮され、ガラス化してガラス状になっている、それを薄く削ることで抽出がしやすい状態になっています。

ここで言葉の定義を統一しますと、鰹だしというのは、鰹節を水また熱水で抽出したものをさします。うま味調味料はグルタミン酸、イノシン酸などのうま味成分。だしの素は鰹節とかカツオエキスを使って、鰹節から作ったものです。それを工場で作ってうま味調味料とあわせたものが、だしの素とか風味調味料です。この3つの関係を砂糖に置き換えると、サトウキビの汁を煮詰めて黒糖のようにしたものが、鰹だし。その中から砂糖の成分だけをきれいに精製して、まっ白にしたのが、うま味調味料。だしの素や風味調味料と三温糖なんかは、その間に存在するものではないか。すべての味成分でこういうことがいえないでしょうか。塩についても海水があって、海水を煮詰めて、そこからミネラルを除いたものが精製塩。酢についても酢酸発酵させていろんな成分が入った黒酢もあれば、精製して酢酸だけの氷酢酸もあります。苦味の調味料はありません。調味料についてはこういう関係のものがすべての味についてあると考えています。精製度が下がるほどいろんな香り成分を含んでいるんだということで、精製すればするほど香りがなくなって味ばかりになります。精製しないと香りが味と一緒にある。

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