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「ベジタブル講座」~各国・精進料理~Program 3:対談2:「野菜料理の可能性について」
Program 3:対談2:「野菜料理の可能性について」
講師紹介

門上 精進料理の考えがないフレンチとイタリアンでは、それぞれ野菜料理のテクニックが出ていたように思うのですが、木下先生いかがでしたか。
木下 アクというのは何かと考えさせられました。山口さんは「アクも味のうちだ」と言われ、山根さんは「これはアクですから取ります」と言われた。アク=コクにもなりうるのかなと考えてみたんですね。実際、野菜のアクは、どういうものなんでしょうか。
川崎 アクは灰汁と書きますが、野菜を灰になるまで加熱して、そこから水で注出。あれって、ミネラルなんですね。ところが、料理の場合、肉のアクはタンパク質とほぼ油です。野菜のアクはポリフェノールが多いんですね。これは抗酸化成分で、野菜が自分を守るために持っている成分です。
木下 では、アクは取らなくてもいいということでもありますね。
川崎 それも閾値によります。アクの濃度が薄ければ、それだけ違うものに感じられるということだと思います。今は以前よりもアクが少ないんだと思います。
木下 最近、アクもコクのうちというのは、アク自体が強くなくなったのではないかなという感じがするんですね。昔の野菜はアクはアクでした。今は野菜のアクの部分を使うという料理法としては出しているのかなという感じがします。
門上 生活様式も変わる中で素材も変わっていく。それに、素材に適した調理法がどんどん生れるということですね。今回は、4人の料理人それぞれの軸足があり、それが際立ったと思いますが。
川崎 野菜しか使わないという縛りの中で、それぞれの料理が持っている歴史が出てくる。山口シェフは、焦げをいかに使うか。メイラード反応をいかに起こして食べるかに執着を感じるほどの情熱があったように思います。山根シェフも、できるだけ素材が持っているものを2倍、3倍に凝縮して使う。村田さんは、伝統的な和食の考え方に、濃縮したものを足していく。国安シェフは、伝統的な擬制をやっていく。それぞれ歴史を感じるような料理だったなと思いました。
木下 料理法の違いもありすね。西洋料理は、野菜を加熱してやわらかくする。野菜はピューレにしたり、ポタージュにしたりするわけです。野菜は湯がいて付け合わせにする時もやわらかい。私たちの世代は、ちょっとでもカリッとしていたら火が通ってないと、よくいわれました。日本料理は、カリカリした食感とか、素材の苦みとか、汁を味わいながら季節感を味わう。中国料理は、味の元になる調味料と一緒に食べる。西洋料理は、味の元になるものが少ないので、調理しながら味をどんどん足していく。こういう大きな違いではないかと思います。
門上 こういうイベントをすると、次に新しいことが出てくるのではないかという期待が持てます。川崎先生は、今日の料理で、こんな新しいことができるのではないかという発見はありましたか。



川崎 科学的な考え方は、共通原理を探ろうとするんですね。皆さんの料理を見ていて共通する原理がありそうな気がしているんです。野菜を調味料としてとらえているな、と。野菜はいろんな味がする。肉は種類が限られているのに、野菜はいっぱいあるじゃないですか。それだけ多様性が出せるのではないですか。それぞれの野菜で独特の味があるんですね。渋み、苦み、辛味とか組み合わせれば、いろんな料理ができるのではないかと思いました。
それと、野菜によってアミノ酸の組成が全然違うんですね。肉の場合はそんなに変わらないんですが、例えばグリーンピースとグリーンアスパラではアミノ酸の種類が違うんです。特異なアミノ酸もある。野菜を組み合わせることで多様な表現ができるし、香りも異なります。
香りで注目したのは、ネギ科とアブラナ科です。化合物の硫黄を含むんですが、今日の皆さんの料理は、ほとんど硫黄を含む野菜ばかりでした。ネギ科は、ニラ、野蒜、ヤマラッキョウ、あさつき、玉ネギ、ネギ、ワケギ、リーキ、ニンニク、ラッキョですね。アブラナ科は、芥子、高菜、アブラナ、水菜、カリフラワー、ロマネスク、キャベツ、ブロッコリー、チンゲンサイ、パクチョイ、タイサイ、野沢菜、壬生菜、白菜、小松菜、蕪、大根、ワサビ。全部、硫黄を含んでいるんですよ。ネギ族の含硫化合物は硫化アリルの独特の香りと辛味があります。加熱によってコク物質ができたり、脂質の酸化抑制も起こります。アブラナ科の方はアリルイソチオシアネート独特のワサビの香りとか大根とかの香り、辛味が出てくる。セリ科も使われていて、セリ、ニンジン、セロリ、みつ葉、イタリアンパセリとかスパイス系もある。文化は多様であるけれども、フレンチとイタリアンのシェフが、今回、野菜の料理を考えられた時、ピックアップしたのが共通していたのが面白いなと思いました。こういう事実を利用して、新たな食材の組み合わせを使おうというのも、科学的な考え方ではできるのではないかということですね。
木下 野菜は非常にイメージ的にいいんですね。ダイエットとか体にいいとか。牛肉や豚肉では脂が多いという話になってくると、雰囲気的に野菜が出てくる。地元の野菜、ブランド野菜が出てくる。食糧のことも考えて、野菜でストックすると地球上の水も減らない。牛1頭育てるのに穀物が何トンいるか。水がどれだけいるか。水も地球上では3%しかない。それを60億人で分けているわけです。植物だけで止めておけば相当、生き延びる。そういう情報が入ってくる。 擬製というものは、本来は欲望があるわけですね。酢豚を知らないと酢豚によく似たものを食べたって酢豚と思わないわけですから、酢豚を食べたいけど食べられないというところから来ている。野菜も味的には肉を食べたいという欲求とか、肉に近い味にすることは大事だと思います。イメージ的にそうだと思います。料理はイメージで食べるものですから、可能性は高いと思いますね。
「関西食文化研究会」では、交流をテーマに
今回のようなイベントを順次展開していきますので、ご期待ください。



