- 定期
![「酸味」Program 2:料理デモンストレーション [フランス料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927650/files/topics/618_ext_2_0.jpg)
「酸味」Program 2:料理デモンストレーション [フランス料理]
Program 2:料理デモンストレーション [フランス料理]
講師紹介
関西食文化研究会コアメンバー
「帆立貝柱のオーブン焼き、酸味ソース」

ソースの中で一番酸味が強いものをお出ししようと思います。白ワインを煮詰めたソースと帆立貝柱をオーブンで焼く料理です。材料を煮詰めるのに時間がかかるので、煮詰めたものを用意しました。まず2リットルの白ワインを500ミリリットルまで煮詰めました。4分の1まで煮詰め、琥珀色の状態になっています。ソースの方はルセットが2種類です。白ワイン1リットルに、水と野菜を入れて半分まで詰めました。別だてでしています。両方あわせたものを、更に500ccまで煮詰めます。白ワインの酸味と野菜の甘味もこの中に入っていますが、ソースができあがります。
それと、帆立貝柱を使うので、一つはヨーグルトウォーターに漬け込んだもの、一つはそのまま加熱したもの。それぞれどのように食感が変わるか。その違いを楽しんでください。ヨーグルトをペーパータオルに入れ、漉してヨーグルトウォーターを作ります。固形分が入ってないので焦げついたりしません。この中に帆立貝柱を漬け込みました。試食用は殻にのせて配りますので、食べ比べてください。下においてあるのがヨーグルトウォーターで漬け込んだもの、上の方がそのまま火入れしたものです。



和食のポン酢の話が出て、洋食でポン酢を作ったらどうかという話になりました。ポン酢の中で大きな役割をしているのがアミノ酸、醤油ですね。酸味はいろんな形でフランス料理でもできるんですが、醤油を使うと一番難解で。日本料理と対峙する時、フランス料理には調味料がないので、どんなふうに調味料を作ったらいいかということで、いろんな形でチャレンジしてみたんです。今回の帆立貝柱のヒモの部分、外国ではヒモは捨てちゃうんですが、この部分からだし汁を抽出して煮詰めたものと、今日作った白ワインの酸味のソースでポン酢に近いものができました。今後、そういうものを使うことで日本料理のポン酢に匹敵するものが、完成度が高まってできてくるのかなと思います。
付け合わせの野菜は、セロリラブ(根セロリ)とポアロネギ、ニンジンです。芯抜きで丸く切り抜いて丸い状態にしています。柔らかい中心だけ斜めに切って塩茹でにします。今日は学校にブラストチラー(急速冷却できるフリーザー)がありましたので、塩茹でしたものを氷水につけるのではなく、その中に入れて熱を止めて最後に盛り付ける状態になっています。
帆立貝柱にバターをのせて塩胡椒、これをオーブンの中に入れます。スチームコンベクションオーブンで200℃の設定です。付け合わせにするのがパセリの千切りです。オーブンの中には5分程しか入れません。帆立貝柱から出てきたうま味の成分がグツグツ煮詰まった状態になって、そこでメイラード反応が起こったり、タンパク質と糖分が化学反応を起こし、あまり目には見えないですが、香ばしい香りが形成されたりと、オーブンの中で起こっていると思います。

川崎 帆立貝柱の火入れについて、今回ポイントの一つは殻の上でやることですね。水分が蒸発してどんどん濃縮されていって、香ばしい匂いが周りから出てくるのは大きい。
山口 先日、あべのハルカスに新店(「エ・オ」)をオープンさせました。フランス料理を30数年間やっていますが、やっと、筍のおいしい時に筍を出してお客さんが認めてくれるし、フランス料理でも地産地消を出してもお客さんが認めてくれる時代になりました。今取り組んでいるのは、鮎の季節なので鮎の塩焼きとか、大阪だと穴子とかハモを使うなどの料理です。そういう時にフレンチでは調味料がない。それで、どういうふうにして調味料を作っていくかを考えた時、今日は酸味ですが、本会で自分たちがやっているサイエンス料理です。どのようにしてこの味が形成されるのか、などと理解していくと比較的新しい調味料ができてくると思います。
殻の上で、熱々の状態になって茶色く焦げたところにタンパク質が変性されたり、香ばしい香り、これがなかったら、この酸味のソースは引き立ちません。酸味のテーマをいただいた時、漠然と酸味を使っていましたが、酸味を煮詰めて、酸は飛ばないという中で、その中にフルーツを入れ作るソース、マンゴーソースですが、酸味の入っているものと入ってないものの、キレというか、食べた時の印象が全く違う。この酸味は「三位一体」というか。使いこなすのは、ものすごく重要なのかなと思います。
この料理を提案した時、川崎先生とのディスカッションがありまして、先生からは「この酸味ソースはおいしいが、うま味を入れておくのがいいのではないか」とご指摘がありました。その通りで、この料理はルセットの中には見えにくいですが、オーブンに入れて形成される調味料がありまして、そこにうま味が入っております。
川崎 日本料理の場合は鍋の中で調味料を作っていくよりは、できたものをあわせていく。フランス料理はいかに分解して舌の上で再構築するか。うま味とメイラード反応と酸味、塩味、あわさったパンチ力。それをどう表現されるかという時に、ソースだけをなめてみた時と帆立貝柱と一緒に味わった時は全然違うんですね。口の中で帆立貝柱と一緒になるとポン酢のようなパンチ力が出てくる。ぜひ皆さんにやっていただきたいのが、周りに焦げた部分があったら、それをソースに溶かしてみてください。すると、味や香りが複雑になって別のものになる。そういうことが表現された料理だなと思いました。

