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「酸味」Program 2:料理デモンストレーション [イタリア料理]

「酸味」Program 2:料理デモンストレーション [イタリア料理]

Program 2:料理デモンストレーション [イタリア料理]

講師紹介

山根 大助(やまね だいすけ)氏
「ポンテベッキオ」オーナーシェフ、
関西食文化研究会コアメンバー
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「牛ネック肉とスジ肉の黒酢スペッツァティーノ ゆで卵とサルサ・ヴェルデを添えて」

すっぱいだけの料理を作っても意味がないので、酸を使って効果的に料理に反映できるようなものを作ります。今日は牛肉の筋とか、ゼラチンが多いところを使います。黒酢を若干振りかけて、マリネしています。振りかけるより、軽く塗る程度。半日くらい置いています。これを鍋に入れまして煮込むスペッツァティーノです。肉を固まりで煮込むのはブラザードといいます。

なぜ、ワインヴィネガーとか果実酢を使わなかったか。黒酢は玄米ですからクエン酸とか果実酢のような酢を含んでいない。コハク酸もない。酢酸だけです。酢酸の特徴は、揮発性なので加熱すると蒸発してなくなってしまう。酢を使って煮込むのに最終的にはすっぱくない。そこが面白い。また、普通だったら粒胡椒を潰して煮込む時に入れたりするんですが、今日は少し香りをつけます。

酢をそんなに強くない火加減で煮詰めていきます。煮詰まったらブイヨンを入れて、もう一回煮込みます。煮詰まるまで時間があるので、サルサ・ヴェルデ(グリーンソース)を作ります。イタリアのおでんのソースだと思ってください。材料のグリーンオリーブは塩漬けですが、乳酸発酵していると思います。酸味が少しあります。本会に参加させてもらうと、アンチョビも塩蔵でメイラート反応していると解説したくなるのですが、材料に塩漬けでタンパク質が分解されていたり、乳酸発酵されているものが多いことに気づきます。

日本料理はうま味のあるものが材料としてたくさんありますが、イタリア料理は調味料がないので味付けは基本的に塩なんです。では、イタリア料理は、どこでアミノ酸的なうま味を補っているのか。パルメザンチーズとか生ハムのような塩蔵して乳酸発酵させた豚肉の加工物。トマトに代表されるようなグルタミン酸ナトリウムを使う。オリーブもうま味の一つとしてありますね。

黒酢はアミノ酸成分が多くてコクが出るような気がしたので今回は黒酢を使っています。完全に水分がなくなるまで煮詰めます。なぜ、酢で煮込んでいるか。筋肉とか固い部分が早く柔らかくなるような気がします。ゼラチン質を多く含んでいる肉質は火を入れると固くなります。コラーゲンの部分が出て柔らかくなるんですね。煮込みを作る時に柔らかくしすぎてはいけない。

水分がほぼ完全になくなりました。ここにブイヨン、ブロードを入れます。セオリー通りに沸騰させて灰汁をすくいます。もう一つの効果として脂肪がうまく抜けてすっきりするような気がしたんですね。川崎先生に質問すると、脂肪といっても脂だけが存在しているのではなく土台にコラーゲンがある。コラーゲンの土台が崩れることで脂が早く溶けだしやすい。油っぽい料理から油が抜けやすくなるということが起こる。煮込みを作る時にお酢を大量に使うことで早く柔らかくすることができるということです。

付け合わせのマッシュルーム、油でさっと炒めて少量のブイヨンで蒸し煮にする。水分がなくなります、それに、個人的にはゆで卵が大好きで、店の料理にはないんですけどね。今日はちょっと食べてみたいなと思い、入れてます。ここに野菜をスライスしたりみじん切りにしたりすることは、あえてしていません。切れ目を入れて味を出やすくしています。粗いのを入れているのはあとで抜きたい。抜きやすい形にしています。最後の煮込みは、蓋をしたら、ごく弱火で1時間半くらい。仕上がる15分前にゆで卵を加えます。じゃがいもも少しのブイヨンと柔らかくなるまで炊く。ゆで卵はこんな褐色になっています。メイラード反応が進んでいる。黒酢の色もあるけど、米酢でやった時にも同じような色になりました。

よく肉を炒めてから煮込むという人がいますが、僕は、肉の臭みをいい香りに変える程度には炒めますが、周りに壁を作るほどしっかり炒めることはしません。焼いたら固くなります。焦げた部分は柔らかくならない。ソースの元として香りが欲しければ、もっと安い筋肉をよく炒めて一緒に加えて煮込めば同じ効果があります。肉自体はあまりリソレする必要はないのではないかと考えています。我慢して汁けがなくなるまで煮詰めます。肉はどこまで煮込めばいいか、どれくらい柔らかくなったらおいしいといえるのか。僕の考えでは、多少、弾力が起こるくらいで繊維がばらばらにならない、固まっている状態で肉のうま味が肉の中に残っている状態です。フォークで崩れるのが柔らかい煮込みと思っている人が多いですが、そこまで煮込むとゼラチン質が溶けだして繊維がくっついていられなくなって分かれる。確かに柔らかいけど、筋の部分は固かったりする。ゼラチン質のもつ弾力を残しながら柔らかいのがベストだと。

ヨーグルトウォーターのような乳酸もいいと思います。長期間熟成させたり、保存を考えた食品は保存食としては乳酸発酵しているものが多い。これって興味深いのは、心地いい香りとか味をもつような菌の増殖をしたものを発酵という。乳酸発酵もその一つで、乳酸の中で好ましくない菌が増えたのは食べられない。食べられないほど発酵したものを腐敗という。菌が食べやすい形に分解している発酵食品は、食べ物を食べて唾液と混ぜて胃液で溶かしたものをおいしいと食べているようなものですね。僕らの身体に吸収する形で栄養をとる。乳酸菌とかバクテリアがやっていることは消化器でやっていることと同じで、それを、おいしいと飲んだり、食べたりしている。そんなことで終わります。

「牛ネック肉とスジ肉の黒酢スペッツァティーノ ゆで卵とサルサ・ヴェルデを添えて」

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