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![「リクエスト・ワークショップ(2)70年代生まれの料理人とともに探る未来 Part.2」Program 1:料理プレゼンテーション [イタリア料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927650/files/topics/625_ext_2_0.jpg)
「リクエスト・ワークショップ(2)70年代生まれの料理人とともに探る未来 Part.2」Program 1:料理プレゼンテーション [イタリア料理]
Program 1:料理プレゼンテーション [イタリア料理]
講師紹介
「天王寺蕪 間引き菜の冷たいタリオリーニ 季節の魚介添え」

山中 パスタ料理はパスタをいかにおいしく食べるか。温かい料理ですと、いかにソースをおいしく食べるかというのが根本ですが、キャビアの冷製パスタはキャビアをいかにおいしく食べるかに主と従が入れ替わっていると思います。今回は冷製パスタで、初めはメニューにアンティパストと書いていましたが、長すぎるので消しました。パスタ料理でありながら、麺と具材が同じ立場で、というおさめにしたいと思います。
なぜ、天王寺蕪にしたかというと、大阪の野菜を使おうと思ったからです。店のパスタの粉は100%三重県産なんです。デザインするのにあたり、自分が生まれ育った関西圏を盛り込んでいこうと考えました。店ではいつも三重県産の粉を使っていますが、とても甘いですし、おいしいのです。意外と知られていないけれど、日本で4番目の産地になっています。粉を使い、魚介のうま味に負けないアクセントをもった麺を作ろうと思います。
蕪の葉っぱの部分を刻んで鍋で蒸し焼きにし、冷やして卵と一緒に攪拌して練り合わせます。作るのが少量なら、冷やした蕪の葉っぱをパコジェットに入れて。繊維の多い野菜ですので、卵と混ぜ合わせるということです。パスタは粉と卵とオリーブオイルを入れると、若干、変質することがあります。本来はパスタを作るとき、練り込みは絶対しないのです。粉末系のもの、粉に近いものには練り込んでもいいかと思いますが。ピューレにして練り込むということで、あえて北海道産の小麦を少しだけ入れました。超強力粉ですからグルテン質が出ますので麺が割れにくくなります。とても使いやすいです。味もおいしいですよ。



普通の温かいパスタより、若干細めの麺で冷製パスタの場合は打たせていただきます。これくらいの細さです。沸騰したら麺を入れていきます。その間にトマトです。料理を締めるということで、酸味を加えたいのですが、レモンの酸味、柑橘系の酸味は強い部分もありますので、野菜のもつやわらかい酸味でバランスをよくしていくために、トマスを締めるために使います。
パスタを冷やしていきます。氷と水で馴染ませながら冷まします。その間にパスタにからめるみじん切りの蕪の葉っぱとイタリアのワイン、うま味のもとを入れます。蕪の白い部分ですね、葉っぱ以外の茎の部分を蒸し焼きにして冷やします。ボールの中で野菜の香り、味、酸味、甘味、すべてが調和している状態で、そこに魚介をあわせていきます。魚介とパスタが半々です。
魚介類、昆布とレモンの皮を入れてオリーブオイルと一緒にマリネにします。パスタが冷たくなってきました。仕上げに上から入れて、完成です。

山根 蕪の実はどこにいったの?
山中 刻んで入れました。
山根 手法としては、素材的にはおいしそうなものがあまりにもたくさん入って賑やかやな、というのが感想です。
山中 テーマを聞いて、山根師匠に相談にいったんです。構成とか構築の話で。我々のやっているのをそのまま料理するのはだめで、構成を考えてあわせていくことがデザインだと。僕はそう受け取ったんです。
川崎 実演を見ていて、おいしいのがわかりやすい料理だなと思うんです。天王寺蕪を使っていますが、この料理は普通に蕪を食べるよりも蕪を感じる料理になっているかどうか。パスタにしないとわからない天王寺蕪の素晴らしさがあるとか、何かそうした意図があれば教えてください。
山中 蕪のおいしさは葉っぱのおいしさもありますし、さわやかな苦味もある。それが蕪のおいしさだと思いますが、葉っぱというところに苦味があったり、青臭さがあったり、それが魚介の甘味と調和してくれる形を考えてみたんです。
川崎 なるほど、わかりやすい。何のために蕪を使ってタリオリーニにしないといけなかったのか。そういう組み合わせを考えるのがデザインだと思っているんです。僕の中では、一言でいうと、デザインというのは「本質をよく考える」ことなんです。意図を持って材料を使うとか、選択をすることだと。料理人の皆さんは結構、無意識にやっているのです。なぜ無意識かというと、毎日やっているからです。師匠に教えられたり、イタリアの歴史の中で培われてきたことだから、身についているんです。無意識にオリーブオイルを入れているんですよ、多分。その時に「あ、このオリーブオイルの量って適切なのかな」と考えることがあるかどうか。これだけのうま味の素材をいっぱい入れる必要があるかどうか。それが蕪を生かすことになっているかどうか。というような要素のバランスが、デザインすることだと思っています。今回、重要なのは、蕪の葉の苦味の表現です。葉をそのまま食べたのでは青臭くておいしくない。料理の条件として、蕪の苦い部分をどのようにして出せばいいか。それを今回はパスタを使い、麺という日本人が好きな素材に練り込んで、さらにうま味をもってきて、オリーブオイルをたっぷり入れて、嫌な部分を回避することを表現されたんだろうと思われます。

会員 おいしくいただきました。川崎先生がおっしゃったように要素が限られていて、おいしい食材がたくさん入っている。最後に付け加えた魚介類はどこまで足していくのか、料理を仕上げる上で今回は3種類入れておられると思いますが、どういう考えで最後、3種類足されたのかな。それが気になっています。
山中 ウニの甘味と甲殻類の甘味がほしいなと思ったからです。ソースを作るボウルのなかですべてが混ざっています。

高橋 拝見していて、昆布水を使われていますが、昆布に対する使い方を聞いてみたいなと思いました。魚介類に入っている昆布と、麺に入っている昆布水の違いはありますか。
山中 魚介類はうま味を足すことと、甲殻類の独特の匂いがあると思うので、それをとるために、やわらげる要素として昆布を使いました。それとハーブをあわせています。ブイヨンは動物的要素なので入れたくないし、水よりはうま味のある昆布の水分を入れたいと思ったのです。
山根 昆布はグルタミン酸ナトリウムが多い。それにアミノ酸が何種類かあわさると、うま味の効果が倍加するといわれます。昆布は感覚的には他の素材や甘味と合わさったとき、昆布が少し隠れて素材のよさを引き出してくれる効果があると考えています。なので、私も昆布を一晩水に浸けておいたのをよく使います。水の替わりに、蒸し煮にするとき、野菜に火を入れるとき、水分が必要なとき、ただの水を加えても効果がないので昆布水を使っています。ダシの感覚ではないんですね。魚介ではイノシン酸とか他のアミノ酸との結合によって、よりおいしくなるのではないかなとみています。味を足していくのではなく、現れる効果に期待して使っています。天王寺蕪の麺のおいしさ、苦味と甘さや食感のおいしさを、より引き出すためにおいしいものを最小限にして入れるのが大事なんです。野菜のうま味は繊細で、それほど強いものではないから、隠れてしまう。今回はちょっといきすぎたかなと感じました。絞るのは勇気がいるんですね。彼は体が大きいけれども、勇気がちょっとだけ足らん。長くやって図太くなって厚かましくなってきたら、できると思います。
門上 アンティパスト(前菜)として、こういう組み立てになる。これがメインになると、また違うデザインとか構成になるのですよね。
山中 パスタがメインになると、もう少し上に乗るものも減りますし、量が減って、いかにパスタがおいしく食べられるかを考えます。前菜で、冷製で考えると、魚介類を入れてということになるんです。
高山 僕もおいしくいただきました。料理の構成、考え方はわかったんですが、コース全体の構成になるとどうなんでしょうか。僕のデザインでは、温度とか香りを意識して食材にテーマをあてて、どう表現しようかと考えるんですが、イタリアンの山中さんはどういうふうにコース全体を通して何をテーマにされているのでしょうか?
山中 コースの流れを考えるとき、結構、お客さまが飲まれるものでコースの流れを変えてしまうことが多いので、それにあわせていく形が多いです。これを飲まれているから、これに変えようとかが結構多いです。一貫するのは、冷たいもの、生ものからお出しして、温かいもので展開していく流れです。温かいものが続くよりは、間に冷たいものを挟んでみたり、メリハリをつける形で食材を生かしていきます。
高山 お客さんに対して臨機応変になるんですね。
山中 そこが一番です。

