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![「リクエスト・ワークショップ(2)70年代生まれの料理人とともに探る未来 Part.2」Program 1:料理プレゼンテーション [フランス料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927650/files/topics/626_ext_2_0.jpg)
「リクエスト・ワークショップ(2)70年代生まれの料理人とともに探る未来 Part.2」Program 1:料理プレゼンテーション [フランス料理]
Program 1:料理プレゼンテーション [フランス料理]
講師紹介
「季節の茸のフリカッセ レモングラス風味 じゃが芋の軽いムース添え」

高山 デザインは、個性でもあり、季節感、伝えたいものかなと考えました。昔のフランス料理と比べ、今は材料もよくなり、表現方法も変わってきています。昔は、皿は華やかに料理はシンプルに、でした。最近の傾向は、白い皿にいろんなものを乗せて表現することが多いようです。先月、フランスに行き、今のフレンチは、その土地を表現する感じになってきているなと感じました。私もそのようにできたらいいなと思っています。
今日のメニューのポイントは、秋の季節にあわせ、茸の料理を用意しました。コースでは1品目にお出しする料理ですので、軽さと温かさを重視しています。中間に出す料理だと、味付けとかいろんなものを加えたり、位置付けでも変わると思いますが、今回は旬の味覚の茸を中心にしました。茸のコンソメをベースに、いろんな種類の茸を入れていきながら一皿を仕上げていこうかなと思います。
まず、マッシュルームを薄くスライスしてコンソメを作っていきます。フランスの『レジス・エ・ジャック・マルコン』で教わったのですが、そこではオードブルからデザートまで茸中心の料理ばかり出します。薄くスライスしたマッシュルームを鍋に入れて火をつけます。最初に水を入れない状態で蓋をして、シャンピニオンから上の方までジュが出てきます。そのシャンピニオンを煮詰めてキャラメリゼする作業を3回繰り返し、うま味と香りでしっかりと肉をソテーする。その作業を何度も肉の上に絡め、それから野菜を入れ水を入れてジュを出す、というのが最近の感じだと思います。鍋底から音がしてきたところで香ばしさを出していきます。今回は茸のコンソメにうま味が足りないので、セップ茸を戻したものを入れて、香り付けにポワローとセロリ、ニンニクを入れて仕上げます。
隣で、じゃが芋のムースを作ります。じゃが芋を茹でて、そこに生クリームを入れたシンプルなものです。当初はオニオンとか入れてみたんですが、じゃが芋の風味がいるので、じゃが芋のみです。茹でるときの汁、どうしても薄くなりますので、なるべくひたひたになるまでやるところがポイントです。
鍋ではジュが出始めました。シャンピニオンからどんどジュが出てきます。今回、中に入れるフリカッセの茸は、国産のものを使いたいところですが、味わいが弱い部分があるのでフランスの茸をベースに使っています。その他、食感と香りがしっかり出るものをいろいろ用意しました。野生のものや香りがする茸など、旬の茸をコンソメに閉じ込めて季節感を表現しようと思います。



今回、フランスで感じたのは、若手の方の個性の強さです。人によってはテーブルクロスを敷かないとか、クラシックな店だとサービスマンもたくさんいてという、いろんな部分で変わりつつあるようです。次の表現方法にいっているのか。地元の食材を使って表現する形とか、大変勉強になりました。
さて、じゃが芋の周りの部分に香りが出てきて香ばしくなってきました。この部分をしっかりとキャラメリゼしたところに水でもう一度キャラメリゼ。2、3回繰り返して水をひたひたに入れます。この段階でしっかりと色がついてブイヨンになります。そこにセップ茸を戻したものを入れます。香り付けで、セロリとポアロの青い部分。軽くニンニクも入れます。3時間半くらいでできます。このコンソメ、3時間半炊くとベースができます。そこでレモングラスのスープにします。油を少し多めに入れて、レモングラスの香りを出して。オイルなしだと、レモングラスの香りが移りません。この状態で蓋をし、5分おいて、レモングラスの香るオリーブオイルに肉のうま味と香りを足すということでパンチェッタを入れます。5分たったと仮定してパンチェッタを入れます。この段階で甘味のベースのオニオンと、セロリ、それにニンニクを少し。塩をしてゆっくりと炒めていきます。スエという調理法でしっかりと汗をかかせながら甘味を出してソテーしていきます。一旦、ソテーが終わるとレモングラスの香りを野菜にもしっかりと移して、それからコンソメを入れていきます。
次に、じゃが芋のムースを仕上げます。茹でただけのじゃが芋に生クリーム。じゃが芋のゆで汁、水ひたひたで炊いたじゃが芋の風味がしています。細かいデンプンが出てしまいますので生クリームを足します。粘りけがあると、ムースが重くなるのでメークィーンをさっくりと火を入れ塩をし裏漉ししたものをエスプーマに入れます。
デザインといえば、夏場ですとグラスの器を多めに使ったりします。同じ食材でも器を変えることによってイメージが変わると思い、今回は3種類の器を用意しました。黒めの皿は、夏場は使えないのですが、寒くなって日が暮れるのが早くなると、こういう器を使ってもいいのかなと思います。三角の木の帽子で表現したり、上げ底で高い皿を用意したりして表現しています。もう一つはガラスの皿です。ガラスのものに茸を入れると層がきれいに見えてきれいな形にもなります。あとでドレスしていきます。
茸のコンソメが3時間半たったという仮定でコンソメを入れていきます。こちらの野菜とレモングラスを入れたベースが、茸をフリカッセするスープの元になります。食感を感じていただける茸のサイズにします。仕上げで、じゃが芋にトリュフを少し入れると相性のいい料理にもなると思います。
レモングラスの香りがしますので軽く香りを移して2分くらいたったら汁を取り出して、この茸と一緒にフリカッセしていきます。2分たったと仮定して裏ごしします。茸の料理の仕上げです。茸40gに対してコンソメが60cc。茸のスープは多くない。かみ砕いて食べていただくようなスープのイメージです。それに茸を入れまして、若干多めなんです。火が入ると、ずっと減りますので。一煮立ちして茸に火が入りすぎないくらいで止めて、一旦、漉して、茸の水分が出ると味が薄くなるので最終に味をチェックして仕上げていきます。
レモングラスの香る野菜、その上に同じく全く中身がみえないように盛りつけます。茸のダシの味が足りない場合は野菜のブイヨンで調節します。
デザインということで、皿の周りに紅葉もおいてみました。こちらにスープをひたひたに注ぎます。先程のじゃが芋をエスプーマしたもの。ゼラチンとか何も加えてないのですが、しっかりと固さの残るムースに仕上がっています。これを1品目にすることによって、秋がきたなと、温かいものを出すことによって季節感を表現しています。最後、上からムースを絞って仕上げます。イメージとしてはムースで、じゃが芋の味を楽しんでいただきます。
遊び心で、レモングラスの軸をストローにしました。吸っていただくとレモングラスの香りがより一層します。お嫌いなお客さまもいらっしゃいますので、当店では添えてお出ししています。ガラスの器ですと層がきれいに見えて、陶器の器とは違う表現になっていると思います。今回、拮抗させてみて、こういうデザインもあるかなという提案です。これで、完成です。

山口 各プレゼンテーションを見せていただいて、フランス料理は調味料がないから大変やなと思いながら見ていました。レモングラスの香り付けをオイルにしてから炊くという作業。茸のコンソメを炊く時間が3時間半とか。僕の考えだと、野菜は3時間半も炊かないでもダシが出るのではないかなと思うんです。3時間半というのは、どういう理由なのか。レモングラスのオイルの香りをとってから加熱していくときに、香りが揮発してしまわないか、そのへんが気になったところなんですけど。
高山 肉のコンソメとかブイヨンも、どこでうま味が出るかの時間帯が難しいと思うんです。肉だと柔らかくなるところなのか。1時間では出にくい。2時間で水を継ぎ足しながらでも出にくい。科学的に調べていないのですが、今まで6,7年くらいやっていて、3時間前後が一番うま味が出るんです。やりすぎると出なくなったりします。裏付けはちゃんとできてないんですが。
山口 3時間半というのは蒸発していくから、水分量は同じ状態で?
高山 汁が煮詰まると水を足してます。ある程度、しっかりと水に入れてからゆっくりと炊くんですが、どうしても煮詰まる時は、1、2回は水を足します。味をみながらですが。
川崎 なんで3時間半かということですが、非常にフランス料理らしい作業がいっぱい入っているのですね。まず、濃縮するということです。もともと濃縮とは何か。それは、何かの物質の味の閾値を超えさせるということなんです。もう一つは味と香りを分けて考えることが重要です。3時間半炊かないと味を感じないといわれたのですが、それはおそらく香りが原因です。人間は香りと味を分けて感じることができにくいので、香りを感じていると思われます。というのも、いわゆる肉のブイヨンも3時間くらい炊かないとメイラード反応の香りが出てこないんです。本来、メイラード反応、つまりアミノ酸と糖の加熱反応は120℃以上あったら進みやすいのです。ところが、水溶液の場合は100℃しか上がらない。100℃なので、長時間必要なのだと考えています。ということは、どうしたらいいか。先に100℃を超えさせるように濃縮度を高めておく。焼くとかソテーするとか。そこで香ばしい香りをつくっておいて希釈をするというイメージですね。味自体は20~30分で出ます。なぜなら味成分は水溶性だからです。味成分は揮発しませんが、香りは揮発する。濃縮するのは味成分を食材から水に移行させて閾値を超えさせるためにおこなう作業なんですね。それを香りと同時にやろうとするから3時間半かかってしまう。3時間半かかるというのは、そういうことだと思います。でも技術の本質的な意義を理解すれば、変えることも可能です。

