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甘さは、なぜ必要か。「甘くて、旨い」Program 1:講演:料理人のための「甘味のサイエンス」

甘さは、なぜ必要か。「甘くて、旨い」Program 1:講演:料理人のための「甘味のサイエンス」

Program 1:講演:料理人のための「甘味のサイエンス」

講師紹介

川崎 寛也(かわさき ひろや)氏
農学博士

■そもそも味覚にはどういう意味があるか。

甘味はエネルギーのシグナル、塩味はミネラルのシグナル、うま味はタンパク質のシグナル、酸味は腐敗とかエネルギーのシグナル、苦味は毒物のシグナル。それらを舌が感じて摂取しようとか忌避しようとか判断するわけです。“あまから”に含まれる、甘味、うま味、塩味は、エネルギー、タンパク質、ミネラルという3つ、おいしいもの全部なんですね。

画面1

■味覚と嗅覚にはどういう情報があるか。

味覚は、受容に味物質が結合して、電気信号が脳にいきます。栄養情報、栄養があるかないかという情報を脳に伝えます。嗅覚は、記憶情報です。味覚は受容体が決まっていて塩味が2種類、酸味が2種類、甘味が1種類、うま味が3種類、苦味が25種類。嗅覚は400種類あります。認知できるのは1万種類あります。そういうのが味と匂いなんですが、別々の情報として脳に届いて統合されて味わいとしてとらえられる。匂いと味を分離して考えることは、難しいのです。

画面2

これまで、味、匂いは、質とか強度でとらえられて研究されてきましたが、最近は時間という研究も進んできています。味も匂いも、いつ感じて、それがどれくらい続くのか。そういう研究も重要とされてきています。時間もデザインできます。例えば、みたらし団子はうま味もあるのに、なぜスイーツというイメージなのか。タレに甘味と塩味とうま味があって団子には甘味がある。タレが先に消えて、団子の口腔内での滞在時間が長いので、最後の後味は甘味なんです。だから、最後に甘味が残ったら、スイーツという印象になるのではないか。もし、逆に、団子で最後に残るのがうま味になってしまうと、「うーん、スイーツではなく料理かな?」ということになる。時間をコントロールして最終的にどういう印象を与えるかを決めることが可能ではないかと思います。

■混ぜるということも、あまりわかっていません。

味物質は互いにそれぞれ影響を与えていて、甘味が塩味を抑制するとか、酸味を抑制する、苦味と抑制しあったりすることもわかっています。うま味については、研究は進んでいません。甘酢も混合ですが、割合によって印象が違います。一般的に酢、砂糖、水を2:1:1に混ぜた時、酸味がとがっていて、それが酢の割合が減ってくると強度だけではなく、先に酸味がきて、次に甘味が出て、残りに酸味を感じるという印象になる。もっと酢の割合を減らすと逆に甘味を最初に感じるということもあります。割合を変えると強度を変えるだけではなくて時間の印象も変えるということです。

年齢が上がると甘味以外の感受性が下がります。これは、お客さんが高齢の方とか若い方によって味を変えるという話もありますが、年齢が上がるとショ糖の感受性は上がるんですね。データは閾値なので数字が低いのは敏感だということです。ショ糖に関して65~88歳の男性は0.29%で甘味を感じるが、20~29歳の男性は0.4%で甘味を感じる。年齢が上がると感受性が上がっていく。逆に他の味は感受性が下がるということは、同じ調味料を与えても感じ方が違うんですね。お客さんにあわせて変えるというのはそういうことですね。

■バーチャルな風味の増強。

バニラの香りをショ糖につけると、より甘味を強く感じるという研究があります。ショ糖本来の物質の濃度で感じられる強さ以上の味の強さとして感じられる。味と香りは分離して考えることはなかなかできません。錯覚としてバニラの香りがあると、より強く感じる。甘いイメージの香りが砂糖水の甘味を増強したという研究があります。皆さんも、匂ってみて甘いなというイメージがあれば、どんどん使っていけばいい。研究としては、ストロベリー、メロン、パイナップル、アーモンド、オレンジ、グレープフルーツの研究がありますが、甘さ評定で、本来の甘さ強度を超えて感じる。逆にレモンとかミントは甘さを抑えて感じさせる。本来含まれているものよりも弱く感じさせる。メロン、ストロベリーを足すと、より甘く感じることがわかっています。甘味を増強する匂いと、甘味に効果がない匂いがまとめられています。これは西洋人の論文で西洋人の感覚ですから日本とは違うと思いますが。食文化を研究する上で、一応、こういう研究があるということです。皆さんが甘い香りだなと思ったものを付け足していけば、より甘さを感じさせることができる。砂糖をあまり使わなくても、より甘さを感じさせることができるということになるわけです。

■感覚と味物質の関係。

感覚に対しての物質の精製度を考えてみましょう。ショ糖は物質です、例えば、その上にサトウキビの絞り汁があって、そのもとはサトウキビです。そのもとになるほど雑味とか香りが多くなる。皆さんは砂糖だったらグラニュー糖を使う人もいれば、黒糖を使う人もいる。サトウキビの絞り汁が使えるかもしれない、液体の甘味として。サトウキビは難しいかもしれませんが、新しい可能性がどんどん出てくるのではないかということです。
砂糖の甘味に比べて蜂蜜の甘味は、ちょっと違う印象がある。蜂蜜の甘味は果糖、ブドウ糖とかのまた違う糖の種類です。黒糖とか和三盆とか三温糖とかになると、ショ糖、転化糖などのミネラルの割合がちょっと違うんですね。そういうことで味わいの感じ方が違ってくる。黒糖はショ糖の割合が少なくて果糖やブドウ糖が多く、ミネラルが多いから、強い、しつこい甘味を感じる。

■糖とデンプンの関係。

デンプンはブドウ糖がつながったものです。それをアミラーゼという酵素で分解してブドウ糖ができる。砂糖はできない。デンプンにはアミロースとアミロペクチンという2種類のデンプンがあって、もち米はアミロペクチンが多い。普通の米はアミロースが多い。それを分解するとブドウ糖に変わっていく。ショ糖はブドウ糖と果糖がくっついた二糖です。麦芽糖はブドウ糖が2つくっついたものです。麦芽から水飴をつくる時は麦芽のもっているデンプンを分解するだけですからショ糖はできない。もともとデンプンはブドウ糖しかありませんから、2個ずつ切れて、麦芽糖が2つずつできるというメカニズムです。

味醂と蜂蜜の成分を比べてみます。メイプルシロップは意外とショ糖が多い。ブドウ糖とか果糖はほとんど含まれていない。アミノ酸にも甘味があるものがあります。グリシンとかアラニンというのは、海老とか蟹とかの甘さです。

画面3

■カラメリゼについて。

カラメリゼは糖の加熱で、150~200℃で加熱すると酸味や苦味が加わって強い香りが出る。砂糖を焦がしたものですね。ショ糖とブドウ糖では温度が違います。メイラード反応とカラメリゼは何が違うか。香りの成分が違っているので、香りの印象が違います。メイラード反応の匂いはうま味を感じさせたり、花の匂いだったり、タマネギとか肉の匂い、チョコレートの匂いがします。カラメリゼの匂いは甘い、酸味、果実の匂い、バター臭、ナッツ臭とかカラメル臭があってちょっと違います。ショ糖はメイラード反応を起こしにくいので、メイラード反応を起こしやすい糖を含む食材を使えばメイラード反応を起こすことができる。ブドウ糖を含む味醂、果糖を含む蜂蜜、果汁、麦芽糖を含む麦芽、乳糖を含む牛乳などです。

画面4

メイプルシロップの香りというのは、バニリンというバニラの香り、シリンガアルデヒトという甘い花の香り、ソトロンというナッツとかカレーを想起させる香り、シクロテンというキャラメルとかのものが入ります。

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