- 定期

料理に使える「乳化の技」Program 3:ディスカッション 1/2
Program 3:ディスカッション 1/2
講師紹介



門上 デモンストレーションが終わりまして、ここから討議に入りたいと思います。今回は西原さんに初めてパティシエの立場でご参加いただきました。デモンストレーションでは、料理人とパティシエの考え方の違いを如実に感じられたかなと思います。料理人は素材があって、その素材を調理するという発想です。パティシエは温度をナーバスにコントロールするところ、素材によっても条件が違ってくるわけで、どう料理していくかということとは差があるなと。3人それぞれの乳化のポイントもくっきり見えてきたと思います。これからお話を進めていく上で、まず山口さん、今日の感想を伺いたいと思います。
山口 西原さんのお菓子の乳化、乳化させることによって均等化されて商品ができることと、村田さんの香りを親油性と親水性をアルコールを使って乳化させて移しかえる。マヨネーズを作るようにしてされたのですが、実際には乳化が直接、口の中に入る作用ではなく、乳化を基本として、できあがりを左右させることに着目させてもらったので大変勉強になったと思います。
門上 何か取り入れるところがありそうな感じですか?
山口 最初からコアメンバーとして参加して、村田さんがされた香りオイルの部分については自分のテクニックの中に入れさせていただいています。木下先生のお話で、若い人たちのフレーバーの使い方とか、川崎先生のいわれる料理をデザインする、香りのアプローチ、フレーバーをどこにもっていくかが、今は一番大事なことなのかなと。味覚受容体より嗅覚受容体をたくさんもっている人間です。美食にスポットをあてた時、香りを司る料理人の料理が最先端を走っていくんだろうなというのを改めて関西食文化研究会を通じて意識したところです。
門上 これまでも川崎先生がフレーバーデザインという、風味をどうしていくかの大切さをお話しいただきました。村田さん、最初はテーマを相談した時に予測していなかったのですが、和食で乳化のテーマを落とされたのはどういうところにありますか。
村田 日本料理の中で乳化というのは、なかなかないんです。日本料理に乳化を使うと新しいテクニックになるので、僕が日本料理で乳化は無理やろうと言っていたのは、自分の新しいテクニックを教えたくないから。乳化させることによって、いろんなことができる。今まで油脂を全然使わなかった日本料理が、油脂を使ってもいいようになってくると、日本料理らしい軽さ、フレーバー、おいしくするのは油を使うと結構、楽なんです。その中に受容体と香りとテクスチャー、歯ごたえとか、歯触りと香り、これは油を使えば意外に楽においしいものをデザインできる。その点では乳化は日本料理にとっては、ありがたい。和え物も乳化させることによってできているし、もっと軽くしたり他のフレーバーを入れていくことは簡単にできますから。花の香りのする何々というのは、日本料理はやりそうなところです。
門上 川崎先生は、日本料理における乳化はあるだろうと思われるわけですね。
川崎 無意識にしろ、使っておられたはずです。日本料理は油脂の使用量が格段に少ないので、意図的に乳化させようというのはなかったかもしれませんが、胡麻和えも完全に乳化物を作っているわけですし、探せば活用例はあるだろうなと思います。
門上 その中で今日の村田さんのデモンストレーションはいかがでしたか?
川崎 あえて乳化させないという、日本料理だと乳化させないこともあったんだろうと思われます。油に香りを溶かすのは、誤解されがちですが、油に香りを溶かすと揮発しないから感じにくいのです。口に入れて初めてだんだん感じられる。それを、フランス料理や中国料理はよく使っているのですが、日本料理は、そうじゃなくて、木の芽だったらそのまま口の中で噛ませて、噛んだ瞬間にパッと香りが立つようにしていた。それは料理全体の中で、いつ、その風味を感じさせたいかというデザインの考え方の違いではないかと思います。
門上 木下先生、村田さんのお醤油の香りについては、どんな観点で感じられましたか?
木下 料理を食べた後の余韻の長さを考えると、和食は余韻が少ない、洋食は余韻が長い。酒もそうだと思いますが、ワインは余韻を楽しむ。日本料理は香りも油に入れないのは余韻をそこで終わらせて、次の料理にいくため、余韻を引っ張らないために油がない、そうだったと思います。西洋は油があったから、そのまま香りとか味を後ろに引っ張っていくために使っている。それぞれの料理の特徴だと思います。油の中に香りを移して、油はおいしさなんです。油を食べると脳が「おいしい」という反応をするらしいですね。それが本当においしいのか、味覚としておいしいのかは別として、おいしく感じる。そこがずっと後を引くという特徴ではないかと思います。
門上 魏さん、中華料理は油を多用する料理ですね。和食は余韻が少ない。西洋は余韻が長い。油を使うことによって、味覚ではないが、脳においしいという信号を送る。乳化させることによってたっぷり油を使うが、軽さであるとか、そういうプレゼンテーションでしたが、余韻とかはどうですか?
魏 難しい質問ですね。どうなんでしょう。フランス料理、イタリア料理、中国料理は似ていて、すごく油を使う。乳化も、まず香りがあって、オリーブオイルを使って舐めたり、飲んだりする。味があると思うんですけど。ネギ油、ゴマ油、トリ油も作るようになりましたが、そこからスープを混ぜてたり炒めたりするんですけども。わけわかんなくなってきたな、難しいという感じですね。
門上 油にはうま味がないということですかね。
村田 うま味はないんです。お母さんのおっぱいの中に入っているものが3つ、油脂とうま味成分と糖質なんです。この3つは脳の快感中枢を刺激してドーパミンを出す。また食べたくなる、もっと食べたくなる作用がある。その中で、糖質はパンを食べたり、ご飯を食べてとりますが、世界の料理は油脂を中心に構成してある。唯一、うま味を中心に料理を構成しているのが日本料理で、日本料理は総カロリーが低い。日本料理をおいしくしようと思ったら日本料理の中にちょっと油を入れたらおしくなる。油はおいしさの一つです。砂糖もおいしさの一つ。
門上 山根さんは今日のプレゼンテーションをみられて、いかがでしたか。
山根 油はイタリアンではよく使います。村田さんの料理を見て感心するのは、油脂を使わないで、卵も使わずにマヨネーズを表現するというところは僕ら考えへんな、と。今までも、西洋料理で油脂を使って成立しているものを日本料理的な良さを熟知した上でデザインされている。豆乳で作ったマヨネーズ、おいしくできていました。アスパラガスの食感は、僕らの料理には絶対にない食感です。ともすれば豆腐を潰して白和えの変形のようにすら感じたけど、あれくらいガストロパックを使った食感を表現したのは、さすが。次の料理を示唆していると思いました。今の段階では入り口として、ご提案いただいて、僕ら、できへんなと思うけど、ここから発展するのかな。そういう方法で、油脂を減らしてヘルシーで、日本料理の良さを見直していきながら伸ばしていくことを考えている人はあまりいない。和食を究めるというのでもない。そういう観点でイタリア料理を作ったら違うものになるでしょうが、私は頭が固いから最後にオリーブオイルをかけたくなる。醤油の香りの出し方は、すごい面白かったけど、醤油3滴ほど垂らしたらええんとちゃうの、とすぐ思ってしまう。そういうことをいうと嫌われるのですが。
村田 料理にはいろんな可能性があるので、方法の一つとして、どういう時に、どういうふうに使うか。引き出しの中で、乳化ということで香りを移して、一つのことをやりましたけど、油をいっぱい使うてる。あれだけ油を使うことは実際にはないけど、方法としては面白いですわな。




