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料理に使える「乳化の技」Program 3:ディスカッション 2/2

料理に使える「乳化の技」Program 3:ディスカッション 2/2

Program 3:ディスカッション 2/2

講師紹介

進行:門上 武司

門上 当研究会はいろんなテーマでやってきています、以前にプレゼンテーションしていただいた高山さん(トゥールモンド)にインタビューしたんです。メニューを考える時、火入れでこんな話があったな、苦味でこんな話があったななどと、自分の料理を作る引き出しの中にいろいろ入ってきて、そこに資料がたくさんあって、聞いたのをそのまま料理に使うのではなく、いろんな引き出しにいろんな資料が入っているから、それが料理を作る時に出てきて新しい料理が生まれてくるという話でした。いろんなプレゼンが一つひとつどこかに埋め込まれていって、次の新しい料理のきっかけになれば、と思います。毎回参加していないとわからないこともありますが、ホームページに記録されていますので、ぜひとも読んでいただきたいと思います。
西原さんは初めて参加され、他のジャンルの人と同じテーマでデモンストレーションしていただきましたが、感想はいかがですか?

西原 私は料理の方とは密接に仕事をさせてもらうことが多くて、ベースが変わったなと思うのはアラン・シャペル氏との出会いですね。それまでのお菓子を作ってきたことが全くイメージが変わるほど、ベースの考え方、調理は何かということを教えられたように思いました。今日も料理の方々の話、内容を聞いていますと、懐かしく思い出したことがありました。

門上 西原さんは、テーマに対して何の迷いもなく今日の内容にたどりつかれたのですか?

西原 川崎先生と打ち合わせをさせていただいて、関西食文化研究会から先に進めるものはないかと聞かせていただきながら、今日、お菓子の方が大半でないことを聞きましたので、最もベーシックな、お菓子の世界で乳化がどういう場面で使われているかを皆さんにお伝えできたらということで、基本的なものを紹介させていただきました。

門上 川崎先生は、菓子はあまり強くないということですが。

川崎 僕もお菓子は大好きなんです。大学の先輩がお菓子の専門家です。なので、料理としてお菓子を見ようということで、それでも不安だったので、お店に伺いまして2時間しゃべらせてもらって、最終的に至った結論が本日のデモンストレーションです。素人からみた時にバターといえばバター、粉糖というと粉糖と見てしまっていた。そうじゃなくて、バターは水と油脂の乳化物、卵は水と卵黄レシチン、というように分解して初めて理解できた。知識がないから、西原さんのされている作業が何が行われているか想像つかなかったんですね。それで一回、分解して考えました。そうしたら何が何の中に分散している乳化物なのかがはっきりしてきて、ショコラはもう少しわかりやすかったかもしれませんが、一足飛びで焼き菓子までいったので、難しい宿題でした。

門上 料理と菓子は、もっと密接につながっているところがあると思いますが、木下先生は西原さんのプレゼンテーションを見られてどうですか?

木下 菓子は基本的に粉、卵、バター、水の分量か、混ぜ方、卵をそのまま使うか、泡立てるか、そうした以外に変えようがない。微妙なところで結果を出さないといけない。次は焼くことですね。焼くか、蒸すかによって違いますが、焼く温度によって変化してくるので、また別のものができる。同じ生地でも高い温度で焼くのと低い甥度で焼くのとで出てきたものは変わってくる。そのへんの微妙なところが、現在では微妙にできるようになって、温度計とか、表面温度を見る赤外線のものもあって、それを使うことによって、より細かくなってくるから、できあがったお菓子も微妙な違いが出てくるので、菓子業界はこの何年間にすばらしく進んでいる。材料の飛躍もすごいですね。バターの中に入っているバターミルクの含有量も昔と違って少なくなってきましたし、扱い方もやさしくなってきたのではないかと思います。

今日は油と水を足した乳化ですが、僕が勉強の研究材料にしているのは、料理というのは時間軸と土地の中にある気候風土、その時代、そこの土地にはどんな空気が流れていたか、どれだけ暑かったか、そういうことも料理には関係してきて、最終的には味にも関係してくる。油を入れるとおいしくなるというところで、西洋はなぜ油を入れておいしさを求めたのか、和食はなぜ油を抜きにしてうま味にいったのか。時間と地理的なことと、経済的なことも全部含めて、今、世界が全て同じになってくると、おいしさはどうなるか、そのへんも考えないといけないな、と感じました。

門上 今の発言も、料理の世界の味、うま味、おいしさを考えていくには、ヒントが隠されていると同時に、考えないといけないことが多いと思いました。ここで議論されていることは、入り口から少し入ったところの議論で、これから皆さんにどう採り上げられていくかが大事で、今後も、多彩ないろんな角度からのプログラムを用意していきたいと思います。皆さんからも「こんなテーマどうですか」とか「こういう課題を抱えているが、こういう講座をしてほしい」という声を寄せていただきたいと思っています。
西原さん、菓子の話で使う材料が同じでも微妙なところで、できあがりが違うという話がありました。それについてはどうですか?

西原 今日は4大素材の代表的な食材を使いました。配合の割合、タルト台に使う割合、サブレの割合の比率をみると、結構、お菓子は幅が狭い。パウンドケーキは今日は膨張剤を加え、それをより軽くし、パウンドケーキ的な口当たりをソフトに焼き上げ、サブレはバターの粒子をより小さくし、粉の中に点在させてバターを溶かさない状態で焼き上げる食感が求められる。シュクレは乳化させ、サブレより、もっと小さな水分と油分が粉の中に浸透していくことで食感が変わってくる。木下先生がいわれたように焼く温度帯によってもずいぶん変わってくる。それがごっちゃになることが多いと思うんです。
私も若い時はひたすら先輩のやっていることを見て、とにかく勉強する。理論ではなく実践で覚えてきたことです。それがアラン・シャペルにいた当時、フランス人のスタッフに理論的に伝えないと彼らは受け入れてくれなかったんです。曲がりなりにもシェフでいたものですから、若い人が辞めるという話になって、なぜ辞めるんだと聞いたら「お前は私にとってシェフじゃない」。では、お前にとってシェフは何かと問えば「僕の前できちんとデモンストレーションをし、こうすれば失敗する、こうすれば成功するときちんと教えて、その上で仕事を与えられることだ」というのです。その時に、なるほどと、ちゃんと前もって説明しないといけないと感じとりました。そういうことによって、今、少し理論的に伝えられる。お菓子の場合は比較的、理論的に説明しやすい。温度的なことも、しっかりと伝えやすいのかもしれないですね。

門上 西原さんはアラン・シャペルの本国でもシェフをされて、その経験から理論、理屈がわかっていることで前に進むことは相当多いという話でした。川崎先生もバターと卵を分解されたところで、新しい糸口が見えてきたという話でした。乳化から、油の問題、水の問題へテーマが広がっていきます。香りづけについても、今回のプレゼンテーションに生かされていると思います。会場から、今日の内容、今後のことについてご意見があればいただきたいなと思います。

ホームページを見ていただくと、これまでの記録が全部載っていますから、ご参考になるかと思います。12月には「hu+gmuseum(ハグミュージアム)」のオープンにあわせ、世界規模で料理を考えていこうと、ただいま計画中です。
関西食文化研究会が、こんないろんなことが自由にでき、これだけのジャンルの方がプレゼンテーションができることは、すばらしいと思っております。今日は皆さん、どうもありがとうございました。

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