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![1 theme STUDY vol.01「うどん研究」Program 2:料理デモンストレーション+試食 [麺代表]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927650/files/topics/647_ext_2_0.jpg)
1 theme STUDY vol.01「うどん研究」Program 2:料理デモンストレーション+試食 [麺代表]
Program 2:料理デモンストレーション+試食 [麺代表]
講師紹介
「ぶっかけうどん」

大阪の人はうどんが大好きです。しかし、冷たいうどんは夏しか食べなかった。暑いからで、決しておいしいからということではなかったと思います。冷しうどんはガチガチに固まったようなうどんでした。それが、香川に行った時、たまたま夏でしたが、ぶっかけうどんを食べたんです。冷たいうどんでもおいしいと、感激しました。それでおいしいうどんをもっと知りたいという気持ちからいろいろ調べたり、うどんのホームページをつくって紹介しているうちにだんだんと深みにはまっていきました。やがて、自分が食べたいうどんは自分でつくるしかないという結論になり、うどん屋を始めようと思ったのです。
そのとき、おいしいうどんをどうしたらつくれるか、簡単なことに気づいたんです。なんでも出来たてを食べたらおいしいのといっしょで、うどんも茹でたてをすぐ水で締めて、一番いい状態で食べたらおいしいと気づいたんです。おいしさにはいろんなおいしさがあって、麺で思ったのが「食感」だったんですね。固い讃岐うどんのイメージとか、店によっていろんな食感があって、その中でもモチモチした食感に感激したわけです。そうしたうどんができないかと、うどんのつくり方をいろんな方に教わって。うどんにはあまり味はないので、食感でうどんを食べさせる方法「食感主義」でアピールしたらどうかと考えたのがスタートラインです。
今日、持ってきているうどんは、今までのうどんのイメージからするとちょっと太い。食感で味わっていただけたらと思います。香川のうどんの師匠には「うどんは、水で洗う時に手触りのええやつやないとあかん」「手触りがいいのは舌触りもいい、喉ごしもいい。手触りがすべて」と教えられました。洗った時に限りなくやわらかく、限りなく手に吸いつく手ざわり感なのに、噛むと食感があるというのができたら一番いいなと思ってやっています。そういうことで自分のうどんのスタイルを見つけてやってきたわけです。それが皆さんに支持していただいて、大阪でも食感のいいうどんをつくろうという人が増えてきています。「茹でたてのいいうどんを出さないといけない。食感のいいうどんを出さないといけない」という考えになっています。私は今、大阪のなめらかな食感を大阪独自のものに進化させたいと思っていまして、大阪のうどんは日本一だと思ってやっています。
しかし、一つ問題点が出てきました。食感とだしの相性の問題です。今日、食べていただくうどんは太いんです。じつは、太いうどんはだしとの相性が悪いんです。京都のうどんはだしがうまい。だしをそのまま飲んでもおいしいのですが、だしがおいしいと思うものをつくって食感を主張したうどんをつくると、まったく絡まないんです。最初の頃、大阪のうどん屋さんで讃岐の麺をつくると、結局いりこだしでないとあわない。相性の問題が出てきて、だしもおいしい、麺もおいしいものがつくれなかった。そうした中で、だんだんと大阪で讃岐のコシからモチモチ系に移行しながら、濃厚なだしからだしが変化してきて新しい讃岐うどんの店が増えてきているということです。それでは、配膳されたところから食べてください。



こういう太いうどんは今までタブーでした。香川でも太いうどんはなかったんです。営業的にやりにくい。昔のように茹でて置いておくなら可能だけど、茹でたてがおいしいとなると茹で置きがしにくくなるので、細い麺に向かう傾向が強かった。その絡みがあって、ご当地のうどんの方向も決まっていくのではないかと思います。太いうどんを提供しようとするのは他にあまりない。実際、30分近く茹でていますが、そこまでお客さんを待たせられない。でも茹でたてを出したい。どうしたらいいかというと、お客さんが来ても来なくても茹でるのです。お客さんが入ってきたらすぐ出すという方法に切り換えていますから、ロスの多いことをやっています。流行っていればいいですけど、流行らないとロスばかりで難しい商売です。そのための自分なりの解決策は、営業時間を短くしたことです。全部茹でて、だめだったらだめということでやろうと。おいしいものを出したいということでやっています。今日、大阪のうどん屋さんから二人きていまして、彼らは二人ともうちに研修にきています。すごくこだわりがあって、おいしいものを出そうという意識でやっていますので、そういう方たちの支持があって、大阪うどんも変わってきたのではないかと思います。
今日、食べていただいているのは濃いだしです。醤油の濃さで出している味ですが、だしがあまり濃くなってもあわないということが、やっているうちにわかってきました。まだまだ勉強中です。僕らがうどん屋さんの前を通って「いい匂いがしている、あれ食べたいな。あの匂いを出したいな」と思ってやるんですけど、なかなかできません。濃いだしをとっても、決して香りがよくならない。水の量を変えて濃度を調節して、ある程度の薄さで味が出る、そのぎりぎりのところでやると香りが立つ。不思議なバランスがあるので、そのバランスが掴めたかなと思って、毎日だしづくりのことで悩んでいる最中なんです。こういううどん、従来なかったうどんになっているかなと思います。
門上 皆さん、召し上がっていただいて、あとで感想をおききします。まず、だしですが、この濃さにたどりついたのは麺の固さとか太さとの関係ですか。
木田 讃岐うどんのだしは薄いんです。ぶっかけだしを使っているんですが、この太さになるとあわなくて。関西のつけ汁は、わりと濃いんですね。それに馴染んだ味にすると濃いだしにしないとあわなくなって、それで結局、この濃さになってしまうのです。
門上 結構、色があって甘さもありますね。
木田 関西の人は甘い味が好きなので、この濃さの中に甘味があると馴染みやすい。同じ濃さでも、そばだしになると甘味がなくて違うものになると思います。最近、思ったことは、簡単にいうと、うどんって味がないんです。小麦粉の味はあるんですが、そばとか中華そばはそれぞれに味をもっているので、だしとか汁ともあわせやすいのですが、うどんにはその効果がない。だからこそ、うどん=食感を出さないといけないと考えています。うどんはこんな味です、ということだけでは魅力が出せないかなと思っています。
村田 もう一杯食べたらようわかる。そやけど、このうどんを細くしたらどうなるんですか?京都に、ささめうどんという細い目のうどんがあります。それをこれでつくったらどんな味になるかなと。京都の透き通ったようなだしと、うまく絡むのかなという気はしています。うどんって味がないとおっしゃいますけど、水と塩が結構入っていますよね。
木田 本来、塩は茹でた時に抜けるものなんです。抜けないと、うどんがしょっぱい。抜け切るところまで茹でないとだめなんです。それと、細くしたらだしをもっと薄めないと辛すぎます。自分自身は食感重視で太いうどんをと思ったのですが、今、考えているのは次の時代、細い麺の時代がくるかなということで細いうどんをつくっているんです。そうすると、ぶっかけの形状では食べられないですね。つけだったら食べられますが。
村田 細くなるとコシというものがなくなる。ある種の太さがあってこそコシがあるので。細いとコシが感じられない。



木田 うどんのおいしさの一つに水分の浸透圧の違いがあります。茹でると、表面の加水率と中心部分の水分率が違ってくる。それで表面がやわらかいからすっと入るが、真ん中が固いから、ぐっとコシが出る。その食感の変化がうどんのおいしさになります。うどんが細いと均一になりやすくなる。「釜竹」さんという羽曳野にある店(現在閉店)は、細いうどん、ただし、固い。半茹でくらいで揚げる。長く茹でると中まで水分が入るので固いうちに揚げてしまう。固いけど、細いから噛むおいしさがあるということですけど、細うどんは噛む楽しみを細かくは表現できないですね。
山根 パスタは形状と太さによって麺性を変えます。細い麺でも卵を使うのに卵白だけでやるのもあるし、全卵もあるし、卵黄だけのもある。水のもある。細かったらコシを出しにくいから固い麺性になるようにつくる。ソースを吸収したかったら、ちょっとモチモチ感を出すように卵黄を増やす。加水するとツルツルする。卵白だとプルンプルンする。そういうようにやっていますけど、同じ麺で太さだけ変えるとか、細い用につくってみたらいい。練り方とかで変わったりしないんですか。茹で方が違うとか、麺性を変えるようなことを。
木田 うどんは、基本、小麦粉と塩と水なんで。秘密の技がないかなと思って試してみたんですが、そんなに大きな変化はないです。うどん屋さんをやる方にいっていることですが、「自分のつくりたい食感のうどんがあれば、そのためには粉を選ぶのが一番だ」と。粉で食感が変わってきますし、北海道の小麦粉「きたほなみ」でも製粉会社によって、出来上がりが違うんです。いろんな小麦の種類があるけど、製粉会社で選んでいくのも選択肢のひとつです。
山根 うどんは熱いのと冷たいのと全然、違うでしょう。それって、どちらを良しとしているんですか?だしも、太いうどん、細いの、熱いの、冷たいので全部、違うものが求められているようですね。
木田 冷たい方を重視します。冷たいうどんはいい食感を出すのが難しいんです。水で締めるとガチガチのコシになったり、難しさがあって。冷たいうどんで、おいしいのがつくれるようになりたいと思って、苦労しました。それと、うどん屋さんではだしを何種類もつくっているところは少ないですが、今井さんにお話を聞くと、いろいろだしを変えられているそうです、麺の種類によって。パスタも同じだと思いますが、太さが変わったり、茹で加減を変えて出すとなると、だしも変わってくるのではないかと感じます。
門上 続きは、後のディスカッションで話していただます。木田さんは麺を主体に、どういう具材をいっしょにするか、いろんなチャレンジをされています。最初は「キムラ君」でした。フードジャーナリストが選ぶ今年のキーワード賞を受賞されました。その次、今年はどういうテーマですか。
木田 僕自身、ひねくれ者なので。うどんの場合は、だしかつけ汁ですが、あえて違う食べ方を考えて提案しました。キムチと食べる内容を入れてメニューにして、自ずとキムラになったので「キムラ君」と名前をつけてやり始めたんです。キムラ君というのは何やねん?ということで評価をいただきました。いつも、新しいことをやろうと思っていますが、簡単には生まれないです。ほとんどのことを先人が必ず何かをやっていますから。ですが、過去に考えられたうどんのつくり方を勉強する中で「こんなことをほんとにしないといけないのかな?」と思うことがいっぱいある。そういう中で、こうしたらおしいうどんがつくれるだろうなということを探している途中です。 例えば、過去の消えたメニューの中で、練り込みうどんがあります。わかめうどんとか。僕は否定派で、絶対長続きしないと思っていますし、実際、世に残ってないです。ただ、何故だめなのかといろいろ考えています。その中で、ヒントになったのは提供の仕方なんですね。食材を入れたうどんをつくっておいて、お客さんがきて出す。でも、入れた食材は茹でると味が抜ける、梅を練り込んだうどんは薄汚れた赤いうどんになるとか、改良点はあるので、それを何とかしていきたいと考えているところです。

