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「料理と飲み物の相性」Program 2:料理と飲み物のマッチング(実演と講評)+試飲食[日本料理]

「料理と飲み物の相性」Program 2:料理と飲み物のマッチング(実演と講評)+試飲食[日本料理]

Program 2:料理と飲み物のマッチング(実演と講評)+試飲食[日本料理]

講師紹介

髙橋 拓児(たかはし たくじ)氏
「木乃婦」3代目主人
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「鱸の洗い(試食は湯引き)」

“調香”を基にした相性についての考え(料理人の心得)を解説。そのひとつの実践例として料理を披露していただきました。同じ料理でも、盛り込む素材によって相性が変わることを実証。赤しその紫芽ならワイン、青しその青芽なら日本酒が合うという具合です。

日本料理とお酒の相性を考える時、“調香(食品や化粧品の香料を調合する調香師の調香です)”という技が必要であると実感しています。調香の能力を上げることによって料理の腕もかなり上がる、料理人としての必要な能力だと思っています。香りというのは、A+BがCになる可能性がある。僕たちのスキルとして、逆にCの香りがあった時にAとBに分解できる能力が必要だということです。相性研究についても科学的にA+Bの香りが相応しいと考えた時、それを分解してAの香りとBの香りを合わせるとCの香りになることを考える必要があるのではないかと思ったわけです。

今日の料理で主体となるのはスズキです。その料理をする時にフレーバーを何で合わせていくか。間をつなぐもの、つなぎの役割をするものは酢味噌です。白味噌と米酢と卵黄、3種類を基本に使います。あとは好みで砂糖を入れるかどうか。この料理にどういうお酒を合わせていくかによってフレーバーを変えていこうじゃないかというのが今回のテーマになります。

フレーバーを変えるのは、紫芽(むらめ)と青芽(あおめ)です。「紫芽」は、香りとして赤ジソ、ミント系の香りと、赤い色素を持つカシスとかプラム、梅とかの香り。もう少し深みがある香りとしてはチェリー、ローズ系の香りも持つのが感覚としてわかってくる。全部ごっちゃになって紫芽の香りとして存在していることではないかと思います。さらに香りを含め、味を含めて微弱な苦味が存在しているのが特徴です。そうした効果を頭の中に入れておく必要があります。「青芽」は紫芽よりも単純な香りで、青草の香りがきて、ダイコンの香り、ややホウレンソウの香りがきて、あとはマスタードの香りがある。強調された苦味成分を紫芽よりも強く感じる性質だと分析しています。

調香を考え、今回はロゼワインと日本酒を合わせています。「紫芽の場合」香りはふくよかで、複雑系の香りが伴い、苦味も弱いですから香りを優先したワインが合わせやすい。もしくは、提供する前にワインに合わせられるよう、スズキの洗いを作る時、このフレーバーを考える。紫芽をトッピングするだけで香りのふくよかさ、コンプレキシティがワインに合わせやすい料理へと引導してくれる。あとは、素材のポテンシャルによりますから、どのようなワインにするか、スズキの洗いなのでロゼの香り、赤めの香りに近いワインをチョイスしていくと自動的に合うだろうと判断できます。「青芽の場合」香りが微弱で単純で苦味成分が多いので、苦味成分を優先するお酒は日本酒になります。ハーブを変えるだけで飲み物の相性も様変わりするのも面白いことではないかなと思います。紫芽は酸化的な香り、広がりを持つ香りであり、青芽の苦味の内にこもったような香りから感じられる方向性にもっていく。当然、ワインは酸化して香りがどんどん広がるタイプの酒ですし、日本酒は発酵しているので還元的な香りが内にこもってきますから日本酒の方があわせやすい。青芽で食べられないかというと、そうでもなく、ハーブ系のものを足すと苦味成分が多いので、シャンパンとか合わせていき、それに青ジソの細かい葉っぱを足すといいのではないかと想像がつくかと思います。フレーバーを変更するだけで全く違うお酒を合わせられるのがフレーバーデッサン。香りのコントロールでは、いかに香り自体を科学的に考えられるかという能力が必要になってくるのではないかと思います。

調香のプロセスをまとめてみました。1.お客さまが選ばれたお酒の特性を理解する。もしくは料理を提案した時に、私たちの方から「こういうお酒を」と提案する。2.味と香りの共通点を見出してフレーバーを選ぶ。3.最終的においしいかどうか、その間に立っているユニゾン(つなぎ)を調整していく、微修正する。酸味が足りなければワインビネガーを米酢に対して控えるとか、シェリーに変えるとか、最後に微調整すると、飲み物で簡単に変更することができるのではないかと思います。

まず、ユニゾンとなる玉味噌を作ります。白味噌に卵黄を入れ、砂糖を入れます。ボールで練って火入れはゆっくり。徐々に伸ばして水を足して湯せんでゆっくり詰めていく。タンパク質の卵の凝固温度をゆっくり通したいので、初めの方は熱くても温度が上がってきた段階では100℃ではなく、できるだけ同じ温度、60℃~70℃を通過させる方が確実になめらかにできると思います。水を入れてゆっくりと蒸発させていく。あとは温度を上げても大丈夫なので火を入れて水分を飛ばしていく。長丁場の仕事なので、布巾をかけて湯せんにかける。練り上げたものがこのようになります。玉味噌のベースができ、これに対して規定量の酢を入れていく。ベースとしての玉味噌の状態にしておいて、その都度合わせていく。酸味の調整も、一旦沸かして酢を飛ばすこともできます。お客様に合わせ、どういう料理を作るかによって微調整していきます。

今日はスズキの洗いです(試食は湯引きです)。硬度150の氷水でスズキの身を洗います。ここで、水の計算‥‥軟水50mg/1ℓ。コントレックスは1500mg/1ℓ。硬度150度の洗い用の水150mg/1ℓ。実際のミネラルが含まれている量は50xと1500y。50x+1500y=150zなのでy=27分の2x。xが1ℓとすればyが74mℓ。それを調整してできあがったものがこれで、その水を冷凍庫に入れて氷結させて氷水が硬度150度に保たれたままの洗い水ができることになります。

スズキを厚めの活き切りにし、これを洗いにする。硬度200度を越えるとこの中に含まれるマグネシウム、カルシウム部分が表面にまとわりついて、イガイガした感じになります。軟水の方に振って100硬度以下になるとうま味成分が流出して水っぽくなります。泥臭いものは食べられませんし、鮮度がいいものはそのまま食べられる。硬度150度にすればベストな状態で、洗いに向く魚になります。盛りつけていただいて出来上がりです。単純な料理ですが、主体を明確にして、お客さんが飲まれるワインや日本酒に対して私たち料理人がどういう相性にしていくかが面白いことではないかと思います。ここでは、紫芽のほうにワイン、青芽のほうに日本酒を合わせて味わってみてください。

 お酒は、京都の伏見の東山酒造の「坤滴」、純米日本酒です。ワインは、チリワインのロゼです。それぞれ資料に目を通してください。冒頭に川崎先生からもワインは香りが大事だとお話がありましたが、日本酒でも同じす。ワインの色を見て香りを楽しんでいただいて、日本酒も香りについて楽しんでいただく。日本酒は温度の幅がありますから冷たくても飲めますし、温めても楽しめるという、ワインの世界からするとわからないものがあります。しかもアルコール成分がある。温度を上げると、また違ってくる。面白い飲み物だと思います。今日は、青芽の苦味のあるものを日本酒で楽しんでいただきます。また違う香りが味わいをつくる中で広がっていくと思います。ロゼワインのほうは香りの飲み物といわれるように、赤い果実をイメージするローズ系の香りです。香りが広がりますから紫芽のいい香りがして、それと合う。

高橋 酸味と渋みが結構ありますね。

 赤ワインまであと3歩のロゼワインです。酸味と渋めのバランスは紫芽の香りと味噌の香りにも合う。

高橋 酢味噌の加減、酢の香りで梅のような香りになっています。

 これはニューの分類ですね。青芽をワインをいただくと苦くなると思います。日本酒というのはほんとにありがたい。日本酒はうまい具合に苦味を後押しするよさがある。冷たいお酒ですが、ぬるくすると少し甘みが増してくるように思います。

高橋 ワインは面白くて、ソムリエを勉強して、できる限り一つのワインを分解して、これはこの香りがある、あの香りがあると分析してみるのですが。岡さん、顔でいうたら、いくつくらいありますか。

 ぼわっとした表現が多いですが、木の香り、ザクロの香り、鉱物質の香り、香辛料の香りとか。ジャンルに分けてそこから入っていく。果物は桃とかリンゴ、青リンゴ、赤リンゴ、黄色とか。トロピカルフルーツのマンゴー、パパイア、ライチとか、いろいろありますよ。

「鱸の洗い」

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