- 定期
![「料理と飲み物の相性」Program 2:料理と飲み物のマッチング(実演と講評)+試飲食[フランス料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927651/files/topics/662_ext_2_0.jpg)
「料理と飲み物の相性」Program 2:料理と飲み物のマッチング(実演と講評)+試飲食[フランス料理]
Program 2:料理と飲み物のマッチング(実演と講評)+試飲食[フランス料理]
講師紹介
関西食文化研究会コアメンバー
「淡路島産新玉葱の取合せ、するめとポテトのコロッケ」

器、ジュレ、パウダーと使い分けた、物質の三態のような玉葱料理。スルメを具材にイカスミをまぶしたコロッケ。中華の香りを抜いた特製XOジャンなどが盛り込まれた山口さんならではの料理です。これに岡さんが合わせた飲み物は、ベーシックなシャブリの辛口白ワイン(シャルドネ)でした。
今日は、苦味とかうま味も咀嚼の仕方によって変化するという状態に踏み込んでいます。コロッケはゴクンと飲み込まず、少し具材が残るようになっていますから、それを咀嚼していきますと口の中で違う味、香りが形成されます。その時、ファーストインプレッションの形で相性とはまた違うものが自分の中にできてくるのかなと思います。そのことを最初に話します。
コロッケの材料にスルメを用意しました。スルメを水に戻します。アルカリ性の水、5%の重曹を入れた水に戻してギリギリくらい。スルメがイカに戻ったのをカットします。これが今日のコロッケの具材です。もう一つ、自家製XO醤。ある中国料理人の方が「ルセットはフランス料理と同じ。材料が違うだけ」と話していましたが、帆立て貝柱は自家アレンジ、七味をピーマンに替えるなど中国のイメージがある香りを抜いていきますとフランス料理にも使える調味料ができます。(レシピを参照に)やっていただくとおいしいものができるので、試してみてください。XOはブランデーの名前ですから、フランス料理が中国料理から返してもらったようなものですけど。
コロッケを作る時、ホカホカ感を出したいので火を入れたジャガイモは熱いうちに作業しますが、今回のコロッケは逆に冷えてから、しっかり練っています。冷えている方がグルテンは出てきますので、グルテンを形成してクリームっぽく仕上げました。冷たいものを練っていき、生クリームとバターを温めて溶けたものをこの中に入れます。ほんの少しオリーブオイルを入れます。バターが入っているのでベシャメルソースのようになります。プルンプルンしています。この中にXO醤を入れます。イカになったスルメもこの中に入れます。食べると、ジャガイモがおなかに入っても少しうま味成分が残っています。咀嚼していただくとXO醤の中に出てきたスルメのうま味が口の中に出てきます。これを丸められるのは冷やしてグルテンを作っているからです。粉はイカスミを練り込んでいます。イカスミのうま味も多少感じてもらえるのかなと思います。これを揚げます。



本日の玉葱は北海道産です。繊維を崩さないといけないのですが、後の処理が大変なので90~100℃で植物繊維が崩れるような状態でコンベクションオーブンを使って火を入れます。お湯の中でやると玉葱のおいしいうま味が流れてしまうので、なるべく少ない水分で火を入れます。下に玉葱のジュース、上にピューレが残ります。このピューレにゼラチンを入れて固めたものを一つ召し上がっていただきます。上のピューレを紙に薄く伸ばし、60℃くらいのコンベクションオーブンで3時間かけて乾燥させてパウダー状にしています。焦げるまではいきませんが、メイラード反応が起こって茶色くなったもの、玉葱の苦味が形成されます。このピューレ、じつはこの状態で同じようにフライパンの中で焼いてもらうと、時間はかかりますが、同じようなピューレ状のグルテンができます。カリフラワーとかで作っていただき、茹で汁に戻すとカリフラワーのおいしいスープができます。また別に、玉葱の形を残すようにスライスして器としました。皆さんが知っている形と食感をもった玉葱に加え、先程のジュースにゼラチンを入れて固めたゼリー状のもの。もう一つ、油脂分として生クリームを加えたものを上から絞ることによって、一つの玉葱から、形の部分とジュースの部分ができる。あとはソース、ウニを添えます。海水を使います。ミキサーにかけて裏ごしをします。これを火にかけて加熱します。
今やフランス料理にも、肉と野菜の煮込み料理とか、シュークルートなどの昔からある家庭料理は影を薄めつつある。しかし、ワインという優れた香りを出すことができるものがあるわけで、いろんな香りが保持でき、それと料理を合わせると楽しくおいしいと思えるので、料理とワインのマリアージュが長く継承されていると思うのです。今のフランス料理は単調ではなく、食べることによって感じ方が違うとか、咀嚼の仕方によって味が変わるなど、時間の中で変化する。召し上がっていただく玉葱もそうです。口の中に入れると、淡雪のようにふわっと溶けてくる。固形のものは咀嚼して口の中に長く止まります。そういう部分とワインをどう合わせるかを、今日は体感していただこうと考えてきた訳です。相性ですから、他人がおいしいといっても、自分はおいしくないこともあるわけです。
では、何が大切か。相性のつなぎだと思うのです。料理でAとBの相性が悪くても、その中にある別ものを入れて仲立ちすると関係がよくなる。AさんとBさんは仲悪いけど、Cさんが入ると3人で仲良くなる、人間関係みたいな。そういうものが本当の相性だろうと思います。科学的な話を皆さんが理解する、デザインすることは大切ですが、でもファッションと同じで、同じレシピでも人によって違うものにできあがる。それをどういうふうに使えるか。それがレストランで僕たちが働いている職務やと思います。十人十色、いろんな思いがあってもいいのかなと考えながら料理をさせてもらっています。玉葱とジャガイモ、高価な食材ではありませんけど、お金をいただけるような料理にはなったかなと思いますが、いかがでしょうか。

岡 山口さんの料理に合わせたワインは、シャルドネです。香りも味も中庸で、フランクな感じです。これがベースです。今日は、料理とワインの相性を皆さんがご自分でチェックされるために選んでいます。シャルドネは熟成していない、そのものの香りをイメージしていただきやすいからです。味の変化がない前のもので、これをもとに山口さんの料理との相性を考えてみてください。料理人のイメージとお客さまの感じとは違う。料理人のイメージを、いかに察知してお客さまにお伝えするかが、我々ソムリエの仕事です。山口さんの料理には白ワインを合わせてみてくださいと、提案させていただく。今回の料理はシンプルで、玉葱の香り、ややもすると柑橘系のイメージを持つ方もあるかもしれません。しかも、ソースには海の雲丹。ここに赤ワインをもってくると繊細な料理をだめにしてしまう可能性があります。ただ、人それぞれ違う味覚を持っていて、好き嫌いがあります。一応、マジョリティから考えて、これは白ワインだということです。しかも、コロッケはコーティングされていて苦味がちょっとあります。苦味だと赤ワインだと思われますが、ポテトとイカですから、白の方がいいかなと思っています。皆さんは、皆さんのイメージで召し上がっていただければと思います。山口さんどうですか。
山口 う~ん、何が相性にいいのか、よくわかりませんね。
岡 川崎先生から6つのワードをいただきました。その中に「ニュー」がありますね。口の中に料理の味わいが残っている、これにワインを一つにする。ワインだけを飲んでいると酸っぱいのに料理を食べてワインを飲むと何か違う、甘いような感じがするなというのが、僕にとっては「ニュー」なんです。酸味だけを感じる、苦味だけを感じるとか、ワインの味を全然感じないというのは相性がよくないのではないかと思えます。玉葱にもっと合うワインもあると思います。今日は、あえて何が合うかを決めるのではなく、まずは相性を考える前段階として楽しんでいただきたいのです。会場に玉葱の料理に赤ワインがおいしいと思われる方いらっしゃいますか?(手を挙げる人もいました)
山口 僕らから提案するだけでなく、会場からの意見もちょうだいしながら、この会が発展したらいいなと思うのですけれど。
岡 赤ワインと合うという人もいらっしゃると思います。それぞれ考えも違うと思いますので。スルメイカのうま味と赤ワインで楽しまれる方もあるでしょう。赤ワインが好きなのです、そういう人たちは。相性はどうでもいいのです。皆さん、これだという感覚で飲むと食卓が楽しくなると思います。
山口 科学的に話をしていくと、腑に落ちるということはありませんか。若い人を育てよう「こうやからこうやねん」と言っても反発されるだけ。そこにサイエンスがあると、話もしやすくなるし、理解もしてくれる。関西食文化研究会はそういうものなのかな、と思うのです。何か疑問なこととか、ワインはこう思っているとか、ネットでもやりとりできたらいいのですが。

