- 定期
![「料理と飲み物の相性 Part3」Program 1:プレゼンテーション+試飲食 [フランス料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927651/files/topics/672_ext_2_0.jpg)
「料理と飲み物の相性 Part3」Program 1:プレゼンテーション+試飲食 [フランス料理]
Program 1:プレゼンテーション+試飲食 [フランス料理]
講師紹介
+
「若鶏モモ肉の詰め物、マルサラソース」
「ジンジャーエールとリンゴのすりおろし」

近藤 レシピをいただきまして何を基準に合わせたらいいのかを考えました。まず思ったのは、料理の色。茶色ですね。ソースのマルサラソースも、鶏もローストして煮込んでいます。茶色のドリンクは何か。ウーロン茶、コーラ、ジンジャーエールですね。次に、料理にさっぱりと合わすことができないか。シュワシュワ感がないのでウーロン茶が消えました。コーラは甘いので外しました。それで、ジンジャーエールなのですが、甘味が気になる。調整してここは辛口のジンジャーエールを合わせようと思いました。マルサラソースを煮詰めていくと味わいが出ます。酸の部分と相乗させるためには何か。リンゴを合わせたらどうか。ソースにはフォアグラも入っている。もう少し甘味がほしいので、メープルシロップを少し入れております。そうすることによって相乗するのではないかと思っています。
事前の打ち合わせに、リンゴを手ですりおろして持って行ったのですが、山口シェフから「だらだら感がある」と指摘されまして。今日は、フードプロセッサーでリンゴを潰し、メープルシロップを入れ、ジンジャーエールのカクテルで割るという手順でご用意させていただきました。甘い感じと酸のバランスと料理が合っているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
山口 今日の料理は古典的というか、皆さんも召し上がったことがあるかもわかりません。材料は若鶏のモモ肉。皮目を少し肉のところに多くつけてもらうさばき方を注文しています。詰め物をする時に接着剤の役割をするのはコンスターチと卵白です。合挽きミンチを用意して、ハンバーグと同じで卵、パン粉、牛乳で濃度調整する。ファルスとして使うのでロースハムの細切り、マッシュルームの薄切り、色合いにピスタチオ。以上がメインの材料です。ここにソースを作るためにマルサラ酒とフォンドヴォーを用意しました。マルサラ酒は料理用にリーズナブルでもいいと思います。ソースを作るのに野菜を炒めます。オイルはバターでもオリーブオイルでも結構。今日はサラダオイルです。野菜を炒める時、ほんの少し塩をします。味付けではありません。塩のもつ脱水効果で炒めが早くなる。「塩で火を入れる」とフランスではいいます。少し甘味を出すように炒めていきます。ハムとマッシュルームはソテーして冷ましたものを使います。鶏のモモ肉は、背中に脂がのっているので削ぐようして取ると後の作業がつけやすいです。内側の包丁が入ってない状態のところにミンチが入ります。皮の中に詰め込む形にします。少し長細く作ってみました。皮に焼き色を、しっかり色付けをしたいので、あえてテフロンのフライパンを使います。



今日の料理はフランス料理らしい懐かしい味やと感じられると思います。相性の話にしても「僕たちが求めている料理は何だろう」と考えながら、関西食文化研究会で勉強させてもらったことを自分の料理にあてはめながらしていくと、僕の中では仮説が出来上がりました。その仮説の中で今日の料理を選んだのですけど、それは何か。この研究会で川崎先生に教えていただいた、味覚センサーと香りセンサーの差とか。視覚のほうが情報量が多いとか。科学的に考える一方、食は口の中に入れてという保守的なことをする。料理人は保守的なことに携わっている。その中で、相性とか味覚を考えながらおいしさを表現するんですが、僕たちが料理を作る対象は、不特定多数。お客さんがどういう方かわからない時、フランス料理を作る基本はどうしてきたか。3つの要素の掛け合わせなんですね。今日は3つの要素がこの中に完全に入っています。何かわかりますか。タンパク質と脂質と糖質です。肉のタンパク質とフォアグラの脂質とマルサラソースの混ぜこんだ甘いもので食べる。それで、満足感をなぜ感じるか。栄養のあるものを食べると命も守れる。次の世代へと守れていいとされる。それが基本的なおいしさと考えています。今日の料理に入っているタンパク質と脂質と糖質。近藤さんの提案は、それらを強化するのか、逆に切っていくのか、合わせていくのかと考えてみる。皆さんもそういうことを考えながら召し上がられると食に対する理解が深まっていくのではないかと思います。
焼き色をつけて炒めています。メイラード反応です。香ばしい色がなぜ好きなのか。仮説ですけど、熱によって細菌とか死滅する可能性がある。安全性が高くなる。メイラード反応は命のリスクを防ぐから、昔から好まれているのでほぼ間違いないだろう。命を守るため、食べた時、先祖からいただいているおいしさの方程式をつくる。飽食の時代、栄養をとっておいしいものを食べるのは果たして21世紀のガストロノミーなのかというと、ちょっと違うかも。あえてメイラード反応で甘辛さや脂質とかを排除していくことも一つの考え方かなと思って料理を作ることもあります。今日は先祖からいただいたおいしさの方程式を駆使していただくと、おいしいかどうかわかると思います。焼き色をつけたものの中にマルサラソースを足してアルコールを飛ばします。フランス料理でアルコールを使う場合は煮詰めていって、ほぼ水分がなくなった状態にして、違う液体を入れて元に戻す。それを繰り返すことでソースを作っていくわけですが、火を入れてアルコール分が飛んでいる状態です。これでほぼ水分がないくらいまで煮詰めていってフォンドヴォーを入れて煮込んだもの。これで出来上がりました。これを漉して切って、ソースも煮詰めて。フォアグラで高級になります。盛り付けます。

近藤 マルサラ酒を煮詰めた時の甘味とフォンドヴォーの何ともいえないえぐみ、リンゴの甘味、メープルシロップの甘味もあります。ジンジャーエールの生姜の辛味がさっぱり感を与えてくれるので口が洗われるような感じがあると思うのですが、いかがでしょうか。
(会場から、ジンジャエールのさっぱり感がありました、との声)
山口 僕たちも料理を作る時、相性をどう合わせていくかを無意識のうちに考えていますが、方程式はいろいろあると思います。近藤さんが提案されたものを味見させてもらいましたが、肯定的なものに関しては「ニュー」かなとか、料理だけでは表すことができないものがソフトドリンクの中にはある。生姜、メープルとか、香りの部分ですね。古典的な料理には口の中で弾ける香りがありませんので。煮込んで煮込んで、そこからできるおいしさを味わってもらっているわけですけど、ここに何か新しい感動、リズムをつけるならばドリンク。通常はアルコールですが、ソフトドリンクでも、揮発性のあるものは料理の中に入れ込めないので。そういうものがたくさん入っていればいいのではなく、入りすぎるとぼやけてしまうので何かピリッとしたものがあればいいかなと。ジンジャーエールを使って、料理を切っていく、後味をスッとして、また食べる。ボリューム的に延々と食べ続けるのは昔の人はよかったが、今の人はしんどい。ここでドリンクが出てくることで古典料理が現代のお客様にマッチするものに生まれ変わるのかなと。そんなことができれば、料理人とソムリエとのコラボレーションがしっかりできるのではないか。初めてのソフトドリンクとの合わせ方なので完成されたものではないと思っています。これも一つの新しい試みなのです。相性については、コアメンバーで話をしていて、皆さんといっしょにやっていければいいと。壇上で料理や講義をするだけではなく、皆さんから提案があって、この研究会が広がっていけばいいなということが大前提にありましたので。否定的なご意見も矢の如くいただきたいと思います。

山根 フランス料理の組み合わせはよくできていると思いますが、今日の飲み物に二つ疑問があります。一つは、なぜリンゴをザラザラのまま入れるのか。滑りとか漉してもよかったのかなと。もう一つは、確かにジンジャーエールの生姜の感じも鶏によく合う。飲み物にハーブを入れるとか刺激ではないですが、料理に入れてもいい。生姜をきかせても料理に合う。そうなれば、その要素を飲み物から省くことになる。突き詰めていくとソースのようになる。マルサラソースの甘さがあるから、甘さを合わせていかなくてもいいのではないか。
近藤 もちろん、そういう方法もあると思います。合わせる部分については、添わせる、ぶつける、という合わせ方もあります。料理の作り方、材料を見て、パート分けをして、この部分も合うなと加えたものもあるので、この料理とマッチしているとは思いますが、他の料理には別のものになります。リンゴのザラザラ感は、手でおろした時はもっとザラザラしていたんですけど、クリアな方がいいならジュースでいった方がよかったかもしれません。飲み物の中に面白さも入れたいと思うので、食感、口のタッチとして残したかったのです。
川崎 クリアにすることもあるんですけど、「ウォッシュ」の分類でみれば、アルコールがあれば油脂も除去しやすいんですが、水系だとウォッシュ力が弱くなります。炭酸もある程度ウォッシュ力があるのですが。フードプロセッサーだとリンゴの繊維が残るんです。その繊維でウォッシュされているような気がします。水のウォッシュ力の不足をある程度補っているように思います。それと、茶色で合わされていますね。加熱によってできたメイラード反応の茶色とジンジャーエールの茶色とは色素が違う。しかし、最後にメープルシロップといわれたので、よかったなと。というのは、メープルシロップにはメイラード反応の香り成分が入っています。料理と共通の香りが入っていることになる。メイラード反応がしっかり起こったソースと「シェア」している。つまり、味は切っているが、香りは続いている。味はジンジャーエールと炭酸で切るんだけど、香りはマルサラソースとジュースで続いている。よりリズムの違うものができたと思います。

