• 定期
「料理と飲み物の相性 Part3」Program 3:ディスカッション [討議]

「料理と飲み物の相性 Part3」Program 3:ディスカッション [討議]

Program 3:ディスカッション [討議]

講師紹介

門上 いろんな考え方やキーワードが出てきました。料理とソフトドリンク、それぞれに新しい出会いが生まれる可能性がある。アルコールを宗教上の理由で飲めない方、アルコールに弱い方とかに向けて、レストランでもそこまでやられるのかという世界ができています。単にお茶で流すのではなく、お茶を抽出したり、新たなものを工夫したり、どういうグラスが影響するかまで含めてやっておられるところがある。今日のソフトドリンクの提案は皆さんのアイディアを増やしたのではないかと思います。まずは、岡さんからお願いします。

 今日のソムリエたちは、かなり悩んだ数週間だったと思います。香りを重視していくか。基本は「ウォッシュ」、洗い流すことからスタートしたのではないか。などと、香りと味、新しい味を考えた提案をしてもらいました。
近藤さんのリンゴも面白い。リンゴを使って料理とは全然違う香りを複雑に合わせ、新しいものになったのではないかと思います。植田さんは「ウォッシュ」ですね。控えめな香り、今日はそれに少しインパクトも伝えて。「ウォッシュ」だけではなく「ニュー」もあるのかなと。「渋み」とかの味わい、第三の味わいが出てくるかなと感じられました。樋口さんも「ウォッシュ」ですが、少し「ドミナント」というか、お料理がおいしくて強かったという面もあります。それに合わせると飲み物が、少し樋口さんらしくない控えめな感じでした。
今日はノンアルコールがテーマ。車を運転するならアルコールは出せないとか飲食店には厳しい世の中になっていますが、新しい飲み物を考えて、ひと手間加えてというテーマを与えていただいたと思います。

山口 相性の基本は嗜好ですので、いろいろ好き嫌いがあると思いますが、最後に提案されたドリンクのカルピス。乳酸だけど、それよりも小さい時のカルピスを飲んだ思い出の味が出てきてしまって、相性というとこになかなかもっていきにくい。経験というか「記憶」というのは、相性の要素の分類の基本のところとは違う要素になってしまうので評価しにくいというか。その経験が大きいので「ドミナント」になってしまうという印象でした。僕らが料理をする時も既製品は使えない。自分で作ることで、強いてそういうものを排除しているのかなと思いましたね。

吉岡 川崎先生の話を聴きながら、あまり邪魔にならないでお互いが寄り添っていけるような関係を思っていました。水出し煎茶の渋味から苦味と柔らかな酸味を内包したソースとの相性のよさを感じました。甘味というのは私の中では「寛容」につながっているのですね。その他、苦味は「気品・品格」に、酸味は「収斂」、塩は「純粋」という印象が頭の中にあって。作家が浮かんできたり。「苦味と酸味」には、開高健さんの毒っぽいが選りすぐられ研ぎ澄まされた文章が蘇ってきたり。そういうことがあって、経験や記憶は、インパクトが強くて面白いなと思いました。

門上 開高健さんとか、カルピスの思い出とか、人それぞれの記憶という問題が出てきたように思うのですが、川崎先生いかがでしょうか。

川崎 思い出というのは強い「ドミナント」で、それに引っ張られるところがありますね。ドミナントは心理学の考え方で、自分の心の中に何が占めているかということですから。上海に仕事で行き、北京ダックの店で思ったことがあります。甜麺醤(テンメンジャン)は中国では小麦から発酵させますね。小麦を発酵させると酸が出てくる。テンメンジャンで重要なのはちょっとした酸味なのかなと思って。そういう独特の発酵された酸味が合鴨の脂っぽさと交わっているのが甘辛い料理の特徴だなと感じたのです。今回の吉岡先生のソースはいろんなものをちょっとずつ入れてあって、全体として丸くなっていて北京ダックのタレとは違うし、全体としておいしい。料理としておいしい状態で、飲み物と合わせづらいのかも知れません。こうなると「シェア」くらいしかない。小麦の発酵とか、ちょっとした発酵の酸、香りがあったので、カルピスというか発酵乳を考えた時、発酵乳の香りとシェアしていて、まさに「寄り添っている」という表現がぴったりだと思います。濃度の問題を解決さえすれば、良い相性だったかもしれない。中国料理は発酵調味料が多いですし、中国料理はお茶と合わせるとか、あまり考えない。でも相性を考えるなら、発酵乳はよかったと思います。

山根 濃度が重要な気がしました。お茶もそうですが、水に近いので、どうしても「ウォッシュ」になってしまい、プラスαに結びついていかない。料理の濃度、ソースの濃度からかけ離れていく。差が大きくなる。もっと料理にピンポイントして、この料理にしか合わない飲み物を考えたらもっと広がるなと感じました。そうすると、ソースの一部を分けて出しているようなことになってしまう。吉岡さんがスープを出されましたが、「あれを飲み物と考えたらいいやん」とか。でも、それではない。韓国料理では水キムチの汁を調味料に使いますが、飲み物と考えて口に含んで食べたらどうか。それを飲めるような状態にして。ハーブをきかせて酸味をきかせて。今回求めているのは、そういう合わせ方なのかどうか、まだ理解できてない部分があって。単純に合わせるとなったら、濃度というのは結構、重要だなと思いました。

川崎 完成度の問題かなと思います。ドリンクはドリンクで飲んでおいしい。料理は料理で当然おいしい。それを合わせて順番に食べることによって互いをもっと食べたいというような関係になること。ソースはソースだけでなめるものではありませんから、ドリンクを外部化されたソースと考えてしまうと、ドリンクとしての完成度が低くなってしまうのではないか。そういうふうにドリンクはドリンクで完成度を高めるということが重要なのだと思います。

樋口 濃度はそのとおりだと思います。今回の提案したドリンクでは、氷が入っているものだったら、カルピスをちょっと垂らしてゆっくりと溶けていくという効果が狙いで、記憶はそんなに支配しないと思っていたので。今回は味中心で「シェア」ではなかった。今回はドリンクの香りと料理の香りを合わせるというのは少なかったような気がします。

門上 料理を作る側にも、こういう時代なので新しいチャンレンジができるという思いがあってのワークショップです。完成度は大事ですね。今日は試金石で、ここからまた何かと結びついてゆく。その意味では、相性のテーマは難しいですね。3回やって「こういうふうにしたい」と提案するには、まだ距離があるような気がしますが。

川崎 研究会ですから、提案の最初だと思います。3回も今まで考えたこともない考え方で考えてくれはったと思うので、これをもとにこれから料理もドリンクもどんどん完成度を高められると思います。ドリンクは完成度が高まったら、飲料メーカーから注文がきたりするかもわかりません。

門上 会場の会員の方にも感想や意見をうかがいましょう。

会員 相性は大事だと思います。今回のカルピスの話ですが、違う利用法があります。ラーメン店の人たちが集まった時に出た話ですが、汗だくになって自分の味覚をリバースする時、ちょっと薄めたカルピスを飲んで口の中を洗うと次にもう一回、味を感じやすいという。そういう利用法があります。もう一つは中華料理店で山椒を使った麻婆豆腐です。最初から山椒が入ったものを食べると、塩分の低いものは高く、高いものはより高く感じる現象が起こる。お客さんに早い時点で山椒を出したために、お客さんの味覚を元に戻すような飲み物はないか。それと、大衆中華料理店などではソフトドリンクはお金をいただきにくいのですが、お金をとれるソフトドリンクはあるんでしょうか。などということを思って今日の話を聴いていました。

川崎 花椒(中国山椒)の場合、塩を強く感じさせるというのは学会でも報告されています。原因はわかっていません。では、どうやって洗うか。アルコールか脂しかありません。それを何らかの形で味わってもらうためにどうすればいいか。確実なのはサラダオイルを食べさせること。それは難しいので、牛乳、飲むヨーグルト、ラッシーとかになる。甘味も効果はあるんですが、感じ方を抑えるだけで本質的ではない。物質を除去しないからです。物理的に確実に除去することが大事です。物質を洗い流すためにはアルコールと油脂しかない。チョコレートのような固定の油脂とかでも有効です。

会員 乳製品、チョコレートコーヒーとかアーモンドとか。今、実践しています。

山口 山椒は他の味を敏感に感じさせる、という力もありますよね。

川崎 アメリカの料理学校に、山椒を使って減塩の料理に利用されている中国料理の先生がいます。

門上 相性を3回やりましたが、このテーマはこれで一旦終了したいと思います。アプローチはまだまだありますが、川崎先生に分類とかルールなどの考え方の整理をしていただきました。会員の皆さんには、この研究会での成果をいろいろ活用していただきたいと思います。また、皆さんからご意見をいただいて次のテーマにつなげていきたい。皆でつくりあげていくことを考えていきたいなと。新たなチャレンジを続けていきたいと思います。本日は、3人の料理人とソムリエの皆さん、川崎先生、岡さん、ありがとうございました。

他にもこんな記事が読まれています