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![「料理と温度の関係」Program 2:温度をテーマにした料理実演と講評+試食 [日本料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927651/files/topics/680_ext_2_0.jpg)
「料理と温度の関係」Program 2:温度をテーマにした料理実演と講評+試食 [日本料理]
Program 2:温度をテーマにした料理実演と講評+試食 [日本料理]
講師紹介
「七夕寄せ」

調理した材料を特製のだしなどで冷やし固めた“寄せ物”に、これまで中村さんが探って得られたいくつもの成果を惜しみなく凝縮させた、贅沢な一品です。ホタテ、エビ、タコ、椎茸、長芋、アスパラガス、ナンキンなど、それらの一つひとつに異なる最適温度でどのように調理すればよりおいしい料理になるか披露していただきました。
私の場合、温度を気にして作る料理は茶碗蒸しくらいでした。それも温度計を使うのではなく感覚です。蒸し器の中で蒸気を蒸らしながら温めていく。それが温度を気にして作っていた料理です。余熱で火を通したりして微妙な温度を調節していました。しかしここ10数年、日本料理も大きく変わってきて、覚えることも勉強することも多くなり、川崎先生のお話を聞いていますと、料理しているのか勉強しているのかわからないような時代になってきました。自分の料理を見失わず、自分の料理を作っていきたいなと思っています。
私が料理の温度に興味をもったのは12年前。日本料理アカデミーができましてワークショップでリヨンへ行き、向こうのシェフたちと交流したときです。強烈に不思議だったのが、あるシェフが52℃で50分、ヒラメを冷凍からほどけてよくない状態のものを日本料理式に揚げたり、蒸したりすると臭くて食えないんですね。別のシェフが52℃で50分、火入れしたものを出してきました。見た時の感覚では「ものを腐させているやないか」といった代物です。一番菌が出る温度ですから、魚を悪くしているだけの、考えられない料理でした。しかし実際は、手にすると柔らかい。ヒラメの繊維を感じない。かつ、香味成分が出ないのでいやな匂いがしない。日本料理の方法で作ると臭いし、繊維が完全にできて硬い。そこで魚を表現するのをいろいろ工夫していたことを覚えています。それから「温度」に興味をもち、自分なりにどういうふうにしたらいいかを勉強しまして、川崎先生のお話ともリンクしますが、55~75℃の間でいろんなことが起こっているなと気づきました。

葉ワサビは春先に売り出され、瓶に入れて振って蓋を開けるとパッと香りが立つ。ワサビのおいしいお浸しができる。しかし、百発百中でワサビのいい香りを出すことができませんでした。香りが全然しないときもあった。なぜか。ワサビの酵素の活性温度を知らずにやっていたからです。そういうことが一つずつ、温度帯の中でいろんなことが起こっていることがわかった。今日はその一部を話したいと思います。
「七夕寄せ」です。まず、ソースを作ります。全部合わせます。合わせ地、ゼラチン液にいろんなものを入れて茶巾で絞って固めます。だしと酒とみりんの割合はレシピを参照してください。次にタコとホタテ貝柱を真空パックにして火入れします。つけ液に昆布を入れて酒を入れ、塩少々で味つけします。酒200cc、昆布10g、アルコールを飛ばして薄く塩をします。
ホタテ貝柱は2%の塩水で洗ってください。ザルにあげて真空パックで57℃で10分加熱。60℃以下の温度だとスチコンはグレーが激しい。温度をよく見ないといけません。57℃で10分間です。硬くなる手前、脱水する手前、ちょっと過ぎると貝柱が濁ってきます。濁るか濁らない間の温度です。これを貝柱でやると、いい感じでした。そういうことを自分で見つけるとうれしい。仕事が楽です。ぜひ、ご自分でやってみてください。
エビは頭と背ワタを取って熱湯で色出しをします。低い温度だと色が出ません。たっぷりの熱湯に浸けないと温度が下がって発色が悪い。大量の水にエビを入れる感覚で、サッと5~10秒で色出しをして、中まで火が入らないようにします。これを90℃で、表10分、裏10分で計20分のスチーム。エビは身が硬くなるので90℃にすると柔らかくなるし、灰汁が出ない。そのギリギリの温度だと思います。いろんな経験から見つけました。90℃で10分を上下。エビはサッと茹でる時、串を打っておくと生きたエビが縮んでも丸くなるという工夫もしながら火入れをしています。
タコは塩と少々の糠でぬめりを取り、一本ずつ切り離します。必ず生きているタコを使います。熱湯で色出しと殺菌を兼ねてます。1本ずつ、あまり温度が下がらないように色出しして熱湯に浸けて表面の菌を殺菌します。表面が赤くなると色出しは仕上げ。冷水に落として中まで温度がいかないようにします。これをザルで水気を切り、スチームコンベクションに57℃で20分間。昆布と酒の地をいっしょに入れて。うまくいくと太いタコ、2.5kgくらいですが、1cm幅で切っても噛めるくらい。切った断面は半透明で向こうが透けているような感じで、筋肉がキュッと締まって噛み応えがあるけど、柔らかいのです。



先の合わせ地に浸けて椎茸を戻します。これは冷蔵庫5℃で5時間かけて戻す。5時間を超えるとグアニル酸が増えます。そうしておいてから椎茸だけ取り出して軸を取り除きます。残った合わせ地は40~60℃を一気に通過させて70℃にする。そこに椎茸を戻し入れて70℃で20~30分、するとグアニル酸が最大量出てきます。うまくいくと強烈な香りがします。それに気づく前はうまく戻らないときは椎茸のせいにしていました。温度を自分で工夫して、川崎先生に聞いたり、ある論文を参考にしたりでした。40~60℃で一気に通過するとグアニル酸を破壊する酵素が活性化する。70℃になるとグアニル酸を生成する酵素がたくさん働くのです。その間をキープします。そして、合わせ地を沸騰させて灰汁を取って溶液を作ります。
長芋の生は割れやすい、欠けやすいのでロスが大きい。皮つきにするとロスなく、きれいに切れます。皮つきのまま73℃で20分間、スチームにかける。野菜は一般的には湯がくと柔らかくなりますが、柔らかくなる前に硬くなる。セルロースとかペプチンが硬化している状態です。昔は余熱で調理しましたが、スチコンで温度を見つけたおかげで仕事も楽になりました。73℃で20分やってみると食感の違う長芋ができます。
アスパラは硬いところを取り、熱湯に重曹で色出しします。粗塩でもいいですが、粗塩だと1ℓに20g入れないと色が定着しない。重曹を入れて色出しをすると色落ちが少ない。重曹を少し入れ、中に火が通らないように表面だけ色出しをするイメージで湯がきます。冷水にすぐ入れて色止めをして70℃で10分のスチーム。ペプチンの効果だと思います。パリパリしたアスパラです。
ナンキンは皮を剥き、130℃の油で1時間~1時間半のコンフィ。水分が抜けて身のしまったナンキンになって口あたりがクリーミーです。油脂も加わり、おいしさも出ます。
下処理が終わり、椎茸の残りの地は100ccに対してゼラチン3.5gで液をつけます。ホタテはバーナーで焼きます。半生のものは香りがしない。ホタテもそのままだと食感もいい、味もいいが、磯の香り、サザエの壺焼きのような香りがしない。それがほしいので、普段からあえていろんな温度帯で感じられるホタテを表現して、いろんな味で食べてもらえるようにしています。
一応、七夕なので7種類の食材を入れています。それに赤、緑、黒、白、黄色の5色の短冊にして。ウニをサービスで入れました。寄せの料理は便利で、旬も大切に、食感が違うものを入れて、見た目もきれいで楽しい料理になります。盛り付けは、ソースを下に敷いて熱湯に入れて軽く表面を熱い湯に浸して香り付けに上からユズを振ります。これででき上がりです。いろんな温度を意識してパーツをどのようにして表現するか、ゼリーで固めていろんな温度による食感、香りの違いを一つの料理でわかるように仕立ててみました。

