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![「料理と温度の関係 Part3」Program 1:プレゼンテーション+試食 [日本料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927651/files/topics/693_ext_2_0.jpg)
「料理と温度の関係 Part3」Program 1:プレゼンテーション+試食 [日本料理]
Program 1:プレゼンテーション+試食 [日本料理]
講師紹介
「飯蛸旨煮ジュレ添え」

今日は先に試食していただきます。先入観なしに、とりあえず食べみてください。また、先にプロモーションビデオを観ていただきます。
蛸は、表面だけ炙って、さっとくぐらせます。形をきれいにつくれます。酸素をほとんど抜くと直接火入れができるのです。均等に火が入る感じで処理しています。温度は芯温71℃にしています。70℃だとねっとりした感じが出にくい。72℃は凝固しきってしまいます。71℃でいい状態に仕上がります。この温度を得る前は何回も試しました。ピンポイントに温度を狙うと、どんな状態になるか。ゆるい感じなのか、カチカチなのか、その間はどんな状態なのか。もちっゃとした食感で仕上がる、これがオリジナルです。火入れして、この食感になるものをピンポイントで狙ってつくります。
蛸の頭はたくさん頬張ってもらった方が味を感じやすいと思うんですが、足はさっとくぐらせたくらいで生の状態で仕上げています。ビデオで見てもらいましたが、生でも見ていただきます。活け締めと野締めでは火の入る状態が違うので、71℃の温度帯は活け締めにしか適応しません。野締めだと、もうちょっと長い時間かけてやった方が、こういう状態になりやすい。野締めするとアンモニア臭がきついので、あたりも味も、ちょっと濃く仕上げたりします。足はぬめりをとっていきます。頭の部分は1回、全部ぐるっと剥いて取り出します。中の余分な臓器を全部とってしまって戻していきます。中身が出ないように楊枝で止めます。ここまでが蛸の下処理です。
だしの各分量はレシピをご参照ください。一回沸かします。沸いたところに、低温で火を入れていくので表面、皮の部分だけ火を通すような感じで、10秒くらいさっと入れます。まだ動いていますね。ここからだしのあたりを入れていきます。塩を一回振っているのでだしに不純物が出るので漉します。ここからだしを二つに分けます。足を煮浸しにするだしと頭部を低温でサーキュレーターに入れるもの。頭は真空にかけるのでギンギンに冷しておきます。足は常温くらい。冷しすぎたところに足を入れるとびっくりして締まってしまうので、常温で止めておきます。
だしは、通常、昆布だしをとる時1回低温で火入れして、うま味を引っ張り出し、火をあげて鰹節を入れて漉して、あたりをとる時にまた火を入れてというふうにします。僕は、加熱する回数が多いと、だしの酸味が気になるのです。それを解消するために、1回だけ水出ししてみようと考えまして、うちは減圧加熱調理器ガストロバックを使っています。減圧浸透することは、抽出もできると捉えてます。昆布は利尻の最低3年、できれば5年、7年ものを使いますが、真ん中のいいところを間引いて使っています。昆布は場所によって出方が違うので、毎回だしのとれ方が違う。それを味がより均等になるように、間引いて中心部分だけでだしをとっていきます。昆布をガストロバックに入れます。この状態で30分。昆布を一晩する以上にだしを引っ張れます。昆布を取り出し、だしだけ1回沸かして急冷。その昆布だしに鰹節を入れます。鰹節は雄節と雌節を6対4、0.01mmの薄さに削ってもらい、ぺらぺらの状態で水出ししやすいようしています。常温で2時間~2時間半でだしを漉します。1回の加熱だけでだしを引いていきます。この状態で30分たった後の昆布だし、これをベースに営業仕込みで使っていくようにしています。
先程の蛸は、真空にかけるので冷やしています。空気が入らないように99.9%の真空をかけます。頭のサイズによっても火入れの時間は変わってきますが、芯温で71℃±0.5℃ずつくらいで、いい状態になると思います。このまま水温制御の調理器具サーキュレーターで60~80分くらい火を入れ、その後、スイッチを切って20分ほど分水と離水が始まる前に止めます。そのまま急冷する。だしは常温のまま、1日から2日くらい漬け込み保管します。
次にジュレ。あたりをとって残っただしを沸かし、最後は顆粒ゼラチンでジュレをつくります。顆粒のジュレは溶解温度が60℃くらい。優れもので店でも多用しています。1回、ガーゼでスポンと漉して冷ましてでき上がり。裏漉ししたり、混ぜるよりも、きめ細かいものができる感じです。



質問 ガストロバックで昆布だしをとる時に雑味とかは出ませんか。
植村 これに関しては裏付けをとっているところでして、ミツカンさんに頼んでデータをとってもらっています。一般的な方法で引いただしのデータ、文献のデータ、ガストロバックでとった1週間分ずつのデータで比較しています。注目しているのが乳酸とグルタミン酸で、味を強く感じるのはうちのダシですが、雑味もアクも感じている。ガストロバックでとっているものは一般的なダシとの間くらい。数値はばらばらですが、トータル的にミドルフラットなものがとれている。酸やえぐみを感じるのは火入れによるもので酸化促進されているから。それを極力避けたいと考えて、こういうつくり方をしています。ただ感覚的には、香りがぶわっとくるのではなく、口に含んだ時に口の中で広がるという感じですかね。これからももっと勉強していきたいと思っています。
質問 鰹節は昆布だしに入れて漉してから火入れするんですか。鰹節といっしょの状態では火を入れないのは理由があるのですか。温度を上げた昆布だしに鰹節を入れて、火を入れて沈ませるのが一般的なやり方だと思うのですが。
植村 ヒントは、紅茶や緑茶の最上クラスは水で出すことです。その感覚もあるんですが、火をかけることによっていろんな成分が損なわれるのと、だしを引いた時間によって使う時に状態が違ってくる。そのストレスも避けたかったのです。その都度引いたらいいのですが、実際は引き直しする人間がいない。どうにかしようという感覚で仕事しいていると、ストレスになる。「じゃ、フラットな状態が極力変わらないものにしよう」と。楽するわけではなく、フラットにするにはどうするか。水出しだと12時間は状態が変わらないのです。誰が引いてもいいとなれば、ストレスがなくなった。後は味の濃度です。加熱する時、鰹節を厚削りにして表面だけのうまみをとるよりも、極薄にして表面面積を大きくした状態で水出しするようにしました。最薄0.01mmの削り鰹にしているのはそういう理由です。加熱していないので酸化が一切ない。酸の勉強もまだまだ、「おいしいとは何か」ということをもっと突き詰めていきたいと思っています。
質問 ガストロバックは昆布だけですよね。鰹節には使ってみないんですか。
植村 まだ試していないです。それをすると、えぐみとか生臭さが出るのではないかと考えています。昆布だしも、ものによって、時期によって、ガストロバックの後、生臭みを抜くために一回火入れしたりする時もあります。急冷をかけて状態を保つことも行います。TPOでガストロバックで引いた昆布だしの味をみてから決めています。
質問 鰹節を0.01mmに削るのは特別な機械を使っているのですか。
植村 その機械を世界で1台だけもっている業者さんがおられるのです。バーッと削るのではなく、ゆっくりしたスピードで、カンナで削るように機械でやってもらっています。

