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料理の発想ワークショップ -天ぷらから発想する「衣と揚げる」の再構築-Program 1:プレゼンテーション+試食 [イタリア料理] 2/2

料理の発想ワークショップ -天ぷらから発想する「衣と揚げる」の再構築-Program 1:プレゼンテーション+試食 [イタリア料理] 2/2

Program 1:プレゼンテーション+試食 [イタリア料理] 2/2

講師紹介

坂本 健氏
「cenci(チェンチ)」オーナーシェフ
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「仔牛と玉ねぎ」

門上 お疲れ様でした。坂本さんも初めての出演でしたが、いかがでしたか。

坂本 僕は、揚げて塩でポンと出すのとはちょっと違うと思ったんです。揚げる方法が現場で揚げ物としてではなく、料理、調理方法のひとつとして使えるというところで何かもってきたいなと思って、今回、皿としてこういう表現をとりました。

門上 坂本さんは、揚げる方法をイタリア料理の中でどう取り入れるかを考えていこうというアプローチだったんですね。

坂本 そうですね。僕のイメージが合っているかわからないですけど、よく根菜とか天ぷらで10分とか20分かけて揚げるのもあるように、熱を均一にギュッと中に向けていける揚げる方法は、上手に使えるやろなと思いました。こういう水分の多いものに天ぷら粉では不向きで、パン粉とか、ちょっと厚みのある衣でやると付着させるにはすごくいいと思ったんです。中国料理の油通しとかって、川崎さんの記事を読んでもそうですけど、炒めものとは全く別のものが出来上がる。熱源が何かによって仕上がりがいろいろ変わるのも面白いところなので、そこを掘り下げれば掘り下げるほど、またいろいろ揚げる面白みが見つかるのかなと思います。

門上 始まりはフリットがあるという話が、途中から変わっていく今の思考プロセスは、坂本さんの説明を聞いたら「あ、そういうことなんや」って思えるんですけど、他にも何か考えられたんですか。

坂本 揚げるパン粉のおいしさを料理に表現するとかもあって、店でやるのはマグロ料理です。マグロの赤身に最後にパン粉をまぶしつける。それに関しては、揚げるというよりはパン粉のおいしさになるんですけど、ただ表面のクリスピーなところと中のレアなギャップはすごく喜ばれる。そこは今回のテーマ「揚げるの再構築」とは違うと思い、それで今回のにしたんです。

門上 火入れが別の方法で出来て、衣も別にあって、それを一緒に食べたら結果が同じ食感と味わいが生まれるという可能性もあるわけですね。

坂本 そうですね。今回は、仔牛肉にポイントがあったんですけど、始まる前に山根さんと「仔牛って結局、すぐ切った方がおいしいよね」という話をしていて、それは僕もすごく思っていたんです。イタリア料理には「スカロッピーネ」とか肉を薄く切ってシンプルに食べさせる料理が多くって、過去には分厚く切っていたのが戻ってきたりしたケースもありますが、やっぱりこれかな。焼きっぱなしで、あまり長時間だくとかもない方がおいしいのかなって思いました。ただ、仔牛肉の可能性を広げるというか、もうちょっと追求する方法はないかと考えていて、このポーションになったのですが、肉の面が大きくなりすぎると、衣とのバランスも悪いし、肉の火入れに時間がかかると表面が踊らなくなってくる。そこの衣と中の素材のバランスがすごく大事かなと思います。揚げる方法は、おいしさの足りないものを劇的においしくするとかに使えると思うので、A5の牛ロースなら焼けばいいんです。もも肉とかをうまく調理するなら、揚げる方法やったらおいしくなるかなとか。揚げ物についていろいろ考えている中で、淡白なものには有効かなと思いました。

門上 山根さん、仔牛の話が出ましたけど、坂本さんのプレゼンテーションはいかがでしたか。

山根 初め、調理方法だけ聞いている時は、ローストした仔牛肉にパン粉を焼いて乗っけたら一緒やんかって思ったんですよ。揚げることによって衣の中で仔牛肉がどのように変化しておいしくなっているかというのが本来の揚げ物かなと考えた。普通、ローストした肉をルポゼすると温度は当然下がりますよね、でもう一回再加熱して表面的にはアツアツにして出す。でも、食べてみて面白いと思ったのは、アツアツにする工程を揚げることでうまく熱を全体に回しながら衣にもおいしさがあってクリスピーさがあって、さらに表面アツアツ。そういうふうに考えると、仔牛はドリップしやすい中に肉汁を溜めにくい素材ですよね、それなら、鹿とかも可能性があるなと思いました。他に、衣にいろんな香りや味付けをしたりしても成立するし、そうしたら普通とは違う世界が確かにあるなと思いました。衣をつける前の状態って、どうなんですか。

坂本 火が入って落ちてしまったものをもう一回ゼロから揚げるのはかなり大変です。火入れ自体は100℃のオーブン。該当するのは65℃ぐらい。100℃で50℃くらいに近づいていく肉を今度は45℃、50℃くらいの微妙な温度をキープするには65℃くらいと思っていて、それで引っ張っていき、10分ほどしたところでパネしてやって最後、一気にもう一度50℃以上のところにもっていく。でも50℃以上に持っていった時、仔牛ってアッという間に肉汁をブワーって出す。200℃でやるのはすごくシンプルで、表面に一瞬で入る。今回みたいに20秒ぐらいで4面が綺麗にガンって温度を上げられるというところに面白さを感じたんです。結局そこで2分かけていたら恐らく仔牛なんてもたないと思うんですね。そこが面白いかなと思います。

門上 油の中でなら一瞬にして肉全体に火が入れられる。田中さん、坂本さんは全く違うアプローチでしたが、召し上がられてどんな感じですか。

田中 衣のカリカリ感もすごいなと思ったのと、僕たち和食屋との違いですね。肉を揚げたりする場合、最初に塩とかして揚げるんですけど、坂本さんの場合、塩は後からして揚げて、周りの生ハムの塩分が揚げることによって中に入っているのかな。本当にいい感じに入っていました。

坂本 ハムの水分は薄いので飛んだ分余計に薄くなる。もともと濃い塩分量がグッと上って仔牛の淡白さとあたっていい感じになるのだと思います。

門上 「Fujiya1935」の藤原哲也さんの顔が見えました。和食でもないし、イタリアンでもないし、スペインでもない、新たな世界におられるのですが、藤原さん、お二人の料理にはどんな感想でしたか。

藤原 仔牛は一回火を入れることによって短時間で揚げる、フリットする時間が短いので、「あ、軽い」というのが正直なところです。いろいろ、なるほどと思えることもあり、参考にさせていただきました。田中さんの衣では、天ぷらはサクサクがおいしいというのがすごく印象的でした。パリパリじゃなくてサクサクの、食べた時のサクッという食感がとても印象に残っていて、ホントにおいしいと感じました。

門上 坂本さん、川崎先生とは事前にいろいろお話はされていたんですか。

坂本 普段からいろいろ質問を投げかけていて、どういうアプローチにしましょうと話しました。この後に出てくる川崎先生の揚げ物の捉え方とかを読んだら、なおさら自分でもこれはちょっと面白いなと思ってアプローチの仕方をいろいろ自分なりに考えました。単純に揚げ物の皿をつくるのではなく、揚げるのをどうやって皿に表現すると活きてくるのかというところに今回、僕なりに的を絞ってやろうという気になりました。

門上 田中さんの「天ぷらにおける衣のあり方、衣の存在」とか「衣の意味合い」みたいなものと、反対に坂本さんは「揚げる」という調理をどう捉えていくかというアプローチ。お二人それぞれのアプローチが違いましたし、非常に面白い結果になっていました。いろいろ考えるところや、新たな視点が投げられたと思います。坂本さん、どうもありがとうございました。

「仔牛と玉ねぎ」

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