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![料理の発想ワークショップ part2 ピザから発想する「生地と具のかかわり」の再構築Program 1:プレゼンテーション+試食 [イタリア料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927652/files/topics/710_ext_2_0.jpg)
料理の発想ワークショップ part2 ピザから発想する「生地と具のかかわり」の再構築Program 1:プレゼンテーション+試食 [イタリア料理]
Program 1:プレゼンテーション+試食 [イタリア料理]
講師紹介
「焼サンマと鬼おろし大根のピッツア」

世界中にこれだけピッツアが普及し、宅配も含めてみなさん楽しんでいるのは、そこに何か普遍的な、みなさんが求める美味しさがあるのではないかと思われます。今回の僕の役割は、ナポリピッツアを例に、イタリアのピッツアの考え方について伝えることです。イタリアではピッツアの定義はがんじがらめになっていまして「生地はこうでないといけない、配合はこうでないといけない」というところがあるんですが、今回は、とりあえず基本と思ってください。まず、生地のつくり方をスライドで見ていただきます。
●ナポリピッツアの製造工程(スライド)
材料。水は硬度の高い水、今回はコントレックスを使いました。粉は0と00を混ぜています。濾過度が高い。数字が大きいほどフスマとか粉の不純物、デンプン以外のものが多く含まれています。粗いとか細かいでもない。粉の風味でいうと、00はきれいすぎる。僕はわざと不純物を混ぜたいので1を混ぜたり、0を混ぜたりしています。それ以外にグルテンを形成するためのタンパク質の量は粉によっていろいろ、メーカーによって違うので、ブレンドします。
コントレックスにイースト、イタリアのビール酵母です。それと塩を加えて塩水をつくります。それに粉を加えます。必要な量の粉の9割を一度に入れます。混ぜて10分くらいよく練ります。途中で残りの一部を投入する。さらに混ぜて、またある程度練られたら次の粉を少しだけ、だんだん量を減らします。残り1割を2、3回に分けて入れていきます。熱が出ないように練らないといけないといわれます。回転は、ややゆっくり。ミキサーで羽を回すと摩擦が増えて熱が出るので、手で練る訳です。引っ張った時の感じで生地の練り上がりを判断する。トータル20分くらいで仕上げています。
粉は10kgくらいを一回の仕込みにします。水は6ℓ。練った生地をほんの少しだけ発酵しない程度に休ませます。数分とか10分くらい。発酵する前に一つずつの大きさにカットする。生地で200gくらい。空気を抜いて丸い形に成形する。外から引っ張って内側に集めて新しい面を外に出すような感じでボール状につくります。バットに並べます。8時間かけて生地が倍の大きさになるくらい発酵させる。発酵時間のコントロールは温度とイーストで調整する。夏場はイーストの量を減らし、冬場は増やす。夏は暑いと発酵が進むので発酵しにくい状態に練るため水の温度を下げたりすることもあります。冬場はあたたかい水で練る。注意しないといけないのは、最初に成形しましたが、発酵する前でないといけない。一旦、練るということは生地を引っ張ってグルテンを引き出す、10分おいたのは若干、もとに戻るのを待つ。そうしないと成形しにくい。伸びたままだと成形する時、どんどん縮んでいって、うまくいかない。少し休ませて成形する。それを繰り返して発酵させる。

その後、冷蔵庫に入れます。8時間たって倍の大きさにした生地を冷蔵状態でさらに発酵させる。冷蔵庫で10時間入れます。5、6℃の低温で少しずつ発酵したものを約3時間で常温に戻す。ナポリのピッツアに求められている生地の特性はモチモチ感があること。モチモチしながら歯切れがいい、さっくり感がいる。焼温度、生地の練り方とか要素が絡んでできるので難しい。今回、注意していることは最終的に生地をのばして焼くまでに、できるだけ生地を潰さない。引っ張りとかのダメージを与えないことが大事。そのため発酵した生地は、ほんの数回触ってのばすだけにします。ストレスをできるだけ与えない。
粉を何度も分けて入れたのは一般的なやり方ではないかもしれません。僕がナポリで見せてもらったピッツア職人は10回くらいに分けて入れていました。日本のピッツア関係者に聞くと「1回で入れる」という人もいました。僕は何度も実験した結果、モチモチ感と、サクサク感の歯切れのよさを両立させるためには、よく練れている生地のベースをつくり、練れていない部分、ホモではなくヘテロな状態、いろんな状態が混ざっている状態をつくって食感を出そうと。モチモチ感だけでもだめだし、サクサク感だけでもだめ。こうやって生地ができました。
●実演
ピザ窯の特徴としては全体の熱で焼く、炎ではなく、石窯全体の蓄熱で焼いている。ナポリのピザ窯は石とか耐火レンガとか砂が入っていますが、それらが集まって比熱×重さが総熱量になる。全体で400℃くらい。もっている蓄熱量、蓄エネルギーに生地を入れて瞬間的に焼いていきたい。短時間で焼く器具です。モチモチ感を保つためには生地の中の水分量が、ある程度必要で、練る生地は結構柔らかい。表面が瞬間的に固まりながら水分を生地の中に保持するのがピッツア生地の目的です。のばしていきましょう。今日の内容は大分、ノウハウ、企業秘密的なものがありますが,勉強会やから惜しみなく出します。のばします。(実演している)彼は、うちのピッツアのトップシェフです。できるだけ生地にダメージを与えずにのばしていく。麺棒でのばすと気胞を潰すのでだめ。それにトマトを塗る。フレッシュより缶詰がよくて、フレッシュを乗せる時は別のものに乗せたりします。
今日は灰まぶしで乾燥させたサンマを使います。それにフレッシュトマトとオリーブの刻んだもの、モッツァレラチーズ。今日のはフィオール・ディ・ラッテと呼ばれる牛乳ベースのモッツァレラチーズです。鬼おろし大根の水分を切っていっしょに焼きます。日本人の考えるピッツアもやりたくて「イタリアのピッツアと日本のピッツアの違いは何か」と考えたんです。イタリアのピッツア職人は具材をつくらない。加熱したり、下ごしらえをすることをしない。その代わり料理人はピッツアを焼きません。分業です。料理人とピッツア職人は違う仕事なのです。僕は料理人ですし、日本でやるなら基本のマルゲリータとか、イタリアのままやりたい。生地もイタリア人が食べて「ここのピッツアすごい」という生地を、どうしてもやりたい。



料理で素材を扱う時は最適調理であれば、どんな材料でも使いたい。かつては、イタリア料理で筍を使いたいというと「とんでもない」といわれた。「筍はイタリアにないやん」と。使える野菜はブロッコリーとアスパラガスとレタスくらいしかなかった。今はなんでも使うでしょう。調味料は考えるが、素材として何を使ってもいいと思っています。ピッツアもおいしい食材はどんどん使いたい。やってみたらサンマがおいしい。生でマリネしたものを乗せるとか、それもありです。いっしょに焼くのがピッツアの定義になっているけど、最近の流行りとしてはベースを焼いて、熱々の生地に生食材をあと乗せすることが多いですね。ナポリに滞在していた時、毎日ピッツアを食べまくったんですね。日本人の胃にはピッツアを毎日食べ続けるのは相当苦痛で、モッツァレラチーズが一度溶けて固まったものは消化しにくく、もの凄くもたれます。途中でどうしようもなくなって、それからうちはモッツァレラは焼かない。生のままで乗せる。あと乗せでやることにしました。あと乗せは日本だけでなく、ナポリ以外ではローマやミラノで、ピッツアを一つの料理として考え、生のカルパッチョを乗せたものが出てきたりする。まさに僕らが考えているピッツアに近づいてきている。どんな素材もピッツアになると思っています。ナポリ以上に本物にしたいなと。ピッツア職人に「好きなものを考えて」というと、なぜかトマトを入れたがらない。ピッツアビアンカに何かを乗せたものをつくりたがる。僕は伝統的なピッツアは生のトマトを潰して塗って焼くというのが重要だと思います。水分がある程度あって生地のほとんどの面積を押さえると水分が抜けなくなる。ソースを塗ることも、今のピッツアの形になる意味があると思います。例えば、キノコクリームのピュレを塗って、その上にキノコをたっぷり乗せて焼いたら美味しい。というようなキノコのピッツアとか、毎年、新作のピッツアをやっています。
ナポリピッツアの特徴はコルニチョーネという縁の膨らみにあるので、縁はさわらず、わざと膨らむようにしている。簡単にのびないです。どうやっているかを、うちのピッツアを焼くシェフに見せてもらいます。左手で引っ張って右手で押さえる。遠心力で引っ張られるので、のばす。指で部分的に押さえたり、麺棒で潰したりは極力しない。ソースも縁の膨らませたいところは乗せない。唐辛子オイルと塩漬けケイパーを戻して、オリーブを乗せる。灰干しサンマは塩味がついているのでアンチョビ代わりのイメージで乗せています。塩味でマリネしてオイルをまぶしてやる。結構乗っていますけど、最初にイタリアにいった30年も前の頃のピッツアは、具材が乗っていなかったですね。たっぷりとチーズも乗って糸を引くようなイメージがありますが、そうではなく、生地そのものを食べさせる。具材は少なかった。今の方が断然多い。チーズもわりとしっかり乗せます。たくさん乗せると焼きが違う。具材とか水分が多いとうまく焼けない。生地がしっかり焼けているのがこのピッツアの目的だと思います。
ピッツアについて僕の考えていることは、こんな感じでしょうか。日本独特のピッツアをやりたいのですね。ただイタリア料理を考えた時、イタリア料理は日本料理、フランス料理、中国料理も同じで範囲が広い。ピッツアもそのうちの一つ。パスタにしてもシチリアとミラノでは全然違う。どれをとらえて「イタリア料理」というのか。イタリア料理専門といっても全部を網羅するのは不可能です。イタリア人が美味しいと思う、食事を楽しいと思う部分を学ばせていただいて、それを表現している。イタリア料理のものの考え方で料理をつくる訳です。イタリア料理をそのまま再現することが仕事だとは考えていません。ピッツアもまさにそうで「サンマの鬼おろし」を乗せて焼くピッツアは、イタリアにはありません。しかし十分においしいピッツアとして存在しうる。大根おろしを焼いたらおいしいんですよ、やってみた結果の発見ですけどね。大体、こんなところで話が尽きました。質問なりございましたら、ディスカッションの時でもやりたいと思います。

