- 定期

料理の発想ワークショップ part2 ピザから発想する「生地と具のかかわり」の再構築Program 3:ディスカッション 2/2
Program 3:ディスカッション 2/2
講師紹介

川崎 なんでピッツアの底が焦げているんですか。温度は底も上がっているのかな。
山根 対流してきた熱が下の石を熱している。上からの熱ですよ。それも意外に高くなくて、むしろ上面が強い火で焼かれているんです。焼き色もピッツアらしい要素のうちだけど、最初は不思議だった。ピッツアを上手に焼こうとすると「焼き色を抑えようとしているのではないか」と思ったこともあります。カチカチに硬くならないように焼きたいけど、普通に焼いたら硬くなる。食べにくい。それが、柔らかいのです。それでいて高温で香ばしさもついている。高温で短時間に焼くことで、蓄エネルギー量の中に水分の多い生地をさらすことで一気に焼いて中を保湿する。水分を逃がさないように。最初、ピッツアをオーブンで焼くと20分くらいかかっていた。ナポリで初めてピッツアを食べた時、感動しましたよ。本質的なピッツアの状態というのがどういうものか、わかっていただきたくて、こういう話をしました。
門上 関西食文化研究会は何かのトリガー、引き金になって、そこでもう一度考え直す。考え直す切り口があることを毎回探求しているような感じですが、山口さん、ピザを3種めしあがり、川崎先生の話があって、発想とかも含めてどう感じられましたか。
山口 僕も実はピッツア業界に足を踏み入れたことがあって。山根さんが何げなく話された内容には、業界人やピザを始めようと思っている人にとってはものすごく有益なことが多くありましたよ。「感動する美味しさ」については、美味しさの中身は基本的には庶民的な食べ方で、栄養素を摂取するような料理のつくり方だったと思うんですね。関西食文化研究会のテーマは安易に提示されているものではなくて、みなさんの反応をみながら「今回、これでよかったのかな」ということがあって、次の回、次の回ときて9年になる訳です。和食の方は大衆料理ではないので、それをタンパク質やデンプンを摂取する方に寄っていったことで無理が出てきたのかなと思うんですね。川崎先生のスタディにあったマトリックスの表(横軸が食材、縦軸は調理法)では、空欄をしっかり埋めながら「美味しい要素」を自分たちのジャンルの中で、どう料理し表現するかというふうにすればよかったのかなと思います。印象的には、ピザに寄りがちになっていくんだけど、本来はそうではなく「香り」とか「素材の温度の伝え方」とか「分解と再構築」の要素を分けると、ピッツアの哲学でもう少し「違う料理」ができたのかなとも思います。



門上 「自分だったらこうする」とか「こういうふうに考えを変えてみれば新しいものが生まれるのではないか」とか。「マトリックスの空いている部分を埋める」という話もありましたが、その面では「ピザはこうあらねばならない」ではなく、料理がどう成り立っているかという、ちょっとしたヒントにでもなればいいなと思います。では、会場からご意見、質問がありましたら。
会場の会員 ピッツアは3つの熱の伝え方が同時に行われています。対流熱、伝導熱、輻射熱を同時に使う料理は他にないと思います。熱の加わり方についても、ステーキとかも違う、オーブンで焼くローストチキンとも違う、蒸気とも違う。それで、もう少し火の入れ方について教えていただきたいと思います。
山根 熱をどう伝えるかは、いろんな料理で考えます。炭火焼の場合も輻射熱とか対流熱というよりは、炭の熱は光に似ていると思うようにしています。光が伝わるような伝わり方をする。光のあたっている面が温かい。炭火はそれに近いでしょ。炭で焼く時は、器具に触れない状態で空中で焼きたいと考え、そうできる器具を開発しています。ピッツアは3種の熱とかよりも、圧倒的な熱エネルギーなのですね。熱エネルギーは、器具自体を適温までもっていくのにどれだけのエネルギーを要したかを考えればよくわかります。スチームコンベクションオーブンの場合、庫内のエネルギー量はスチームをかけた時とドライの時で違います。ドライだと小さいエネルギーでも簡単に150、160℃に上がります。スチームをかけながら160℃まで上げたら、水の温度を上げるのにすごい温度がいるので、庫内のエネルギーが飛躍的に大きくなる。でも、何か加熱する時、火の入り方がスムーズだったりする。ピザ窯に当てはめると、いろんなものを500℃近い温度まで上げている。本場の窯には火山岩や砂や鉄も入っていますから、どれだけのエネルギーがいるか。その中に生地を入れたら、一瞬で中も外も一気に火が入る感じになると思う。表面から伝わっているけど、加熱するエネルギーで温度を移すということです。移した分だけエネルギーは減るんですが、ちょっとくらい減っても関係ないくらいエネルギー量があり、一気にたくさん伝えられる状態になる。輻射熱とか対流熱とかの、直接の熱という問題ではなく、圧倒的エネルギーの中で一瞬に温度が移された状態。水分が蒸発して飛んでしまう間もなく、火が入るという状態だと思うのです。
門上 今回は「ピザから」ということで3人の方にアプローチの違う料理をしていただきました。川崎先生には、料理をどうつくるか、なぜその料理になっていくかという話をしていただき、料理を考える何かの引き金になればいいかなと思いました。次回は、発想のもとを「麻婆豆腐」にして、いろいろ考えていきたいと思います。控室では「麻婆豆腐」の話で盛り上がっていましたので、次回もご期待ください。

