• 定期
料理の発想ワークショップ part3 7つのキーワードから発想する「麻婆と豆腐」の再構築Program 3:ディスカッション 2/2

料理の発想ワークショップ part3 7つのキーワードから発想する「麻婆と豆腐」の再構築Program 3:ディスカッション 2/2

Program 3:ディスカッション 2/2

講師紹介

門上 吉岡先生。松尾さんは玉子豆腐を使い、山口さんは豆腐がなかった。豆腐が主役ではないということも感じますが、いかがですか。

吉岡 松尾シェフの料理、温度と香りの部分で日本料理は「水の文化」なのかなと。中国は「油の文化」なのかなと。この違いが大きく出たというのが印象でした。実演された料理は、麻婆豆腐の要素をしっかりと押さえながら、あまりにも繊細で日本料理としてよくできているなと少しびっくりしたところです。山口シェフの料理は、小籠包のスープの水のもつ比熱の利用の仕方とか、油を用いた温度、香りの出し方とか、やはり「油の文化」に属するフランス料理のテクニックが入っているのかなと。料理は文化ですから、文明はよその国にそのまま伝えることはできるんですが、文化は伝えられない。では味覚は文化ではないのかというと文化です。そうなると今日、私がつくった麻婆豆腐は偽物なのか、真似事なのかというところにくる。「分解と再構築」というテーマの中で「麻婆豆腐の分解と再構築」を私なりに提示したということです。中国料理を生業としている縛りがあって、お二人の料理に比べると、私の麻婆豆腐には少し限界があったのかなと振り返っています。フランスと日本の技術、発想で大衆料理の麻婆豆腐がこれだけ変わるのかという驚きがあった、二人のシェフのデザイン力の強さ、すごさを感じるよい機会でした。

門上 山口さん。デザイン力の強さということですが、麻婆と豆腐で松尾さんは玉子豆腐にいかれて、山口さんは豆腐を完璧に捨て去って麻婆豆腐という料理へまでいったわけですね。

山口 僕たちは基本的にはオートクチュールの料理をつくりたいわけです。対峙したお客さんに対して料理をつくる。「一口食べておいしいものをつくって」といわれるのか「麻婆豆腐全体をイメージできるものをつくって」といわれるかによって変わってくると思います。今日、あえてメニューに名前をつけなかったのは、ラボ的な料理だからです。もう一つは200名近いお客さんが来られて、その方々に伝わらないと講習会の意味をなさないわけで、その中でどう表現できるかが主体というか、出したいものを出したわけではないんですね。どうしたら伝わるか、その中で7つの要素を川崎先生がいわれた「熱い」ではなく「温度」とか「サクサク感」の音とかに表していく。関西食文化研究会は10年になりますが、その中で「五味」があり「風味」があって「食味」がある。体系的なものの中からどう表現していくかということで、抽象的な料理だとは思うんですね。「おいしかった、まずかった」ではなく「こういうふうに切り取りました」と頭の中の設計図を見てもらったというイメージですね。

門上 関西食文化研究会は、やりながら考えていく、考えていって結果が出て、次の考えがまた浮かんでくる。今日、皆さんの中でも「自分ならこうする」「こういう切り口があったのか」と料理に対する発想、(から)もあり、(を)もあると思いますが、いろんな形が見えてくる。山根さんが料理実演されたら豆腐を使いましたか。

山根 使ったかもしれませんね。山口さんが話されたことは、よくわかります。どう表現するか、ここの場でできるものの考え方、進め方を、皆さんに理解してもらう、共感を得る目的の料理で、店で出そうとかと考える商品ではないということ。今回、自分だったらどうしたかなと、ずっと考えていました。

門上 本郷さん、陳建一さんは麻婆豆腐に合う豆腐もつくられたのでしたか。

本郷 特注で木綿と絹ごし豆腐の間のような豆腐を発注されていますね。豆鼓も細かく、陳建一さんはご自身の麻婆豆腐を完成され、建太郎さんも自分の麻婆豆腐をつくっている。100人いたら100人とも違う。最初、辣油の中に何を入れるか、全然違うんです。100人いれば100人とも味が違うことが面白い。それと最近、「麻活」という言葉が定着してきてます。ネット上で誰かが書いたらしくて、新聞や雑誌にも使われてきています。みなさん、麻婆豆腐を3軒くらい食べ歩いて、もっともっと辛いものが食べたくなってくる。麻婆豆腐にすると合コンは一番盛り上がります。上辺だけですが絆ができるみたいです。

門上 「麻婆と豆腐」でどう発想していくか。(を)と(から)は重要なところで、山口さんはまさに「関西食文化研究会だからできること」をやっていただいて、皆さんの中にインプットされたと思います。会場にいらっしゃる「Chi-Fu」の東さん、前回出演してもらいましたが、今日のはいかがでしたか。

 僕自身、食材から料理を考えたり、伝統的な料理の盛りつけ方とか、使う食材の火入れを変えたり、切り方を変えたり、お客さんに新しい楽しみを提供できないかと、日頃やるんですが、以前、「豆腐だけをもって世界を旅したらどういうものができるかな」と、そういうことを考えた時期もありました。今回は皆さんの経験からくる豊かな発想、技術の奥深さに感銘を受けて、また自分も新しい発想のチャンネルをいただいたように思います。

門上 東さんらしい麻婆豆腐ができあがったら連絡いただいて食べにいきたいと思います。川崎先生がおっしゃった「発想の順が逆転していく」という、まさしく料理人は素材を見て考える、大事なのは食べ手の人にそれを食べてどう感じてもらいたいか。そのために何が必要かという発想ができればいいなと思いました。3人の料理がいろんな形でヒントを出して、考え方の糸口も見えたと思います。料理人はどういう発想をしていくか、食べ手の人たちにどう感じてもらえるかを考えていく。この会は、やりながら考え、続けることによって次のステージを目指していく。まだまだ考える糸口はいっぱいあると思っています。今日は「分解と再構築」の面から示唆に富む会だったと思います。デモンストレーションをしていただいた吉岡さん、松尾さん、山口さん、解説をしていただいた川崎先生、コアメンバーの山根さん、特別ゲストとして麻婆豆腐研究家の本郷さん、皆さん、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

他にもこんな記事が読まれています