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「だしの料理との可能性を探る」Program 3:ディスカッション 2/2
Program 3:ディスカッション 2/2
講師紹介



門上 山根さんは早くから昆布を使われたりしていますが、本日の料理実演についての感想をお聞かせください。
山根 今回「だし」の考え方よりも気になったことは、何故か皆さんがお茶を使ったことですね。ネガティブなことを言うと、お茶は消毒したり、味や香りを消したりする働きが強いように思う。味の濃いものなどを食べた後、お茶を飲むと口の中がすっきりする。この役割が大きい。そのお茶を既に「だし」になっている液体に加える・・・・!?最初の「だし」自体が濃い液体になっているので、お茶の成分は抽出されにくい。濃いものが薄いものに移っていく、薄いものが濃いものを薄めようとする交換によって抽出は行なわれるので、濃い物にさらに加えても、味は抽出されにくいと思いました。清湯(チンタン)スープは、かなり凝ったつくりの濃い液体をつくっていますよね。そこに最後にお茶を入れるより、お茶はお茶だけで抽出して最後に清湯(チンタン)スープとブレンドする方法はなかったのかな、と思います。濃い「だし」にお茶を入れても、お茶の成分は抽出されにくく、さらに言えばお茶が「だし」のうま味を吸ってしまう。お茶カテキンの消毒・消臭の性質によって、「だし」のうま味を損なってないだろうか。よりたくさんお茶の成分を抽出したかったら、水で抽出した方が良いと思う。別でお茶を抽出して、ブレンドしたほうが有効かもしれないと思いました。
門上 お茶が共通したのは偶然なんです。下口さんは宇治というエリアとの関係。木下さんは食材を生かすため。吉岡先生は中国の歴史。食は文化と密接な関係があるので、科学と文化がうまく融合されて、新しいチャレンジになっていたのは関西食文化研究会らしいなと思いました。
下口 私は宇治が地元なのでお茶は身近な存在なのです。例えば6月だったら、隣町に城陽市があって無花果が有名なので、使っていたでしょう。無花果の葉っぱを乾燥させて、炙ったものを入れると甘い無花果の香りがする。「だし」に香りを移すことで文化性、地方性が出るのではないかと思ったんです。料理なので季節感も必要ですし。お茶、無花果の葉、柿の葉とかは、昆布や鰹とはまた違う工程で「だし」のフィルターを通して独特のものができればということで、今日は話をさせてもらいました。お茶は臭みをさっと消してしまうので、確かにリスクはあるとは思っています。
門上 木下さんは昆布も使い、お茶も使われていました。
木下 お茶を使おうと思ったのは、アワビのふわっとした身と肝があまり得意ではないので、よりおいしさも上げながら、どうやったら臭みを消せるかと考えてのことです。兵庫に優秀な生産者がいて、無花果の葉っぱとか、もぎたてで届けてくれた時、この香りをどうやって生かせるか、引き出せるか、そう考えることを現時点としは大事にしたいなと思っています。今日のお茶は40℃で蒸したものの中に、うま味も甘味もすべてよくて、それをさらに組み合わせて発展できればと、チャレンジの気持ちで生かしました。既存とは違う角度から組み立てていって、違う料理につなげていきたいなと思い、今日はお茶を使わせていただきました。
吉岡 私は、清湯(チンタン)という繊細なスープを塩味だけにして、できる限り香りを際立たせたいという思いからです。今やラップとかホイルが普及していますが、中国では料理人に限らず、蓮の葉、竹の皮、笹の葉とか自然のものに神からの恩恵を感じて使っている。お茶の中にもそういう文化的な背景が表れているはず。それをいかに料理に組み入れていけるか。今日はこういう組み合わせも有効なのかなという試みでした。
門上 川崎先生、お茶のそれぞれの使い方があったと思いますが、もともと備えている成分、背景などを考えても、また新しい使う楽しみな素材に気づかされたように思いますが、いかがでしょう。
川崎 山根さんの観点は大事です。別々で取って合わせるとか、一緒に加熱するか、どっちがおいしいか、何を表現したいのか、つくってみて味わってみて、最終的に決めればいいと思います。それをどっちにしようと最初に決めるのではなく、考えたことをやってみて、味や考え方、表現したいことで決める。「だし」の第1回目で「お茶は、だしか」という話も出ていました。「だし」とは何か。うま味がある液体が「だし」というなら、お茶も「だし」となるわけですが、昔の人はそんなことを考えもせず、水の中に何かを入れたら味が出た、香りが出たから料理に使ったはず。そこからいろんな発想も生まれてきて、それが新しいことにつながる。サステナビリティの観点からいえば、今まで使われてこなかったものを見直してみるのもいい。料理は洗練されてきて今があると思いますが、一度戻ってみてもいろんなことかできる時代だと思います。僕の発見は、「だし」はいろんなものを溶かしこむ。味成分、香り成分だけではなく、料理人の思い、食文化も溶かすという可能性がわかったこと。今回は、そのように思いました。
門上 「だし」を今年度1年間やってみて、料理を考えることでいろんな観点が見えたなと思いました。次年度は新しいテーマを考えて討議をしますが、会員の皆さんも関西食文化研究会を通して、料理を単に味わうのではなく、背景や過程を踏まえ、デザインを描くことがいかに大事かをおわかりいただけたと思います。来年度も前進していきたいと思っています。川崎先生、デモンストレーションしていただいた3人の方、コアメンバーの方々、みなさんどうもありがとうございました。

