• 定期
「つなぐ」~食が色々なモノ、コト、ヒトをつないでゆく~Program 2:プレゼンテーション解説 2/4

「つなぐ」~食が色々なモノ、コト、ヒトをつないでゆく~Program 2:プレゼンテーション解説 2/4

Program 2:プレゼンテーション解説 2/4

講師紹介

川崎 寛也氏
農学博士、味の素株式会社食品研究所エグゼクティブスペシャリスト

講演:「つなぐ」のデザイン

■風味=味覚情報+嗅覚情報(参照:図2)

風味を感じるのは、味覚情報と嗅覚情報。味覚に関しては、口の中に食べ物が入ったら味覚受容体に味物質が結合するんです。舌の前と横と、喉の奥と上顎、そこに受容体がそれぞれいっぱいあるんです。そこで味物質が結合して電気信号が発生し、味覚神経によって脳に到達して情報が行く。味成分は水溶性のものが多く、栄養情報と言われているのは先ほど話したようなものです。嗅覚に関しては、嗅覚受容体に香り物質が結合して始まるんですが、どこに受容体があるかというと、鼻の奥の上のところに受容体が集まっていて、同じように電気信号が嗅神経によって脳に伝わります。鼻腔の前から、いわゆるクンクン嗅いだときの匂いと、あと後ろからも香りとして感じます。ワインなんかそうですよね、鼻から抜いたときの香りっていうんですけど、レトロネイザルといいますが、そういうものがあるわけ。香り成分は脂溶性、脂に溶けるものが多かったりします。栄養情報というのは生まれながらに決まっている、好きか嫌いか。でも、香りに関しては好き嫌いが激しいでしょ。人によって違うし、文化によって違います。それは、記憶情報と言われているもので、その土地の記憶をちゃんと認識するようになってることで、学習されて好きになっていきます。あとは好き嫌いを決めることで、いろいろ矢印がありますけど、脳の眼窩前頭皮質という部位があって、そこで記憶されてます。その記憶との照合の中で、これは食べてええ、これは好きやなというのを決めている。この好き嫌いを決める部位が扁桃体という部位です。これがまずメカニズムです。

図2:風味=味覚情報+嗅覚情報

■料理人が料理を通して表現してきたこと(参照:図3)

あと、原理原則という意味で、サステナビリティの話もしたいんです。料理人が料理を通して表現してきたことは、こういうふうに分かれるかなと思っていて。まずは歴史・食文化。1人の料理人が、俺は料理人になるんだと思ったとき、大体の人は科学が好きだから料理人になろうとはあまり思わないですよね。フランスだったらフランスの、日本だったら日本の歴史・食文化が好きになって、それを表現したいというふうなことがあると思うんです。そして、ここ数十年ぐらいで食材というものの価値が見い出されて、食材のよさを表現したいという料理人も増えてきました。さらに、ここ5年ぐらい、自然というものを表現しようというようなムーブメントが出てきましたね。例えば自然の風景をそのまま皿の上にジオラマみたいに再現するとか。そういう料理を出すことでお客さんに街なかで自然を感じていただくような料理も出てきたと思います。それで、最近よく言われているサステナビリティという問題、これを表現することです。サステナビリティのあるものを使ってますと別に言わずに出してもいいんですが、使ってますよと言って出すことが表現の一つになっているわけです。

図3:料理人が料理を通して表現してきたこと

■歴史・伝統の表現(参照:図4)

もう少し詳しく言うと、歴史・伝統の表現については、食文化の伝統。クラシックな料理というのは当然あります。それって、1人では到底なし得ない文化とか伝統技術に感動して、それをやってみたい、できるようになりたい、マスターしたいというのが料理人のモチベーションになりますよね。

図4:歴史・伝統の表現

■食材への感動を表現する(参照:図5)

食材への感動を表現したくなるというのも変かもしれませんが、その食材を調達する漁師さんとか農家さんへの敬意を含んでいる。この写真は、京料理の御三人です。左から「直心房さいき」の才木充さん、「木乃婦」の髙橋拓児さん、「一子相伝なかむら」の中村元計さんです。わざわざ船に乗って様子を見て、そこで漁師さんの苦労とかを知る。そういうストーリーから、この食材って大事だなって皆さんが感じられて料理に表現するっていうことなんでしょうね。

図5:食材への感動を表現する

■サステナビリティを表現する(参照:図6)

サステナビリティについては、一極集中の回避が大きなトレンドで、文化とか伝統っていうのは長年かけて先輩料理人たちが多様な料理を考えてきた結果ですよね。その中でも次第に使いやすい食材とか効率的な技術とか客が強く好むものに集中しがちになる。しかし、本来の自然というのは適応放散でできた多様なもので、調理技術というのは多様な自然を加工するために発達してきたはずです。だから、これまで使われてこなかった食材を見直して、現代の技術とか考え方で復活させることも基本的な考え方として今取り入れられてると思います。写真の料理これも「Noma」ですけど、上のほうは牛肉のタルタルの上にアリを乗せています。昔北欧では、アリはたんぱく源として食べられていた。アリは、ギ酸がありますからちょっと酸っぱいので、それを上に乗せて酸味の替わりに食べている。よく考えたら、たんぱく源として食べていたものを味つけとして使うという、何か変な感じもしますけど、彼らはアピールしているのです。(参照:北欧の新北欧料理のマニフェスト)

図6:サステナビリティを表現する

参照:北欧の新北欧料理のマニフェスト

他にもこんな記事が読まれています