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![「つなぐ」~受け継がれるDNA~Program 1:料理プレゼンテーション(試食提供) [日本料理]](https://food-culture.g.kuroco-img.app/v=1774927653/files/topics/786_ext_2_0.jpg)
「つなぐ」~受け継がれるDNA~Program 1:料理プレゼンテーション(試食提供) [日本料理]
Program 1:料理プレゼンテーション(試食提供) [日本料理]
講師紹介
「おこわの鱧巻き焼き 焼き松茸の吉野」

「和久傳」には「成相焼き」という天橋立から見た景色を鱧と松茸に見立て、割いた松茸を鱧で巻いて焼き上げる料理があります。今日は自分なりのエッセンスを加えた鱧の巻き焼き料理を披露させていただきます。



まず、松茸に昆布出汁と酒を1対1に合わせたもの、これに濃口醤油を一口香り付けしたものをしっかり染み込ませます。茸と酒、アルコールは相性がよくて、特に火を入れたときにすごく香りも立ちます。松茸の表面に焦げ目をつけるために水分を持たせるだけではなく、より松茸の風味を出すという意味でも今日は酒と昆布出汁をしっかり含ませてから火を通してゆきます。
次に、鱧に取りかかります。この骨切りも人によっていろんな切り方があります。私も約20年骨を切り続けまして、ようやくここ2年ぐらいで自分の理想的な火の入ったときの開き方というのが少しわかってきた気がします。それぐらい本当に奥の深いものやと思っています。鱧は、塩を当てるとすぐに水が出てきますので、焼く直前に、今日はここで軽くうす塩を当てます。
「和久傳」ではコース料理の中で1つぐらいはお客様に何かお選びいただけるようにしています。そういうことを受け継いで、出身者の店では大体最後の御飯物でチョイスできるスタイルが多いと思います。私も、今日は松茸の替わりにおこわを巻いて焼き上げます。もち米の粘りが鱧をつなぎ、焼いたときローリングが外れるのを防ぐ意味もあります。さらに、食感のあるもち米が中に入ることにより、最後の御飯物にもなる、そういうことで今日はこの料理にしました。
松茸の焼き目がつくまで少し時間がかかりますので、この間に焼き松茸に絡めるあんのほうを作っていきます。これは、鰹出汁がベースです。あまり甘くない蕎麦出汁みたいな感じやと思います。松茸の香りに対して追い鰹の出汁を合わすことに違和感を感じられる方もおられるかもわかりませんが、私は茸と鰹出汁の相性がいいと思ってまして、今日は鰹出汁にあえて追い鰹をした出汁と焼き松茸を合わせ、香りにこだわった松茸あんを作りたいと思います。私は大体80℃くらいのところで火を止めてから追い鰹します。鰹の甘み、うま味が一番出て、えぐみが出ない温度、その辺を狙って追い鰹します。1度濾します。この追い鰹はしっかり絞ります。実際に吸い地なんかを作るときは、えぐみが出ることもあり絞ることは絶対ないですが、今日は香りの強い松茸に対してしっかりとした鰹出汁を合わせたいので、しっかりと絞ります。鱧は、ちょうど焼き上がりの熱々の状態で松茸のあんと絡めたいので、少し時間をずらして焼き始めます。追い鰹をした出汁に吉野葛でとろみをつけてます。



私は「和久傳」に丸10年お世話になりました。それまでの京料理、日本料理に対するイメージは、細かい包丁の仕事であったり、きらびやかな有職料理みたいなものでしたけれど、「和久傳」の料理は野趣と文化の味と形容されたように、郷土料理みたいな素朴な料理をモダンに出すというスタイルでした。私はそこにひかれました。各店舗のメニューは料理長に全部任されるんですが、基本的には1つの皿に3種類以上の食材は重ねないという暗黙の了解のようなものがありました。それは、お客様に何を食べていただきたいのかを明確にする、そういうことやと思います。本日も鱧と松茸がメインで、あとは柚子の香りと食感のあるおこわ、そういう組み合わせで提案させていただきました。1つの食材と向き合うとき、一番おいしい調理法はおそらく1つか2つと思うんです。鱧なら、例えば焼き霜、湯引き、ほんのり温かい湯引きとか。私が教わったのは、他にないオリジナリティのある料理をコースの中に1つか2つ上げたいという思い。現在も私の店では、他店では絶対出ないような料理を1品か2品は必ず入れさせていただいています。けれど、見た目の新しさであったり、初めて食べる面白さであったり、そこに食材本来のおいしさを追求した調理法がなされてるかどうかが一番難しいところで、かつ面白いところかなというふうに感じて毎日向き合っております。料理が完成しましたので、私のプレゼンテーションは終了となります。ありがとうございました。

