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「つなぐ」~受け継がれるDNA~Program 2:プレゼンテーション解説 3/4

「つなぐ」~受け継がれるDNA~Program 2:プレゼンテーション解説 3/4

Program 2:プレゼンテーション解説 3/4

講師紹介

川崎 寛也氏
農学博士、味の素株式会社食品研究所エグゼクティブスペシャリスト

講演:料理のデザイン思考は受け継がれるか

今回は「新しい料理を考える考え方が受け継がれるか」を探るために、料理プレゼンテーションしてくれた3名のシェフそれぞれの師匠にもアンケート調査いたしました。2013年時の調査では僕が京都へ行って、料理人さんの目の前で説明しながらアンケートに答えてもらったんですけど、今回はオンラインでさせてもらいました。

■新作料理創出時の日本料理人のデザイン要素影響関係図(参照:図5)

藤山さん・馬場さん
日本料理の馬場さんの師匠は元「和久傳」の藤山貴朗さんです。現在は銀座で日本料理店「銀座ふじやま」の店主です。何となく似てますよね。面白いのは、日本料理らしさが一番重要だと思っていて、影響があるのは品がいいこと、これは共通なんですよね。受け継がれているのがよくわかりますね。バランスは、馬場さんは右のほうにあるので重要と思われていて、藤山さんのバランスはやや左のほうですけども、影響度が高いという意味で多分重要と思われている。バランスは両者で少し違うことになります。でも、品がいいことと日本料理らしさっていうのを最も大事にしているっていうのが何かとても面白いなと思います。違うという意味でいうと、主役感が藤山さんよりも馬場さんは下のほうにあるけれど、これは別に重要と思っていないわけではなく、ほかのことを頑張れば勝手に主役感が出てくると思われているということなんですね。
どうでしょう。今日の馬場さんの料理。全部に表れているとは言いませんが、鱧の料理とかには何となく受け継がれた考え方が表れてると思えませんか。考え方とか技術というのは、料理人ですから料理にもちろん反映されるはずなので、こういうふうなことを思ったりもするわけです。

図5:新作料理創出時の日本料理人のデザイン要素影響関係図

■新作料理創出時のイタリア料理人のデザイン要素影響関係図(参照:図6)

山根シェフ・筒井シェフ
山根シェフと筒井シェフの関係はどうでしょうか。まずバランスが一番影響度が高いのは同じですね。一番重要だと思われているのが山根シェフは主役感でした。筒井シェフは風味。主役感はもちろん近くにあるから、重要と思ってないわけではないけれど、風味がとても重要というふうに思っている。
師匠は全部が全部言葉で説明するわけではない。料理で示していくのですが、受け取る側としてはその言葉はとても大事だから、その言葉をちゃんと受け取るし、山根シェフは主役感が大事だって思っていてそれを筒井シェフも受け取るということなんです。それを手を動かす側として考えると、主役感はどうしたらいいのかって考えますよね。そうすると、筒井シェフのほう、実際手を動かすほうは、風味やと思ったのかもしれない。今日も筒井シェフ結構風味は大事なように話していたので、もしかしたらそういうふうな違いが出てくるのかなと想像してしまいます。ただ、バランスはとても大事であったりとかは、面白いなと思いました。

図6:新作料理創出時のイタリア料理人のデザイン要素影響関係図

■新作料理創出時の中国料理人のデザイン要素影響関係図(参照:図7)

大澤シェフ・田中シェフ
「空心」の大澤広晃シェフと田中シェフを比較しましたら、全然違います。大澤シェフは旨み、風味、驚きが一番重要と思い、主役感、中国料理らしさが近くにあるんですね。それぞれ密接に結びついてると思われます。田中シェフは、しつこくないことが一番右で重要と思っていて、影響があるというのは触感。これを見ると、先ほどのそうめんカボチャをあえて外へ出して、香りをレモングラスのオイルでつけるというのは、何かこの辺の感じ、しつこくなくしようとしてるなとか触感とか風味っていうのをとても大事にしようとしてるなとわかります。最初は中に入れたのを外に出そうって変わったっていうのは、やっぱりそういうことかと思ったりもしました。
大澤シェフは結構自由に料理を考えさせてくれていた、若いときからという田中シェフの話でした。もちろん考える土台というか、そういうのは学ぶんだと思いますけども、あまり教えるっていう感じではなかったかのかもしれませんね。だから、こうしたことが表れているのかなと思いました。

図7:新作料理創出時の中国料理人のデザイン要素影響関係図

以上の結果を見て、新しい料理を考える考え方、そもそも受け継がれているんですかという今日のテーマですけど、僕は結果を見て、一部は受け継がれ、さらに若い料理人独自の新しい考え方、価値観も加わって、だからこそさらに発展していくんではないかという結論に達したわけです。

■料理人の考え方の成長(参照:図8)

料理人の考え方の成長というのを考えると、僕はこういうふうな流れかなと思っています。HOW→WHAT→WHY。
HOWはどうやって作るか。若い頃はどうやって作るかに注力して、方法論や技術論を磨く。その次は、自分で新しい料理を考える。何を作るかWHATがとても大事になってくるじゃないですか。スーシェフとして新しい料理を考える人もいれば、独立をして新しい料理を考える人もいて、何を作ろうっていうのが次のステップですね。最終的にどうなるのか、WHYなぜなんだと思っています。つまり、難しいですけど存在意義みたいなところですね。特に、外国料理の場合、なぜ日本人の自分はフランス料理をやっているのか。フランス人が自分の店に来て自分の料理を食べてどう思うかって、多分すごい気になるという時代があると思うんです。よく耳にしたのが、フランス人から偽物を作られてるって思われたくないみたいな葛藤があるということ。だから、WHYはとても大事だと思います。このWHYが大事なんだっていうのに気づくのがいかに早いかがこの時代にはとくに大事と思います。
創作に創作を重ねるという話を例するとき、よく思うのが伝統的な料理は必然があったということ。例えば中国四川料理はなぜ辛いのかというと、体にいい薬膳という概念があるから。四川は盆地なので体に湿がたまる、という考え方です。湿を体から出すために花椒を使っていて、そこに唐辛子が入ってきたから。また、四川で牛は本来は使役、いわゆる労働に使う動物だったが、それが年老いて労働に使えなくなる、年老いると硬い肉になるわけです。その硬い硬い肉を細切りにして下味をつけてゆっくり火を通す。硬い硬い肉を細かくしてマーボー豆腐にしていく。それぞれの伝統料理にはそういう理由があったからなんですね。それを創作するって、どういうことなのか。軟らかい肉のほうがおいしいから、軟らかい肉でやろうよでいいんでしょうか。というように考えるのがWHYなんです。なぜ創作の上に創作を重ねてはいけないのかということでしょう。

図8:料理人の考え方の成長

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