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1 theme STUDY vol.02「ラーメンのスープ研究」Program 3:トークセッション:「スープと麺をめぐって」

1 theme STUDY vol.02「ラーメンのスープ研究」Program 3:トークセッション:「スープと麺をめぐって」

Program 3:トークセッション:「スープと麺をめぐって」

講師紹介
進行:門上 武司

出演者によって、あらためてスープと麺について討議していただきました。今回は視聴&試食サイドのコアメンバー、山口 浩氏(「神戸北野ホテル」総支配人・総料理長)と山根 大助氏(「ポンテベッキオ」オーナーシェフ)との質疑応答もありました。

門上 はじめスープだけ飲んでから、次に麺と具材も入ると相当印象が違うように思います。鈴木先生、実際にスープを分析されて、麺が入ったら味が変わったと思いますが、いかがでしたか?

鈴木 そのとおりで、スープだけでは味を濃い感じにしないと麺を入れると薄くなりますので。スープと麺がいっしょだと味の状態が変わります。結果、バランスがよくなってさらにおいしくなったのかなと思われます。学生時代にラーメン店をまかされた経験がありますが、スープを一定の味で出すのが意外と難しくて苦戦しましたね。

門上 スープだけの味と麺が入ることで全体のバラントが変わる。スープと麺の相性も大事だなと思いました。関西食文化研究会のコアメンバーからお二人、ポンテベッキオの山根さんと神戸・北野ホテルの山口さんにも出席していただいています。今回のデモンストレーションに一言ずつお願いします。

山根 麺とスープの相性はイタリアンもやりますが、麺性を変えるか、形を変えるか、かなり組み合わせが複雑になる。ソースとからみやすい麺か、しみこみやすい麺か、弾きやすい麺か。ソースが濃いと弾く感じのあった方がいいこともある。モチモチして吸水性のあるソースだとからみがよくなるので、どう麺性を変えるかといったような。ラーメンのスープに関しては複雑なことをされているなという印象です。松原さんのスープはむしろソースですね。これをどんどん突き詰めていくとパスタになりますよ。山内さんは中華でいうスープの印象が感じられました。全体に作業性というか、キッチンをそれ専用に設けたり、スープを漉す作業とか簡単においしくできへんかな。炊く時間がなんでそんなに長いのかなと思いました。24時間とか8時間とか。僕らのソースはそんなに炊かない。魚介類だと炊いても15~20分ですよ。肉系でも1、2時間で炊き上がる。それで必要なうま味は引き出せるのではないか。うどんだしと和食の一番だしの違いもありますが、根本的に雑味とか含めて、ごそっと取りたいんだろうなと感じました。

門上 うどん研究の時、今井さんのうどんだしの取り方が和食と全く違っていて衝撃でしたが、でも、あのおいしさは不思議だということがありました。山内さん、仕込みで炊く時間は、最終的に現状のに落ち着いたわけですか。

山内 魚の場合は沸騰させてしまうと臭みが走るので飲めないスープになります。甘鯛とかマグロの時でも弱火でじっくり、うま味を出していかないといいだしはとれない。時間をかけて研究してやってきて、泊まりこんでスープを作りました。じんわり蒸し煮のような感じでスープを作ると、同じスープでも濃縮のスープになって、8,9時間になると甘鯛のスープの量が増えてしまう。それで半分の量に凝縮したスープになるように24時間炊くようになりました。

門上 新しい課題が生まれてきたような話です。山口さん、いかがですか?

山口 ラーメンのスープを作るのは初めて見ました。こうやってラーメンを作るんやなと。澄んだスープに関しては思っていたとおりですが、鶏白湯が理解できず、僕たちの作るだしではないんですね。それが、ラーメンの主流の5割になっているというのは衝撃です。松原さんが、好きじゃないけど挑むのはわかりますね。スープからソースととらえると、もう少し効率よく簡単に取れるのではないかと思います。西洋料理の世界に入った時は、毎日デミグラスで漉していく、エスパニョールソースを。だんだん濃度がついてくると漉すのもしんどいし、一番いやな仕事で、そこから早く逃れたいと思っていたら、フォンドボーができてよかった。ラーメンは毎日漉しながら作っているそうですが、すごいけど、もうちょっといい方法があるのではないかと感じました。

松原 今は8時間ですが、時間効率からいえば圧力鍋を使えば2時間かな。漉す作業はこれしか見つかっていなくて、白湯仕込みをやってまだ2年ですから。今日、山根さんからいただいた課題「うま味を効率よくあげる」というのは、ラーメン業界では初めて聞く言葉ではないかと思います。炊くことにロマンを感じて「俺らが炊いているからおいしい」とか、今日までロマンを追いかけていたので、うま味の効率については、次に発表できないかなと思っています。

山根 液体のうま味を抽出する時、濃い状態の液体にはうま味は出てこない。だしの取れる材料と水分の濃度が一緒になった時にだしは出なくなる。それなのに、まだずっと火にかけていたら、今度はダシガラの方に入っていき、ダシガラの含みを作っている状態になるよ。

松原 そう言われるのも初めてでして。濃縮というか。

山根 濃縮は後でやる。香りがなくなったらだしじゃないのよ。すごいヒントいっちゃった。白湯は、普通は強火でガーッと炊くだけと違うの? 松原さんのは、特殊な作り方ではないんですか?

松原 最初の8時間かかるところは他の作業をしながら仕込みをしたりするので、20分おきにあたらないように回すとか、そこの部分だけを強火でするとか。その日のコンディションしだいなんですが、平均したら8時間かかっているなということです。

門上 山根さんが麺によって、弾くとか、なじみやすいとか、吸い込みやすいとかおっしゃってました。知見さん、なぜ国産とオーストラリア産を形状も含めて提供されたのですか?

知見 今回、龍旗信さんは弾くタイプ、拳さんは吸い込むタイプの麺を抽出しています。吸い込む方を清湯に使うとか、ラーメンはつるつるの麺をクリアなスープで食べるのも一つの流儀だし、これが正しいというのは存在しないのが現状ですから、店主さんのお好みも麺を選ぶ時には大事にしています。松原さんは色調鮮やかな麺を好まれる。山内さんは色や形は関係なく、うまい麺を好まれるということで選びました。

門上 タブーがない、店主の好みだというのが最優先されると?

知見 そうですね。茹で時間も、くたくたに湯がいて「これがうまい」といわれたら、それが正解だと思います。そういう自由度が高くなってきていますね。

松原 歴史が浅いこともありますが、決めたもん勝ちみたいなところがありますね。「ソースやね」という山根さんの言葉ですが、和食経験の山内君とか、うちのスタッフでイタリアンを経験している者とかの意見を採り入れて、どんどん変わってきています。日本の料理人さんから調理方法とか仕込み方を習っているところもあるので、ソースに近づいているのかもしれません。ラーメンを長い年月食べてこられた方が鶏白湯はこういうものだといっても、どれが正しいか決まってなどいないかもしれません。僕の中では、あっさりの清湯、こってりの白湯、どれにもこれは「濃い」とか「辛い」というのはない。食サミットで、イタリアンは豆でも一つの食材でピンポイントのダシをとる場面がありまして、意外といわれていますが、そのあたりも参考になっているところもあります。トッピックも鶏だけにして、たっぷり出すというような。

鈴木 松原さんの「こってりながら、後味を引かない」という味つけはどうやって実現しているとご本人はお考えですか?

松原 鶏白湯のスープは、当店でいつも使っている塩ダレ20,30ccに対して、もっとタレを入れたらいいかなと思って入れたら辛いんですね。それで引いているうちに15ccの塩ダレで済んだ。鶏のうま味、ゴボウの甘味とか、それと塩があわさると人工的な塩は必要ないのですね。飲んでも喉が乾かない。今までこってりしたものを食べているので、あっさりしていると感じる。自分で食べた舌の経験ですね。塩の場合、注意しているのは、薄いのは食べられるけど、辛いのはだめ。辛いとスープを残される。そういうダメージをなくしていって、後味を引かないというのに行き着いたのです。

門上 会場から質問はありませんか。

質問 私はすぐ飲み込む方ですが、味をお決めになる時、口に含んでからどれくらいの時間、咀嚼したり、流しこんだり、こういう状態だからおいしいと計算されているのですか。

山内 うま味調味料を使わず、体にいいラーメンを作ることを目指していますから、飲んだ後の10分、20分後の舌を確かめながら判断します。食べ終わってからしんどいラーメンが結構あると思うので。一口めより、食べ終わった後の味を意識しています。

松原 食べ終えて2時間後くらい。夜だと就寝前ですか。ラーメンを食べたけど、もたれがないという、清湯でも白湯でも、そんなふうに作るのを心がけています。僕の中ではラーメンにパンチを入れるというのはないですね。飲みやすいということですね。

門上 お二人に共通しているのは、口に含む時より後で体に影響があるかどうかを考えておられるということですね。そろそろ時間になりました。今日、出演していただきました松原さん、山内さん、知見さん、鈴木先生、どうもありがとうございました。ラーメンという一つのジャンルで多彩なプログラムが組めたことは面白いなと思います。
関西食文化研究会は、立ち上げに際して、阿波踊りの「連」のようなことを考えていました。全体が関西食文化研究会で、それぞれの「連」で技を競いあって、また集まってということができればと思っています。今日はラーメンが研究テーマ。コアメンバーからも意見をもらい、時間軸とか作業性、厨房の考え方とかにも話が及んでいきました。さまざまな可能性がある、また新しいアイディアが生まれる。関西食文化研究会にタブーはありません。いろんな切り口が楽しめると思います。会員の皆さんからも、こんなことをやりたいというご意見を賜りたいと思います。これからも関西食文化研究会をどうぞよろしくお願いいたします。

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